-Event report①-【第1回】2月24日開催トーク&ワークショップイベント「瀬戸内経済圏における新しい広島の共創デザイン」
都市づくりとデザインをテーマに、幅広い分野で活躍されるゲストと広島で地域に根差し活躍するローカルプレイヤーズとを交えて3回にわたって開催する「都市toデザイン」のトーク&ワークショップイベント。その第1回目が2月24日(金)、叡啓大学15階 コミュニティラウンジにて開催されました。
【テーマ】
「瀬戸内経済圏における新しい広島の共創デザイン」
【メインゲスト】
渡邊雄介氏/station株式会社 CEO
早田吉伸氏/叡啓大学(兼)県立広島大学HBMS 教授
【サブゲスト】広島ローカルプレイヤーズ
田中 健三 氏/谷口 千春 氏/平尾 順平 氏/ヤスムラ ミチヨシ 氏/和田 徳之 氏(50音順)
【司会・進行】
諏訪 正浩/広島電鉄(株)地域共創本部 地域交流事業課 課長・広島都心会議 事務局次長
広島のビジョンを本音で語り合う場にしたい
40名以上の参加者が集まり熱気に包まれる中、はじめにあいさつに立ったのは事務局長の諏訪正浩氏。「広島を美しいデザインに溢れる都市にするために、デザインとは何かということをみなさんとともに考え、共有したい」と呼びかけ、広島都心会議から「都市toデザイン」というプロジェクトが誕生した経緯について説明しました。
続いて企画・クリエイティブディレクターの谷口千春氏が、「都市toデザイン」のロゴデザインに込められたメンバーの想いや願いについて語り、「多様な文脈・立場を持つ皆さんと、広島の未来について本音で語り合えるきっかけの場として、またビジョンを具現・実行に導くつながりを作るコミュニティの場をつくっていきたい」と意欲を語りました。
第1部 広島の課題とデザインの本質を共有する
第1部のトークは「都市toデザイン」の発起人の一人でもある早田氏がトップバッターとして登壇しました。
メインゲストトーク①「問題提起」
「瀬戸内経済圏における新しい広島の共創デザイン」
早田 吉伸氏(叡啓大学(兼)県立広島大学HBMS教授)
デザインを考える
早田氏は政府、NPO、大学、企業と、様々な環境や立場で社会の課題解決に取り組み、早くから「ソーシャルシステムデザイン」に注目してきました。
その背景には1995年の阪神・淡路大震災以降に起きた、デザインの主体者が企業から市民へ移るパラダイムシフト、そしてソーシャル×デザインの意識の高まりがあったといいます。
そして「⼈の流れ、政治・経済・⽂化という多層なレイヤーを持つ「都市」をデザインするということは、まさにソーシャルシステムデザインの典型的なケース」だと語りました。
都市を考える
デザインの対象である「都市」の現状については、「世界中でメガシティ化が加速している」と解説。日本においても3大都市の人口集中がさらに進み、札幌・仙台・福岡という地方中枢都市は、周辺からの流入人口を集めるまちづくりを推進しているといいます。
一方で広島は、「流入人口が少なく、自己完結型という特殊な立ち位置にあり、実質経済成長率は全都道府県中44位(2018年)とかなり低い」と指摘しました。
その上で、社会が劇的に変化するパラダイムシフトとコモディティ化が進む今、求められているのは『新たな価値の創造』であるとしました。
広島の“未来”を考える
世界中で起きているメガシティ化、そしてさまざまなパラダイムシフトとコモディティ化の流れの中で、広島の新たな価値について考える際に軸となるであろう文脈は2つあるといいます。
早田氏は3回にわたって開催される今回のイベントにおいて、この2つの文脈を1つずつ検証していきたいとしました。
そして都市づくりに欠かせない方々が集まったこの場を「瀬戸内の中心としての広島という文脈をどのように活かし、どんなまちづくりができるか」について継続的に考えていく場所にしたいと締めくくり、渡邊氏にバトンを渡しました。
メインゲストトーク②
「前例のない課題をデザインで解決するために」
渡邊 雄介氏(station株式会社CEO)
