見出し画像

SNS時代だからこそ、インクを使う

写真集「Kamuy」の印刷が終わり、昨日から放心状態になっています。カラーマネージメントされたモニターを使い、自分でもプリントし、色に関してはある程度理解してきたつもりですが、CMYKに変換された印刷となるとまだまだ未知の世界。普段RGBで色を見ることに慣れてしまうと、CMYKでの色合いにギャップを感じてしまうのも事実。だから、この印刷工程は本当に神経を使います。

バックライトに照らされた映像は確かに美しいのですが、印刷されたものには別の気配が漂います。それはインクの匂いや紙の手触り。つまり、視覚以外の五感を刺激するものが印刷には宿るということでしょうか。今回はデザイナー三村さんの経験でUV印刷ではなく、従来の油を使った印刷になりました。こうなるとさらにインクの匂いが強くなり、より五感に訴えかけてきます。Kamuyの気配を感じさせるために五感を刺激する、といえば理解してもらえるでしょうか。

画像1

写真はデータで見るものという概念が一般的になりましたが、やはり僕は物質として残したい。このインクの匂いがする紙を一枚一枚めくりながら、写真から漂う気配に心を揺らせてほしい。そうした身体的行為を伴うことで、写真は消費されるものではなく、ズシリと心に残るものになると信じています。

僕が出した「Kamuy」をみて、どこかの知らない誰かが感動してくれたらとてもうれしい。書店でふと手に取った写真集のズシリとくる感じを体感してほしいのです。


いつも応援ありがとうございます。いただいたサポートは、写真家中西敏貴のさらなる飛躍のため、取材費として使わせていただき、その成果をかならずやフィードバックさせていただきます。ご協力をお願いします。