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娯楽映画研究所ダイアリー 2022年3月7日(月)〜3月13日(日)

月曜更新!佐藤利明の娯楽映画研究所『スパイダーマン:ノーウェイ・ホーム」に見るマルチバースの楽しさ

今回は「マルチバース2022」の楽しさを「スパイダーマン」話からタップリと!「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」「サンダーバード55」「ウエスト・サイド・ストーリー」「ゴーストバスターズ アフターライフ」みんなみんなマルチバースなんだ!最高なんだ!という話をタップリとしてますよ。

3月7日(月)『恋とのれん』(1962年・松竹・番匠義彰)・『素晴らしき十九才』(1959年・松竹・番匠義彰)・『警視庁物語 謎の赤電話』(1962年・東映・島津昇一)・『拾った女』(1952年・FOX・サミュエル・フラー)

ラピュタ阿佐ヶ谷、番匠義彰「恋とのれん」。月曜だけどフル! 番匠喜劇の面白さが、映画ファンに伝播して、夢のような空間に! さあ、みんなで、湯島天神下の料理旅館の若女将に会いに行きましょう!

ラピュタ阿佐ヶ谷『恋とのれん』(1962年・松竹・番匠義彰)。細野辰興監督、のむみちさん、寒空はだかさんとアフタートークで幸福感を分かち合う。桑野みゆきさん、淡島千景さんの二世代女将と、山下洵一郎さん、佐野周二さんの二世代板前の「恋」と、湯島天神下の料理旅館の「のれん」ああ、楽しき哉、番匠下町喜劇!

ラピュタ阿佐ヶ谷、続きましては、番匠義彰『素晴らしき十九才』(1959年)。採れたてのザ・ピーナッツはじめ、中村八大さんなど充実の音楽ゲスト。若大将前夜の若旦那1959スタイル。なにもかもフレッシュ! しかも、マヒナスターズが名曲「汐風」を歌ってくれるのです!

待望の未見作『警視庁物語 謎の赤電話』(1962年・東映・島津昇一)を堪能。築地・銀座→新橋→東武東上線→浜松町→湾岸→西銀座→地下鉄・西銀座駅(丸の内線)→赤坂見附→四谷→新宿→歌舞伎町。東京映画探検を味わう。


続いてニューヨークのサブウェイ探検。サミュエル・フラー監督の変な映画。リチャード・ウィドマーク『拾った女』(1952年・FOX)をアマプラで。50年代ノワールを見続けてくると、この映画の変さ加減がよくわかる。前科三犯のスリ(ウィドマーク)がスった女の財布には、共産スパイが東側に流すための機密フィルムだった。着想の面白さに比して、映画の視点がどんどん変な方向に行く。これをカルトというのは容易いけど、ちゃんとしていない映画ともいえる。気の毒なのは、セルマ・リッターの情報屋おばさん。あんな殺され方しなくても、と、初見の時も思ったけど、四半世紀経ってもその印象は変わらない。やっぱり変な映画(笑)

3月8日(火)『私は殺される』(1948年・パラマウント・アナトール・リトヴァク)・『浮かれ三度笠』(1959年・大映京都・田中徳三)

今宵の娯楽映画研究所シアターは、アナトール・リトヴァク&バーバラ・スタンウィック『私は殺される』(1948年・パラマウント)。バーバラ・スタンウィックの芝居は素晴らしく、映画の仕掛けも見事だが、何度見ても後味が… 89分のオンタイム(回想シーンはあるが)サスペンスは、胸が苦しくなる。フランツ・ワックスマンの音楽、ソル・ポリとのキャメラ、お見事!

続いては、市川雷蔵さんの「濡れ髪シリーズ」第3作。田中徳三監督『浮かれ三度笠』(1959年・大映京都)。本郷功次郎さんのイキも良く、中村玉緒さんが可愛い。明朗時代劇の楽しさいっぱい。いささか冗長ではあるが、眺めていて楽しいのでOK。かしまし娘も大活躍!

3月9日(水)『バットマン』(1989年・ワーナー・ティム・バートン)・『バットマン・ビギンズ』(2005年・クリストファー・ノーラン)

帰宅後作業を終えて、ティム・バートン「バットマン」(1989年)、クリストファー・ノーラン「バットマン・ビギンズ」(2005年)の二本立て。前者は捻った活劇の面白さ。後者は復讐と正義の葛藤のドラマ。「ザ・バットマン」への期待に胸膨らます!

3月10日(木)『ふりむいた花嫁』(1961年・松竹・番匠義彰)・『浮気のすすめ 女の裏窓』(1960年・松竹・番匠義彰)・『バットマン リターンズ』(1992年・ワーナー・ティム・バートン)・『ダークナイト』(2008年・ワーナー・クリストファー・ノーラン)

さあ、番匠義彰監督「ふりむいた花嫁」。大泉滉さんの「どじょう博士」をスクリーンで! 帰りに駒形どぜうに行きたくなる映画! お客さんフルで、嬉しや!

