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娯楽映画研究所ダイアリー 2021年10月18日(月)〜10月24日(日)

佐藤利明の娯楽映画研究所 2021年10月18日
日本映画のアルチザン 中平康の世界

10月18日(月)『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021年)・『ホドロフスキーのDUNE』(2013年)・『第三の悪名』(1963年1月3日・大映京都・田中徳三)

 『DUNE/デューン 砂の惑星』155分の砂嵐の旅。中学時代に原作に夢中になり、1984年のリンチ版にガッカリしていたけど、今回の映画化は大成功!「スターウォーズ」789のフラストレーションを吹き飛ばしてくれた。「未来惑星ザルドス」からシャーロット・ランプリング様も!ラストのチャニの一言に頷く!IMAXのフル画角は、もう眼福というか、博覧会映像のような異世界探訪を満喫。昨夜リンチ版を観なおしていただけに、「忠臣蔵」映画を見るような心持ちで、ああ、あのシーンはこうなるのか!このセリフ、うまく活かしてるな、などなど、リメイク見比べの楽しみも満喫。

 基本的には、原作を読み、映像化を観てきたファンには、戦国時代劇の映画化を楽しむようなもので、あ、男爵が浮いた! 母と息子が飛行機に拉致された! 砂虫はタトゥーインのサルラックの親戚なのか? ユエ博士、差し歯を出してきた! ダンカン、頑張れ!とか、そういう「ご存知の楽しみ」がたまらない。というわけで、IMAXフル画角で「アラキスの砂漠めぐりの旅」オススメします!

 今宵の娯楽映画研究所シアター第一部は、『デューン 砂の惑星』の映画化に情熱をかけたアレハンドロ・ホドロフスキー監督のドキュメンタリー『ホドロフスキーのDUNE』(2013年)を久しぶりに観た。今日、池袋グランドシネマサンシャインで、IMAXレーザー『DUNE 砂の惑星』(ドゥニ・ヴィルヌーヴ)を観ながら、もう一度『ホドロフスキーのDUNE』を観たいなぁと思っていた。するとAmazonプライムにあるではないか! 昨夜は、デヴィッド・リンチの世紀の大失敗作『デューン/砂の惑星』(1984年)を観て、今日はヴィルヌーヴとホドロフスキーの「DUNE」を味わう。

 今回の「カツライス」は、カツ単品で、勝新太郎&田宮二郎主演、シリーズ第五作『第三の悪名』(1963年1月3日・大映京都・田中徳三)をスクリーン投影。今東光原作から設定だけというか、映画版独自のクロニクルとして、依田義賢がシナリオを執筆。タイトルの「第三の悪名」は、日活からフリーになったばかりの長門裕之のこと。

 飯島敏宏監督には本当にお世話になりました。渥美清さんとの「泣いてたまるか」の話もたくさん伺いました。最終回「男はつらい」は山田洋次監督脚本、飯島監督演出の「寅さん」前夜の傑作です。「ウルトラマンコスモス」劇場版のパンフでインタビューした時に、飯島作品の子供たちは走りますよね、と伺ったら「子供は走るもんなんだよ」とニコニコされていました。そこから少年時代の想い出を話してくださいました。ご冥福をお祈りします。

 飯島敏宏監督「ウルトラマン」25話「怪彗星ツイフォン」。25分の尺で、彗星衝突の危機、日本アルプスでのギガス、ドラコ、レッドキングの死闘。水爆を飲み込んだレッドキング対ウルトラマン。ラストの平和へのメッセージまで盛り沢山。だが駆け足でなく、ゆったりとした味わい。優れた演出による傑作。

10月19日(火)『最後の決闘裁判』(2021年・リドリー・スコット)・『陸軍中野学校 竜三号指令』 (1967年1月3日・大映京都・田中徳三)・「悪名市場」(1963年・大映・森一生)

 これからTOHOシネマズ日本橋で、リドリー・スコット『最後の決闘裁判』。マット・デイモンとベン・アフレックが脚本、というと『グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち』コンビ復活!期待が高まる。コスチュームプレイが大好きなので、制作時から楽しみにしていたのであります。リドリー・スコットらしく、重量級だけど分かりやすい。黒澤明『羅生門』スタイルで、マット・デイモン、アダム・ドライバー、ジョディ・カマー、それぞれの「真実」が描かれる。ディティールも素晴らしく、ラストの決闘は怪獣映画のよう。力強く、繊細で、悲しく、究極の愛の映画。マット・デイモンが市川雷蔵、アダム・ドライバーがまるで勝新!と「カツライス脳」も発動しましたが、時代劇としても、人間ドラマとしても、良く出来ています。

