見出し画像

テスラが赤字から急成長を遂げた秘訣

僕は2019年1月、オフィスの様なシンプルな内装、無駄のないシャープな外装に惹かれ、日本でまだ乗っている方が珍しかったテスラのモデルS(当時最高クラス)を一度試乗してみました。

フェラーリ、ポルシェ、ランボルギー二を超える馬力に加え、ほぼ揺れがない心地よさ、これを体感した僕は直ぐに“1ファン”となり当時まだ1株100ドル前後だったテスラ株に当時まだ大学学部3年生だった僕のほぼ全財産〇〇〇万円を投資しました。

勿論、こういったリスクヘッジが出来ていない投資は推奨されていないのも分かっていたので自分の意思決定を疑う時もありました。しかし、そのちょうど1年後(2020年2月頃)テスラが日本に浸透し株価も約7倍になりました。

僕はよく人から『今何の投資をしたら良い?』とか『今何の株を買ったら良い?』などと聞かれるのですが、その時必ずこう答えます。

1ファンとして自分が認めたからこそ、これから大きくなって欲しい会社に投資するべき
だと。

勿論、企業のPER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)、ROE(株主資本利益率)などの株式指標から経営状況や成長性を判断するのは基本です。

その上で“1ファンになる”ことが重要であると考えています。そうする事で損しても1ファンなら耐えれますよね。

例えば、プロ野球の阪神ファンは主にチケット代や時間に投資し、阪神が負けても『おい!こら!勝てよ!』って言っていますがファンをやめませんよね?なんなら負けている方が喝を入れてやるやらなんやら言って再度甲子園に応援に行きますよね。

てな感じで、少しintroductionが長くなってしまいましたが、今回は1ファン1株主の視点から本題である『テスラが赤字から急成長を遂げた秘訣』について少し綴っていきます。

1.実はあまり知られていないテスラの裏側

みなさんも、もうご存知の通りテスラは世界のEV市場を今、牽引している米国のEV専業自動車メーカーです。

(出典: https://thebridge.jp/2020/06/tesla-becomes-most-valuable-automaker-worth-more-than-gm-ford-fca-combined-pickupnews)


そのテスラは今から2年前の2020年6月10日、時価総額で日本のトヨタ自動車を抜き世界で最も価値のある自動車企業になりました。

2020年の全世界でのEV販売台数は前年比36%増の49万9647台だったと言う。2位の独フォルクスワーゲン(VW)は23万1600台で、テスラは2倍以上の差をつけ、ダントツのトップでした。

そんなテスラ、順風満帆だったと思われますが”実はそうでも無かった”のです。

(出典: https://graph-stock.com/graph/tesla-revenue-income/)

このグラフを見てもらえばわかるように、売上高は2012年以降徐々に右肩上がりで伸びていますが、注目して欲しいのが純利益です。
純利益は常にマイナスであり、“赤字経営”が続いていたのです。

では何故“赤字経営”がこんなにも長らく続いていたのか、またそこからどうやってここまで急成長を遂げたのかテスラの歴史を遡って見ていきましょう。

2.テスラの歴史と無謀な挑戦

テスラモーターズ初のEVロードスター
(出典: https://autoc-one.jp/tesla/roadster/launch-5001379/photo/0002.html)

テスラ(創業時はテスラモーターズ)の誕生は2003年。マーティン・エバーハード氏とマーク・ターペニング氏の2人の技術者が創業しました。

現在CEOを務めるイーロン・マスク氏が経営に参画したのは2004年からです。

また、テスラがEV販売に乗り出したのは2008年から。まだリチウムイオン電池を搭載したEVは世に出ていませんでした。最初のEV「ロードスター」(2人乗り)はノートパソコン用のリチウムイオン電池を7,000個程搭載し、航続距離を伸ばそうとしていました。

そのため電池の重さが450kgとなり、クルマの軽量化にかなり苦しんだと言う。

ただ新規参入者だけに“ユニークな考え方”がテスラにはありました。既存メーカーにはクルマに搭載する電池は車載用として特別に用意した電池が必要だと考えていました。自動車向けの部品には高い信頼性や安全性が求められるからである。

しかし“テスラは全く違った。

多く普及している“PC用電池を転用する”というアイデアを生み出したのです。当時の自動車産業にとってはかなりの型破りなアイデアですよね(笑)

この「ロードスター」発売当初はかなりの高価格だったらしいが、高価格にもかかわらず生産体制を超える受注を獲得した。しかし、システムの不具合や生産の遅れに見舞われた。

その後もテスラは新しいモデルを発表し、生産開始をするたびにラインを止めざるを得ないという状況に何度も陥る。テスラはトヨタと同様に車の“ものづくりの難しさに苦しみ続けた”のである。