stationが考える「デザイン」の本質と可能性
早田氏からバトンを受け取った渡邊氏は、まず自身がCEOを務めるstationについて「CEOとDEO(デザインするCEO)の共同代表制」をとりながらデザイン室を会社の中枢に据えるなど、デザインの価値にいち早く注目してきた会社であると紹介。
開発途上地域がデザインの力によって課題解決した事例も交えながら、stationが日本の社会課題の解決に「デザイン」の力でどのように取り組もうとしているかについて語りました。
自律分散型の場づくりがなぜ必要か
まず渡邊氏が興味深いデータとして紹介したのが、京都大学がAIを用いて行った「2050年、日本は持続可能か?」というシミュレーション結果。これを見る限り、日本はこのまま都市一極集中を続けるより、地方分散シナリオへ分岐する方が持続可能な社会に近づくことができると分析。
そもそも人が都市に集中するのは選択肢が多いことが理由であり、地方にも”選択肢を増やす”ことで地方分散シナリオの実現も可能になる。市場や労働力が縮小する人口減少時代においては、それを非中央集権的、つまり利用者や住民主体で行うことが重要だとしました。
そして、それこそがstationが取り組んでいる「自律分散型の場づくりをデザインする」ことであり、この仕組みが拡大・拡張していけば、さまざまな社会課題の解決にクリティカルなアプローチができるだろうと語りました。
自律分散型の場づくりの5段階モデル
続いて、実際にstationがデザインパートナーとして関わっている事例を紹介しながら、stationが提供している自律分散型の場づくりの5段階モデルが紹介されました。
自律分散型の場づくりに必要なプロセスは、UXデザインの5段階モデルのそれと非常に似ており、同様のステップを踏むことで場やコミュニティを自律分散化した状態に近づけることができるといいます。
自律分散型場づくりにおけるWeb3技術の可能性
またNFTやDAOといったWeb3.0技術を上手に活用すれば、現状、場の価値向上はオーナーの課題となっているところを、全員で場の資産を共有することができる可能性があるとし、自律分散型の場づくりを考えるうえで有効な技術になるだろうという可能性についても示唆しました。
課題先進国からデザイン先進国へ
最後に、日本は「課題先進国」といわれているが、それは世界の最前線にいるということではなく、課題が山積している国であるということ。
しかしそれをチャンスと捉え、課題解決の実績をしっかり積み上げていけば、日本は「デザイン先進国」というブランディングができるはずだとし、そういうことをまず広島の皆さんと一緒にやっていきたいとして、講演を締めくくりました。
第2部 「広島」の解像度を上げるワークショップ
第2部では参加者全員でブレスト型ワークショップを開催。4〜5人のグループをつくり「どうすれば広島がウェルビーイングで多様性に満ちあふれた楽しい街になるか」を意識しながら、以下の3点について意見やアイデアをブレストしました。
ローカルプレイヤーズもワークショップに参加
5名のローカルプレイヤーズもファシリテーターとしてこのワークショップに参加。自己紹介を兼ねて3つの質問について想いを語りました。
共感と新たな発見に盛り上がったブレストタイム
広島に対するさまざまな想いが溢れ、終了時間をオーバーするほど終始盛り上がったブレストタイム。終了後は各グループの代表が集まった意見を発表しました。
発表された内容
広島の新しい価値をみんなで一緒につくっていく
すべてのプログラムを終え、最後にマイクを手にした早田氏は、「これほど同じ目線、同じ価値観で語れる人が集まった場に参加できたことがとてもあハッピーだし嬉しい」と興奮気味に話しながら「ここを発散する場にするのではなく、継続的に積み重ねていく場にしながら、広島を本当に変えていくんだという大きな流れを皆さんと一緒に作っていきたい」と挨拶して、会を締め括りました。
次回は3月7日に開催予定です。
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