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『イースターパレード』(1948年・チャールズ・ウォルターズ)

では、本日は復活祭につきまして『イースターパレード』を観ることにします。オープニングの♪Happy Easterから夢見心地、そして♪Drum Crazyでゴキゲンに!
「イースターパレード」は他のMGMミュージカル同様、脇役が実にいい。クリントン・サンドバーグ演じるバーテン、ジュールス・マンシン演じるレストランのプライドの高い給仕。場面をさらってしまう。監督のチャールズ・ウォルターズはダンサー出身だが、細かいところに目の届く人。それゆえ傑作に!


そしてジュディ・ガーランド演じるハンナ・ブラウン。登場シーンの♪I Want to Go Back to Michiganは、1914年のヴォードヴィルソング。彼女のコメディエンヌとしての才能が最大限に生かされて、続くアステアとのレッスンのトンチンカンさが、微笑ましさを超えて爆笑を誘う。


『イースターパレード』を初めてスクリーンで観たのは1984年。日比谷映画のさよならフェスティバル。キャサリン・グレイソンの『ショウボート』と二本立てで、仕事を休んで、二日間。二階席の最前列に居続けだった。あの感激は忘れない!


アステアに「人を振り向かせてごらん」と云われたジュディ。道ゆく人が微笑んで去ってゆく。どんな素振りをしているのかと、キャメラがジュディに向くと。なんとハーポ・マルクスのグーキー・フェイスだった、というオチのおかしさ。


ジュディとピーター・ローフォードの出会いの雨のシーン。♪A Fella with an Umbrella は一回見たら覚えてしまうような優しいメロディのデュエット・ソング。大きなパラソルを差して、舗道でローフォードが囁くように歌い、2コーラス目をジュディが歌う。なんか返歌みたいでいいの。恋する未満みたいな(笑)
そしてアステアのアパートでのレッスン。アステアのピアノにジュディのボーカルで♪"I Love a Piano。二人で踊ったところでヴォードヴィルでのモンタージュとなり「ハナ&ブラウン」の人気上昇が描かれる。ああ、なんて楽しいんだ!こんなに幸せな映画があるなんて!といつも思います。


このヴォードヴィル・モンタージュは、最後にジーグフェルド劇場でのオーディション・ナンバー♪When the Midnight Choo-Choo Leaves for Alabamで最高潮!なんて気持ちが良い展開なんだろう。お話をミュージカル・ナンバーが推し進めていく。これぞMGMミュージカルの楽しさ!


シドニイ・シェルダンの脚本は、ボーイ・ミーツ・ガール→フォーリン・ラブ→ロスト・ラブの感情を巧みに織り込んで、笑いとナンバーの鏤めかたも上品で、最高のハッピーエンドが待っている。これぞ、娯楽映画の本寸法。あ、アン・ミラーの♪Shakin' the Blues Away だ!これぞショウ・ストッパー!


この映画はもともとジーン・ケリーとジュディの共演作として準備が進められていたけど、ケリーがケガをして急遽、引退中のアステアが代役に、さらにシド・チャリースも怪我して出れなくなって、この映画のためにアン・ミラーがMGMに入社。最高のタッパーとしてクルクルクルクル大活躍していきます!
次の♪It Only Happens When I Dance With You はアステアとジュディがキスして仲直りした後のナンバー。トーチソングとしても佳曲で、ジュディの歌声が切ない乙女心を表現していて胸がキュンとなる。目の動き、伏せ目がちの表情などが愛の告白になっている。とにかく表現が豊かなのです。


いよいよ二人のショウ。アステアの♪Steppin' Out with My Babyは、白いスーツにカンカン帽、ベスト、タイ、チーフ、靴下、みんな赤色。これぞ粋!アステアの華麗なステップに、ジーン・ケリーのアイデアのスローモーション・ダンスがプラス!この後にジュディの♪Mr.Monotonyが入る予定だったのです。


アステアとジュディの♪We're a Couple of Swells。いわゆる「乞食紳士の歌」です。これは多くのパフォーマーに影響を与えて、中野ブラザースが『ひばりチエミいづみ 三人よれば』(64年)の振付を担当した時に、三人娘にそのまんまの扮装をさせて踊らせました。ジュディも晩年までレパートリーでした。


客演のリチャード・ビーバーズの♪The Girl on the Magazine Cover はMGMらしいスペクタクル。続くアン・ミラーとアステアの♪It Only Happens When I Dance With Youのダンスは、本当にエレガントで素晴らしい。もっと、この二人を観ていたくなる至福の時であります。ミラーの衣装が本当に美しい。


傷心のジュディが、バーテンのクリントン・サンドバーグの詩を聞いてから歌うトーチソング♪Better Luck Next Time。ジュディ・ガーランドの切ない歌声が胸にズシンと来ます。なんて歌がうまいんだろう。そして、誰もがハッピーになる♪Easter Paradeで大団円。ああ、楽しいなぁシネ・ミュージカルは!

よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。