LEICA M2を改めて
LEICA M2が手元に来てから5ヶ月程が経った。
フィルムでの写真制作は楽しく、とんでもない失敗をする事もなく(今の所)順調にプリントの数を重ねられている。
そしてだいぶ手に馴染んで来たのもあって「ライカの事も書くか」と思い、愛機について今回は書いてみようと思う。レビューなどではないが、使った感じをお伝えできれば。
LEICA M2のファインダー
まずは、肝心なレンジファインダーについて。
ライカを使う事の意味としては私はこれが大きい。カメラを本格的に始めてからフジフイルムのX-Proシリーズを愛用していた私は、ミラーレス特有のEVFも好きだったがOVFでの撮影が特に好きだった。素通しガラスとブライトフレームを使って撮影する行為が「世界と繋がっている」感覚がして好きだったので、日々のスナップはほとんどOVFでの撮影だった。そして一時LUMIX S5を使っていたことでより「やっぱ世界は素通しで見たい」と思いが強くなり、それなら同時に作家性も高められる活動をしようと思いフィルムに転向して、今に至る。
M型ライカの象徴と言えるレンジファインダーは今更詳しく私から説明はしないが、想像していた通り素晴らしい撮影体験が出来る。実際のところ私のライカはファインダーに劣化がある状態(二重像部分が若干掠れている)だが、それでもピント合わせに困る事は少なく、やはり素通しガラスとブライトフレームで撮影するのは楽しい。
そしてここから特に私個人の体感なのだが、「M2は35mmが最適で、50mmはM3がいい」という意見が大多数だとは思うが、私にとってはM2で50mmも選択としては大いに有りなんじゃないのか?と感じる。(M3使ったことないんだけど)
というのも、届いた最初ドキドキしながらファインダーを覗いてみると「あれ、思ったよりも35mmのフレームがギリギリにある…」となった。メガネを掛けた状態で覗くと35mmのフレームはかなり見えにくい。これだとM6などに搭載されている28mmのフレームは入らないんじゃないか?個体差なのか?と思い、当時ライカの分解などをして徹底的に調べていたライカ通信という古い雑誌で調べてみると、M2は以降の機種とは違ってファインダー倍率が0.75倍なのだということがわかった。
ネットの記事などではM4などと同じ0.72倍と表記される事も多々あり私もそう思っていたのだが、実は一緒ではないのだ。ライカのようにいろんな人が記事にしたいと思うカメラはどうしても誤情報や聞き齧りの情報が増えてしまうのだろう。実際に触ってみないとな〜と実感。
そして50mmのフレームは個人的にちょうど良いサイズに感じる。大きすぎず小さすぎず。フレームの外側もファインダー内にある程度ゆとりを持って残されているので、フレーム外からの動きを予想しやすいという利点もある。撮影範囲の外側の動きも確認出来るというのはレンジファインダーの特権だ。
50mmが好きでレンズも50mmを買っていたのもあり、丁度よかったと安堵する。しかしこの35mmが縁ギリギリで50mmがちょうど良いサイズのフレーム、何か馴染み深いような…と考えてみると「あ、これX-Pro3と同じだ」と気が付く。X-Pro3も23mm(換算35mm)のフレームがファインダーギリギリに表示され、X-Pro2までにあった倍率変更がない。先述の通りアイポイントによって隅の見やすさが違うだけで、フレームの表示の仕方はX-Pro3とLEICA M2は非常に近いものだった。運命的なものを感じる。
あとはよく言われる事として、ファインダーに表示されるのは一つの画角のみとなるので、すっきりしていて見やすいという事。これはもうその通りで、50mmで切り取ることに集中出来る。素晴らしい。
実はライカを買おうとしていた時、M2かM3で迷っていた。好きな画角は50mm付近なのでそれならやはりM3か?と考えていたものの、良いコンディションのものを買おうと思うとそれなりのお値段になってしまったのと、35mmも好きなのでいつか35mmをいざ使おうと思った時に外付けファインダーを用意しないといけないのが面倒だったという理由からM2にした。