 今回の「カツライス」一枚目は、市川雷蔵が和製ジェームズ・ボンドともいうべき特務機関のスパイを演じた、和製スパイ映画シリーズの第三作『陸軍中野学校 竜三号指令』 (1967年1月3日・大映京都・田中徳三)。空前の007ブーム、忍法帖ブームのなかに作られたシリアスなテイストの活劇。日中戦争が激化するなか、また欧州大戦の火蓋が切って落とされようとするときに、ギリギリまで「平和」の可能性(あくまでも戦前の感覚だが)を信じて、スパイ養成のための「陸軍中野学校」を設立した草薙中佐(加東大介)。その第一期生で、自分の本名や家族も捨てた男・椎名次郎(市川雷蔵)との関係は、まさに「ジェームズ・ボンド」シリーズのMと007の関係。


 続いてシリーズ第六作『悪名市場』(1963年・大映・森一生)は、ニセ朝吉(芦屋雁之助)とニセ清次(芦屋小雁)登場の爆笑篇。「ゴジラ対メカゴジラ」と同じシチュエーションに!しかも、バーテン姿の大魔神=橋本力さんまで!

 今回の「カツライス」二枚目は、脂の乗り切ったロースカツのような、シリーズ第六作『悪名市場』(1963年4月8日・大映京都・森一生)。朝吉=勝新太郎と、清次=田宮二郎の“悪名コンビ”についにニセモノが登場する。シリーズものが定着して“みなさまご存知”となってくると、本家の評判にあやかろうと“ニセモノ”が登場する。


10月20日(水)『その人は遠く』(1963年・日活・堀池清)・『アラモ』(1960年・ユナイト・ジョン・ウェイン)

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 これから神保町シアターで、堀池清監督『その人は遠く』(1963年・日活)を。芦川いづみさんに焦がれる山内賢さん。多くの観客がその心情にシンクロするバーチャル青春映画でもあります。相当波瀾万丈な展開だけど、芦川いづみさんがただただ美しく、可愛くて、ドキドキさせてくれる。山内賢さんの恋心を、結果的に弄んでしまうお姉さん。初体験ものにならないのがイイ。あくまでもプラトニック。かなり世帯じみてる純愛。和泉雅子さんも、ただのお嬢さんでなくて、日活映画らしく、心に屈託を抱えている。芦川いづみさんと、山内賢さん、和泉雅子さんの微妙な心のパワーバランス。心のやじろべえが、後半のドラマ。日活随一の「叙情派」堀池清監督の演出は丁寧で、ゆったりとした時間を過ごしたような心持ちに。しかし、芦川いづみさん、美し過ぎる!

 ここのところ2時間半を超える映画を立て続けに見ている。『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(163分)、『ONODA 一万夜を越えて』(175分)、『D U N E/砂の惑星』(155分)、『最後の決闘裁判』(153分)と、いずれも、僕の一つの大作映画上映時間尺度である『クレージー黄金作戦』(157分)クラスの長さである。長ければいい、というものではないが、この秋に観た作品は、いずれも「必然の長さ」で、それぞれを堪能した。先日、『D U N E/砂の惑星』を観ている時に、ふとジョン・ウェインの『アラモ』(1960年・ユナイト・ジョン・ウェイン)の202分版のBlu-rayは日本ではリリースされないのかな?と頭をよぎった。


10月21日(木)『陸軍中野学校 密命』(1967年6月17日・大映京都・井上昭)・『悪名波止場』(1963年9月7日・大映京都・森一生)

 今宵の娯楽映画研究所シアター、カツライスは市川雷蔵さんのシリーズ第四作『陸軍中野学校 密命』(1967年・井上昭)。上海で重慶のスパイに秘密を漏らした容疑で、椎名次郎(雷蔵)は、憲兵大尉(伊達三郎)から厳しく責めたてられ、東京へ送還されるが… 今回の脚本は、舟橋和郎さん。メリハリはないが、本格スパイものとしては、なかなかの展開。

 もう一皿は、勝新太郎さんと田宮二郎さんのシリーズ第七作『悪名波止場』(1963年・森一生)。前作のラストに登場した、藤田まことさんのニセ清次の不始末を、結果的に尻拭いすることになる悪名コンビ。舞台は、宇品港。伊達三郎さん、吉田義夫さんの悪辣なやくざたちのやり口は、かなりえげつない。麻薬漬けにされている、ニセ清次の妹に紺野ユカさん、朝吉に惚れる過去のあるバーの女性に滝瑛子さん。紺野ユカさんの、どうしょうもない亭主に水原弘さん。今までの喜劇映画テイストを残しつつ、やくざ映画にシフトしてきているのは、任侠ブームの1963年だからだろう。