EVは従来の自動車よりも生産が簡単で、新規参入企業でもつくれる、という見方もちやほや聞こえます。しかし、現実はそうではなかったのです。

調べてみると車は部品の製造、組み立ての際に微妙な調整が必要な“すり合わせ型”の商品であり、たとえ電動化が進んだとしても乗り心地を左右するサスペンションや車体剛性などの向上を目指すなら、既存メーカーに蓄積されたものづくりのノウハウ、経験知がなくてはならないらしい。

たしかに、実際に品質の高い日本メーカー(トヨタなど)のクルマと欧州の高級車(ベンツなど)の乗り心地を比べてみても何か違うと言うのはわかります。

その違いをなかなか埋められないのは、自動車を組み立てる経験知の差であると考える。

時速100キロ以上で地上を走る鉄の塊が車であり、自動車に求められる信頼性、安全性はパソコンなどのIT機器よりも格段に高いと言えます。パソコンやスマホなどのように主要部品を組み立てればほぼ同等の性能が実現できる「モジュラー型」の商品とは全く異なります。

そんなものづくりの現実を、自動車メーカーになるための洗礼としてテスラは受けたのです。

これが今でこそ既存の自動車メーカーを押し退け、時価総額トップに立つテスラの実に
無謀な挑戦”です。

3.縁の下の力持ち『トヨタ』

(出典: https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-11-06/QJD0K7DWX2PS)


テスラの躍進には実はトヨタ自動車が一役買っているのです。

トヨタは米国での生産に初めて乗り出すときに、米ビッグスリーのGMと合弁会者「NUMMI」を設立し、生産を開始しました。トヨタ、シボレー、ポンティアックなどトヨタとGMのブランド車を生産しました。

しかし、2009年6月、GMが経営破綻し、合弁事業が解消されました。工場も閉鎖されました。

閉鎖直後、NUMMIの工場を取得したのが“テスラ”でした。同時にトヨタとテスラは包括提携しました。そこで、“EVの共同開発”をすることにもなったのです。

テスラは“トヨタ生産方式を活用”し、効率の高い生産体制を実現していた工場を“居抜き”で買うことができたと言うのです。

EVの効率的な生産に苦しんでいたテスラにとってNUMMIの取得はかなりのプラスになったと言えるでしょう。

またトヨタ自動車の豊田社長もテスラとの提携を歓迎し、『トヨタにはないベンチャー企業のスピード感を学ぶことができる』とコメントしたのです。

また、この頃からテスラは日本のあらゆるものづくりメーカーと提携を組みました。
僕も乗っていた“モデルS”はNUMMIで生産され、パナソニック製のリチウムイオン電池が搭載されている。ようやくEVとしても競争力のあるクルマをつくれるようになったのです。

テスラはこの“モデルS”を皮切りに急成長を遂げたのです。

4.テスラのもう一つの収入源

このように、トヨタの力もあってのテスラの積極的なEVへの参入が日米欧の大手自動車メーカーに刺激を与え、EV化へと促しました。

また更には、既存の大手自動車メーカーの方に電動化を進めざるを得ない切実な事情が生じていました。


テスラは2020年の決算で“初めて黒字化”を達成しました。そのテスラの2020年度の決算をみると、他の大手自動車メーカーではまずみられない利益があります。

それは“CO2の排出権取引”による売却益15億8000万ドル(約1700億円)です。
この『排出権クレジット』と呼ばれる利益がなければテスラは2020年も赤字だったのです。

※排出権取引とは基準以上のCO2を排出する企業が基準以下の排出企業から排出枠を買い取る制度。テスラ車はすべてEVなので、テスラが売ったクルマは走行中にCO2を排出しない。そのため基準内でCO2を排出する枠を丸々持っている。

一方、ガソリン車などを大量に売っている大手自動車メーカーの多くは基準を超えてCO2を排出してしまいます。

その“排出枠をテスラから買っている”のです。

2021年以降からはクルマ1台のCO2の排出量を走行1km当たり95gに規制する厳しい制度になっている。それを上回れば排出枠を買わねばならない。

大手自動車メーカーは多い場合、数百億円の排出枠をテスラから買っており、経営の圧迫要因になっているのです。
一方テスラにとっては、この制度は自社に有利に働く、謂わば”ドル箱”のようなものでしょう。

このようにしてテスラは“トヨタの力を借り
ドル箱”を持って赤字から急成長を遂げたのです。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

今回の記事の重要ポイント3点
1.  “ユニークな考え方”
2. “トヨタ生産方式の活用”
3. “排出権クレジット”

宜しければサポートをお願いします😀 いただいたサポートは今後のクリエイターとしての活動費に使わせていただきます。