続きましては、昭和30年代東京風俗地図ともいうべき、番匠義彰「浮気のすすめ 女の裏窓」。伴淳さんが何故かモテモテ!ポン引きの大泉滉さんが最高!昭和35年、売春防止法から2年の東京の風俗事情スケッチの艶笑喜劇。伴淳がカタブツで据え膳食わず、さらにはなぜか清純・岩下志麻さんにモテモテの謎。番匠のテンポの良さ、大泉滉さんの真面目なポン引きの可笑しさ!

今宵はティム・バートン『バットマン リターンズ』(1992年)。あれから30年か。バートンらしい素敵な悪趣味の世界。ミシェル・ファイファーが素晴らしい。続いて、クリストファー・ノーラン『ダークナイト』(2008年)。圧倒的なフィルムノワール。ヒース・レジャーの狂気。見事な構成。傑作!

これまた20年ぶりぐらいに『バットマン リターンズ』。当時、新しかったティム・バートンのウインターワンダーランドが、もはや古典の輝きを放っている。ミシェル・ファイファーの冴えない秘書が、キャットウーマンになって究極セクシーに。キーはKiss。コスプレ倒錯の入口のようなバットマンとの愛!

昨夜、10年ぶりぐらいに『ダークナイト』を再見。1930年代から連綿と続いてきたワーナーのギャング映画、ノワールの伝統あればこその狂気。ハービー・デントとジョーカーの対比が見事で、これほどまでバランスのとれた異常な世界を現出させたクリストファー・ノーラン、すごいな。(今さらだけど)

3月11日(金)『ザ・バットマン』(2022年・ワーナー・マット・リーヴス)・『アダム&アダム』(2022年・ショーン・レヴィ)・イタリア版『怪獣王ゴジラ』(1977年)

これから109シネマズ木場で「ザ・バットマン」IMAXレーザーで観ますよ。175分と長尺ですが、ナゾラーいやリドラーが、「ダークナイト」のジョーカーのように、すごーいリブートしている筈なので、見届けないと…

マット・リーブス「ザ・バットマン」。175分の悪夢を観る至福。今回のバットマンは生身、傷だらけのヒーロー。暗くて、重いけど、ギャングスター映画、フィルムノワール好きにはたまらない。自分が好きな映画の要素が全部入っている。

ロバート・パティンソンのブルース・ウェイン=バットマンが良い。ジェフリー・ライトのゴードン警部補と、捜査を進めていくハードボイルド探偵映画的な趣向もいい。スーパーヒーロー映画というより、ダークなフィルムノワール。

なんといっても、ゾーイ・クラヴィッツのセリーナ=キャットウーマンが良い。バートンの「バットマンリターンズ」同様、バットマンとキャットウーマンのKissが重要なポイントになっている。

MCUの陽性と対極のダークさに酔いしれる。リドラーのアップデートも見事。ポール・ダノが悲しきサイコパスを圧倒的に演じている。「ダークナイト」のヒース・レジャーのように、シリーズの新たな魅力になっている。

コリン・ファレルのペンギンは、怪人ではなく、狡猾なマフィアというのもいい。マフィア映画好きにはたまらない。そしてカーマイン・ファルコーネ役のジョン・タトゥーロ!いゃあ、悪いのなんの!

ヒーロー映画が苦手な人にもオススメです。これぞ、ハリウッドのギャングスター映画、ノワールの伝統を踏まえた、究極の犯罪映画ですから!
次作が今から楽しみに!

Netflixで今日から配信の、デッドプールの妻がガモーラで、父がハルクの(笑)「アダム&アダム」(ショーン・レヴィ)をプロジェクター投影。2050年の未来からやってきたアダムが2022年の自分と一緒に、2018年に行くタイムトラベルものだけど、抜群に面白かった!

Amazon prime「スタートレック:ピカード」S2 第2話「処罰」。なんとボーグクィーン登場! セブンがアニカ・ハンセンとなった別な世界! テラン帝国ネタかと思いきや! Qのイタズラか? 嗚呼、これまでのスタートレックの集大成のような展開に、面白くってたまらん! 来週も楽しみ!