 今回のカツライスは、市川雷蔵の和製ジェームズ・ボンド、いやハリー・パーマーが活躍する本格スパイ映画シリーズ第四作『陸軍中野学校 密命』(1967年6月17日・大映京都・井上昭)を娯楽映画研究所シアターでスクリーン投影。空前のスパイ映画ブームが、映画界を席巻していた。ちょうどシリーズ第五作『007は二度死ぬ』(1967年・ルイス・ギルバード)は、本作と同時公開。大映は、本家007の公開日に「陸軍中野学校」をぶつけたのだ。映画館では、ジェームズ・ボンドV S椎名次郎「英日スパイ映画」合戦が展開していたのだ!”

 カツライス二皿目は、勝新太郎&田宮二郎のシリーズ第七作『悪名波止場』(1963年9月7日・大映京都・森一生)。前作『悪名市場』(森一生)は、四国を舞台にニセ朝吉(芦屋雁之助)とニセ清次(芦屋小雁)が巻き起こす大騒動の喜劇篇だったが、今回は、その帰り道に遭遇したトラブルのお話。これまでは、やんちゃな男たちの「喧嘩」「騒動」が主体で、第二作『続・悪名』(1961年・田中徳三)のラストで“モートルの貞”が衝撃の死を迎えた以外は、殺し合いや死はあまり描かれてこなかった。


10月22日(金)『ネバー・セイ・ネバー・アゲイン」(1983年・アーヴィン・カーシュナー)・『陸軍中野学校 開戦前夜』(1968年3月9日・大映京都・井上昭)

 今宵の娯楽映画研究所シアターは、英・日スパイ映画戦。ということでショーン・コネリー久々のボンド復帰した『ネバー・セイ・ネバー・アゲイン』(1983年・アーヴィン・カーシュナー)を、Blu-rayで「日曜洋画劇場」若山弦蔵さん吹き替え版で。改めて見直すと、本寸法のコネリー・ボンドで、『サンダーボール作戦』のリメイクなんだけども、新鮮な味わい。なんといってもバーバラ・カレラの美人だけど、ヘンな殺し屋・フィオナが最高!こういうキャラの膨らませ方(ワルノリとも)が、娯楽映画を面白くする。

もう一本は、市川雷蔵さんのシリーズ最終作『陸軍中野学校 海戦前夜』(1967年・井上昭)。長谷川公之さんの緻密なシナリオで、昭和16年11月6日から12月8日までの必死の情報戦。対米戦を視野に入れた御前会議の機密を探る、米英サイドのP機関。椎名次郎(雷蔵)はじめ特務機関員たちは、民間人に紛れているスパイを突き止めようとする。小山明子さんが今回のヒロイン。フランツ・フリーデル、マイク・ダーニンなど、お馴染みの外国人タレント大活躍。京都ロケの「横浜」が効果的。しかし、市川雷蔵さん、カッコいい! ラストの加東大介さんのセリフが見事!シリーズ最高作を改めて堪能。

 娯楽映画研究所シアターで、ショーン・コネリーが『ダイヤモンドは永遠に』(1971年)以来12年ぶりに、ジェームズ・ボンドを演じた『ネバー・セイ・ネバー・アゲイン』(1983年・米英・アーヴィン・カーシュナー)を10数年ぶりに再見。イオン・プロダクション製作の007シリーズではなく、ジャック・シュワルツマン率いるタリア・フィルムの製作による単発作品。製作総指揮のケヴィン・マクローリーが、イアン・フレミング「サンダーボール作戦」の原作者の一人として映画化権を所有していたために、映画化が実現した。

 昭和41(1966)年にスタートした、市川雷蔵主演のスパイ映画「陸軍中野学校」シリーズ第五作は、いよいよ昭和16年11月、太平洋戦争開戦前夜の物語となる。『陸軍中野学校 開戦前夜』(1968年3月9日・大映京都・井上昭)は、結果的に、翌年、昭和44(1969)年7月17日の雷蔵の急逝により、これが最終作となった。

10月23日(土)『騎兵隊』(1959年・ユナイト・ジョン・フォード)

