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自己紹介

 満を持して、noteに上陸した。関西では5人くらい熱烈な読者がいるといわれる人気ブログ、トシハるメモリアルからやってきた。京都生まれの京都育ち。いまはアフリカのトーゴ共和国という国での会社づくりに邁進している。トーゴを中心に住まうエウェ族と京都の染色文化の融合をディレクションしている。

 1年半前は、京都信用金庫の営業担当だった。行く先々で、これまで知らなかった京都をたくさん見た。たとえば、お世辞にも綺麗とはいえない佇まいの染色工場で、ドロドロのジーパンを履いて、爪のあいだには染料がこびりついている職人。その手が、ぼくはとても美しいと思った。翻って、アイロンのかかったスーツをパリッと着ていたぼくは、どうだったか。

 その京都の職人は、国内外のハイブランドからオファーが絶えず、モードの最高峰といわれるパリコレクションにも、多くの作品を納めていた。それでも、業況は悪かった。メーター数百円の加工賃で買い叩かれる一方で、染料の価格は値上がりし、あまりに厳しすぎる状況にあった。「先週、近所でまた廃業したとこあったわ」と何気ない会話で交わされたりする。市場から求められなければ淘汰されていくのはわかる。ただ、生活に根ざし、文化として培われてきたものが、経済的な理由だけで失われてしまっていいのか。

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 7年半前、ぼくは海を渡ってアフリカ大陸にいた。大学を休学して、当時、在留邦人が2人しか居ないトーゴ共和国へ向かった。物々交換で、ある程度の生活ができてしまうようなコミュニティが、そこにはあった。ぼくが痙攣で倒れたときも、近所のおばちゃんや子どもたちが助けてくれて、その地域に伝わる音楽をBGMにして手拍子とダンスで励ましてくれた。今ぼくが、たとえば道端で倒れたとして、声を掛けてくれる人は、果たしているだろうか。

 人間関係の豊かさのなかに、なにを大切にして生きていくかを考え直す機会もトーゴでの生活にはあった。

 ある日の昼下がり、現地の友だちが集団リンチを受けた。彼はダウン症で、まわりから悪魔だと罵られたり、唾を吐きかけられたり、体が血まみれになるまでムチで打たれたりした。そんな現実をまえに、「家も建てたいし、車にも乗りたいけれど、目の前の友だちが傷つく世の中に生きていたくない」と叫ぶ友だちとも出会った。「みんなが笑って過ごせる世界をつくる」と訴える彼の目をみて、ぼくはまたアフリカに戻る約束をした。いまぼくがトーゴで起業しているのは、彼らとのそんな時間があったからだ。

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 アフリカで会社をやっているというと、貧困に対する援助活動というニュアンスで捉えられることが多い。しかし生活を切り取ったとき、日本も同じくらいに、もしくはそれ以上に、貧困と思えるようなシーンが多くある。この世間一般の認識と、ぼく自身の体感との乖離に、ずっと違和感をもっていた。創業してから、このうまくいえない感情をどう伝えたらいいのかと考えてきた。

 最近、出会った人から「バイアスをかけた瞬間に、その人でなくなってしまう」と教えてもらったことがある。アフリカというバイアスが、そこに住まう人たちへのリスペクトを奪うことがある。ステレオタイプの「アフリカ」に対して違う角度から光をあてるためには、一次情報を届ける必要があると思った。

 現場の情報をその人の体験にしてしまえば、多様な視点から、複合的なテーマ設定で対話を重ねることができるのではないか。さらに生活の基盤となる衣食住の「衣」の延長に、ぼくたちの事業をとおして体感する「アフリカ」があれば、人類学や開発経済学の領域に留まらない何かが現れるのではないか。そしてそれは、いろんなものが見える化されて、数字に置き換えられていく世の中でこそ光を放つのではないか。

 染色文化を大切にするエウェ族と京都の職人たちの営みを、それぞれの感覚に届けるファッションを提案する。そのことは社会課題の解決みたいな、遠くて難しくて楽しくなさそうなものではなくて、もっと面白い未来に向けて、人類に一石を投じることができる可能性がある。合理的に説明できない、アフリカと京都のコラボレーションによって新たな価値を生み出し、既存の価値の概念(貨幣経済の枠組み、資本主義経済、経済至上主義みたいなやつ)を問い直すというのが、ぼくが挑戦していることだ。

 ぼくたちの生活は経済的なものだけでは語りきれない。文化的なものとか精神的なものとかも含めて、ごちゃまぜにしたようなグラデーションのなかを生きている。そういう当たり前の営みを再確認できる仲間(そんな存在をぼくたちは「DOGS」と呼ぶ)のコミュニティをつくろうとしている。人間的な、すこし泥くさいコミュニティが少しずつ大きくなれば、そこは世知辛さを感じている誰かの居場所になるし、そんな居場所があれば、きっと誰かの背中を押すことができる。ぼくたちのファッションは、その景色を実現するためにあるし、そこまで連れていってくれるプロセスを詰め込んでいる。

 noteのみなさん、あけましておめでとう。


★アフリカドッグス初のショップが西陣にオープン
AFURIKADOGS×Deabalocouture
(アフリカドッグス×デアバロクチュール)
https://afurikadogs.com/




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