イタリア版『怪獣王ゴジラ』(1977年)初めて観た。しかもカラー!
東宝特撮映画の海外版。色々観てきたけど、1977年にイタリアのルイジ・コッツィが、米版「怪獣王ゴジラ」を再編集した「Cozzilla」は、当時の劇場の要請で不思議な色をつけて、随所にニュース映像をインサートしたリ・アレンジ版。妙な迫力があり「悪夢」感が増している。

日本語→英語→イタリア語。と上書きされてもなお、ゴジラのインパクトは変わらない。パチモンじゃなく、パラマウントから権利を勝手の再編集。東宝版の主なスタッフクレジットもある。画面の一部に赤色とか着色していて、それが不思議な効果を出している。

特に大戸島にゴジラが来襲して、山本廉さんが被害に遭うシーン。台風の映像などをインサートして、特撮の効果を高めている。なかなかのセンス。イタリア語のモノローグがディザスター感を高めてるし。

しかも音楽が、ルチオ・フルチ「サンゲリア2」のファビオ・フリッツィの電子音楽なので、1950年代のクラシック映画に、1977年代のホラー映画の味も加味されて、不思議さが倍増(笑)

ゴジラ東京襲撃シーンのインサート映像が凄過ぎて、特に「乙女の祈り」が流れる鎮魂のシーンのフッテージは実際のニュースフィルムを多用して、目を覆ってしまうほど残虐。さすがイタリア映画という感じ。80分の「怪獣王ゴジラ」を92分に引き伸ばしているのので、12分はそうしたフッテージを追加。

3月12日(土)『ダークナイト・ライジング』(2012年・ワーナー・クリストファー・ノーラン)・『唄ふ弥次喜多』(一九三六年三月二六日・P.C.L.映画製作所・岡田敬、伏水修)

「ザ・バットマン」。一夜明けて、また観たくなっている。映画館の暗がりに身を潜めて、あの重く苦しい映像体験がしたくなる。175分のダークなノワールは映画館で体感するに相応しい。ジェームズ・キャグニーからデニーロたちが構築してきたギャング映画の血とざらついた世界がそこにあるから。

『ザ・バットマン』の興奮さめやらず、クリストファー・ノーラン「ダークナイト三部作」の最終作『ダークナイト・ライジング』(2012年)をスクリーン投影。

あれからもう10年!試写で観て、劇場に二度足を運んだのがついこの前のことだと思っていたけど。改めて見直すと、やはりディケンズの「二都物語」をベースにしているだけに、見事な構成。ハービー・デントが死んで8年、彼の罪を背負って姿を消したバットマン。デント法が施行されて、ゴッサムシティの犯罪率が低下、平和が戻ったかのように見えた。

しかし、傭兵上がりの大悪党ベイン(トム・ハーディ)がその平安を乱して、再び混沌の時代が始まる。そこで、隠遁生活をしていたブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)が再びバットマンとして復活する。というストーリーを、良い意味でのヘビーな描写で見せていく前半。重い雰囲気のなかで、華やかな色を添えるのが、美人泥棒・セリーナ・カイル(キャット・ウーマン)の暗躍。お馴染みキャット・ウーマンとバットマンが共闘関係になって、ゴッサムシティの危機を救うわけだが、クライマックスが壮絶。何度見ても面白い。

中性子爆弾を手にしたベイン一味が、ゴッサムシティを占拠。市民を人質にして破滅へと突っ走る。絶体絶命のなか、ジム・ゴードン(ゲイリー・オールドマン)たち警官が「自警団」を結成。つまり、警官たちがバットマンの役割を果たすのだ。

孤児院出身の警官・ジョン・ブレイク(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)が、狂言回し的に登場して「本当の正義とは?」をテーマに展開するのもいい。「裕福な孤児=ブルース・ウェイン」と「貧しい孤児=ブレイク」が、それぞれの立場で「正義のために戦う」。これぞディケンズの世界!

クライマックスの市街戦は、ヒーロー映画のヴィジュアルを超えて、圧倒的な迫力。Blu-rayソフトでは、IMAX撮影の部分が拡張されるのだけど、主要シーンのほとんどがIMAXだったことがよくわかる。

「鉄腕アトム」「ジャイアントロボ」のように、バットマンも自己犠牲でゴッサムシティを救う。遥か彼方の洋上のキノコ雲。バットマンの最期か! と当時は唖然とした。

そしてハリウッド映画らしい鮮やかなオチがいい。ブレイクの本名が「ロビン」だったとわかり、引退したアルフレッド(マイケル・ケイン)がフィレンツェのカフェで夢に見た光景を目の当たりにする。クリストファー・ノーラン「ダークナイト」三部作、悪くないね(何を今更・笑)

久しぶりに戦前喜劇映画原稿UPしました!
2.26事件当日も撮影していた古川ロッパ喜劇!

最近の就寝前のお楽しみ。MGMの鬼才・テックス・アヴェリーの短編漫画映画を二本ずつ観て大笑い。視覚ギャグ、なぜかこうなるの連続に、アタマもココロもスッキリ。Blu-rayの高画質で1940年代から連綿と続いた超絶ギャグの系譜を堪能!

3月13日(日)『ラヂオの女王』(一九三五年八月十一日・P.C.L.映画製作所・矢倉茂雄)

ザッツ・ニッポン・エンタテインメント! 戦前喜劇音楽映画連投です。単行本化を準備中。


よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。