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『許されざる者』(1992年・クリント・イーストウッド)

 新作『クライ・マッチョ』が楽しみな、クリント・イーストウッド監督・主演の傑作『許されざる者』(1992年)を投影。ワーナーの試写室で観て感激してから、もう30年も経ったのかとしみじみ。


これぞ男の貌!

 1880年のワイオミング。小さな町・ビッグ・ウィスキーの娼家で、客のカウボーイが娼婦の態度に怒って、瀕死の重傷を負わせる。保安官・リトル・ビル・タゲット(ジーン・ハックマン)は、カウボーイが店の主人に馬七頭を渡すことで示談にしてしまう。

 腹の収まらない娼婦たちは、なけなしの貯金を出し合って、1000ドルの賞金をカウボーイの首にかける。その噂を聞いた、血気盛んなチンピラ、スコフイールド・キッド(ジェームズ・ウールヴェット)は、伝説のアウトロー、ウイリアム・マニー(イーストウッド)にカウボーイ殺しを持ちかける。

 セルジオ・レオーネとドン・シーゲルに捧ぐ。とクレジットされているように、この映画はイーストウッド西部劇の集大成として作られている。かつては極悪非道だったアウトローが、今は亡き恋女房のおかげで改心して真人間となって、二人の子供を育てている。

 そこへ懸賞首の話を持ちかけられ、子供たちの将来の資金が欲しいマニーは、その話に乗る。そしてかつての相棒・ネッド・ローガン(モーガン・フリーマン)とともに、ビッグ・ウィスキーへ。

 物語はシンプルだが、かつての凶状持ちのイーストウッド、今はインディアンの女房と静かに暮らしているフリーマン。そして自分の安泰のために、カウボーイ殺しをさせまいとするジーン・ハックマン。さらに、賞金首の噂を聞きつけて現れた英国人の凄腕ガンマン・リチャード・ハリスと、四大スター、それぞれの芝居をたっぷりと見せてくれる。リチャード・ハリスの食わせ者ぶりもいい(笑)

 クライマックス、他勢に無勢、満身創痍の状況で、イーストウッドがジーン・ハックマンと対峙する。このガンファイトは、西部劇としても、アクション映画としても素晴らしい。全てが終わって、ウイスキーをグッと飲み干して、生き残った連中に、睨みを聞かせながら店を出ていくシークエンスは、何度観てもドキドキする。

 レオーネであり、シーゲルであり、黒澤明であり、やはりイーストウッドである!トップシーンからエンディングまで、ワンカットも無駄がない。詩情とバイオレンス、西部の男の意地、人生への後悔などなど、さまざまなエレメントが、観客の心を揺さぶる。静かだけど激しい。これぞイーストウッド映画! 第65回アカデミー作品賞受賞した傑作。


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