結果としては選択は間違ってはいなかった訳だが、M3の50mmのフレームはM2の35mmのように縁ギリギリになるのだろうか?だとするとやはりメガネ着用者は若干見えにくい?しかし50mm好きとしては余裕があればM3も手に入れたいと考えてしまう。これは実際に使っている人に聞くかどこかで実機を触って確かめてみよう。
操作感、手感について
続いて触った感じ。これはもうほんとに素晴らしい。
よく言われることであるが、「ぎっしり詰まっている」感というのはまさにその通りだと思う。手元に何台か国産のフィルムカメラを持っているのだが、それらとは佇まいが全然違うと言える。単純にライカは全部金属の贅沢な作りで、国産カメラはコストも考えてプラスチック素材を使われたりもしているのでそりゃ違うのはしょうがないとも思うのだが、持った時の剛性感がライカの方が高く感じる。その分ずっしりと重量もあるのだが、苦になる重さではない。
操作した感じも、手元の国産カメラとは違いを感じる。全体的に動きが滑らか且つ、レスポンスがしっかりしている。ふにゃふにゃスカスカしている感じはなく密度を感じると言えばいいだろうか。
だが結局これも実際に触って見ないとわからない部分ではあると思う。
とりあえず実際にフィールドでガシガシ使っていて操作がガタつく事などなく、フィルムの交換も慣れればスムーズに出来る(最近は別の理由でフィルム交換に手間取ることはあるのだが)
グリップがないことについては、これこそ手の大きさなどによって千差万別の部分ではあるのだが私としては困った事はない。ライカのホールドの仕方については先人たちがいろいろ生み出してくださっているので、それらを参考にするという方法もある。私は手が大きいのもあって結構シンプルなホールドだと思う。
ちなみに縦位置の時、昔付属していたというライカ公式の説明書では「右手側を上にする」のが二重像窓がケラれない構え方になるらしいが、私はがっちりホールドしたいので左手側を上にして右脇をがっちり締めるようにしている。X-Proシリーズを使っていた時からそうだったというのもあるし、渡部さとるさんが『報道時代、右手が上だと他のカメラマンにいじわるされた時フォームが崩れやすかった』と仰っていて(別にいじわるされる事ないけど)左手上のフォームで固めるようにしている。
しばらく一緒に過ごしてみて
昔から憧れていたカメラを使っているという事もあって初めは多少の高揚感はあったが、今はもうすっかり馴染んだという感覚。ただ、眺めていて飽きないカメラだと思う。これは素直に凄いと思うところで、自分よりも長生きしている物の存在感と、普遍的かつ完成されたデザインが成せる事だろう。
ライカきっかけでお話しをしてくれる方もいるし、目立たないデザインは街中で撮っていてもあまり気にされないのも良い点だ。
仕事の時もカバンには忍ばせているし、休みの日出かける時はほとんど持っている。1日何時間も歩く時があるが、それでも苦にならないのは素晴らしい。ただこれには、私自身のイメージや先入観でもあるのだが、ライカを見ていると「はい、レンズ一本でいきます。頑張ります。」となぜか思ってしまう為でもある。無駄なことはやめろと言われているような感じがしてならないのだ。なのでカメラを持って出かけるとなってもレンズがついたライカ、そして露出系と替えのフィルム数本という非常に身軽な装備で済む。コートにポケットが多ければカバンすらいらない。今後しばらくしたら35mmか90mmかを増やすかもしれないが、それでもやはり最低限しか持ち歩かないだろう。
フィルムでの写真の場合、写真に直接の影響を与えるのはレンズとフィルム、そして現像液になる。デジタルと違ってカメラ本体は直接的な影響はない。別にライカなんか使わなくて良いじゃん!と言われても間違いではない。
だが、「そのカメラを使っていたから撮れた写真」というのはあると思っていて、例えばライカだから目立つ事なく自然な写真が撮れたのかもしれないし、ライカだから何時間も歩いても集中力を切らす事なく撮れたのかもしれない。
そしてこれはハービー山口さんの言葉でもあるが、「良いカメラは勇気を与えてくれる」ものである。
頼れる相棒がいれば頑張ることが出来る。これは何よりも大事なことだと思う。
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