 今宵の娯楽映画研究所シアターは、ジョン・フォード監督、ジョン・ウェイン&ウイリアム・ホールデン『騎兵隊』(1959年)を四半世紀ぶりに。南北戦争の転回点となった「ビックスバーグの包囲戦」を描いたものだが、ジョン・ウェイン率いる北軍が南部で行う焼き打ちは、どうしても蛮行に見えてしまう。情報漏洩を避けるために南部の女性・コンスタンス・タワーズは、ウエインに対して反抗的な態度だが、次第に二人はお互いに恋情を抱く。子供の頃、この展開に抵抗があったが、改めて観ても、印象は変わらなかった。ウイリアム・ホールデンは軍医で、ジョン・ウエインとは反目しているが、やがて・・・ 流石にジョン・フォード演出は情感があり、ディティールは良いのだけど・・・

 中2の時「月曜ロードショー」で観たときに感じたこと。58歳で観直して感じたこと。“ジョン・フォード監督とジョン・ウェインのコンビによる『騎兵隊』(1959年・ユナイト・ジョン・フォード)をそれこそ四半世紀ぶりに観た。僕らの世代では、小学四年の時にN E T「日曜洋画劇場」で観たのが最初。ジョン・ウェイン(納谷悟朗)、ウイリアム・ホールデン(近藤洋介)の吹き替え版。その時は、父親と一緒に観ていたので、勧善懲悪の西部劇だと思っていたが、中学二年の夏、T B S「月曜ロードショー」で観直した時に「これは?」とかなりの違和感を感じた。この時の吹き替えは、ジョン・ウェイン(小林昭二)、ウイリアム・ホールデン(近藤洋介)だった。”

10月24日(日)『続・忍びの者』(1963年8月10日・大映京都)・『悪名一番』(1963年12月28日・大映京都・田中徳三)

 昭和15年、笠置シヅ子さんと服部良一さんのジャズ時代が始まるが…戦争によってジャズは禁止される。この「ラッパと娘」のシャウトを聴くたびに、様々な想いが去来する。そこでCD「ブギウギ伝説」を作りました。

戦前の、まだのんびりとした時代の空気が、岸井明さんの歌声に満ちています。「世紀の楽団 唄ふ映画スタア 岸井明」(ビクター)サブスクでは読めない48ページのブックレットはCDで!

 阿佐ヶ谷ネオ書房「佐藤利明の娯楽映画研究所SP 岸井明と笠置シヅ子 ノヴェルテイソングの昭和史」。戦前、戦後、時代を作った二人を大特集! 楽しかったです!阿佐ヶ谷ネオ書房「佐藤利明の娯楽映画研究所SP 岸井明と笠置シヅ子 ノヴェルテイソングの昭和史」満員御礼。2時間15分、007映画の平均尺のイベント。戦前の岸井明さん、戦後の笠置シヅ子さんの超絶パフォーマンスをご開陳! 参加者の皆様、有難うございました!次回は11月28日(日)です!

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 今宵のカツライス「ライス」は、市川雷蔵のシリーズ第二作、村山知義原作、山本薩夫監督『続・忍びの者』(1963年8月10日・大映京都)を娯楽映画研究所シアターのスクリーンで堪能! この映画が封切られたのは、個人的なことで恐縮だが、ぼくが生まれた日の翌日。つまり製作されて58年もの歳月が経っているのだ。

 もう一本は、カツライスの「カツ」。勝新太郎さん&田宮二郎さんのシリーズ第八作『悪名一番』(1963年・田中徳三)。シリーズ初の東京篇。悪役に安部徹さんと名和宏さんだから、やることなすこと悪いのなんの。八尾の朝吉と、昔気質の江戸っ子親分・伊井友三郎さんの対比がいい。なんと、第6作のニセ朝吉&ニセ清次、芦屋雁之助さん&芦屋小雁さんが再登場。ヒロインは、クールビューティ・江波杏子さん。構成がストレートで、悪党退治の爽快さも健在で、笑いとアクションの塩梅が絶妙。

 前作『悪名波止場』(1963年・9月7日・森一生)で広島・宇品港の鬼瓦組を一網打尽にした悪名コンビ。今回は悪徳金融会社から出資金が回収できずに、年の瀬を迎えられなくなった善良な大阪の人たちのために、朝吉が人肌脱いで、清次と共に東京へ。出資金を回収に向かう。第1作以来、関西、四国を舞台にしてきたシリーズだが、悪名コンビが東京へ。そのカルチャーギャップを笑いにして、東京で江戸時代から続くやくざ一家と反目しながら、悪徳新興ヤクザの悪巧みを粉砕する。





よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。