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強みにフォーカスして人材開発するとはどういうことか?

先日、あるマネジャーの方から次のような質問をいただきました。

弱みが足かせになっているメンバーに対してのストレングスファインダーの使い方に悩んでいます。

そのメンバーは、相手との関係性を壊さないように意識し過ぎてあまり踏み込めず、表層的な話だけで終始してしまう傾向があります。そのため、相手の要望を明らかにして整理することもできず、ただ長いだけで何を伝えたいのか分からないコミュニケーションになりがちです。

このメンバーのTop5は、親密性、調和性、共感性、ポジティブ、回復志向で人間関係構築力の領域に偏っています。この目の前の課題にこれらの強みをどう使えばいいのか、私自身もうまくアドバイスできずにいます。

※この内容はnote用に一部改変しています

先日この会社でマネジャー向けにストレングスファインダーの活用ワークショップを実施し、その内容をもとに現場でメンバーマネジメントを実践してもらっています。この質問はそのフォローアップ会でいただいたものでした。

このnoteを読んでいただいている皆さんはどう思いますか?

ストレングスファインダーは「強みを開発しよう」「弱みではなく強みにフォーカスしよう」と言われているものの、

・強みにフォーカスしても、目の前の問題が解消されるイメージが持てない
・目の前の問題を解決できそうな強みを本人が持っていない
・メンバーの成長には、弱みを改善した方が効果的ではないのか

そんな風に感じてしまうマネジャーもいらっしゃいます。今回の質問もその背景にはこういった思いが潜んでいたのではないでしょうか。

このnoteは上記の具体的な質問を題材にして、「強みにフォーカスをして人材開発するとはどういうことか?」について私の見解を記したいと思います。

今回の質問に対する答えとして、大きく3つのポイントがあるように思います。それを順を追って説明していきます。


①強みフォーカスは弱みを無視することではない。

Gallup社では “利き手を活かして対応する”と表現していますが、そもそも強みを活かすことに専念し、弱点は適切にマネージしましょうと言っています。なので、問題となっていることを放置しても構わないということではありません。

その問題を強み(ここでは上位資質だとする)を使って、どうにか解決できないかを考えてみるということです。直接的ではないにしろ活かせるものがないかを考えてみるのです。今回の例で言うなら、「話が分かりにくく、相手に伝わらない」のが問題だとすると、調和性や共感性は活かせないでしょうか?

調和性は意見を一致させ協業を生み出す力とも言えますので、自分と相手の共同作業と捉えてみたり、共感性は相手の気持ちを拾ったり、それを代弁したりすることは自然にやれる可能性があるので、自分の伝えたいことではなく、相手の気持ちを言葉にしてみることから始めるとコミュニケーションが変わっていくかもしれません。

これはあくまで資質レベルの解釈で書いていますが、才能レベルで紐解いていくとよりこの方にフィットした資質の使い方も見えてくると思います。それで上手くいくかいかないかは現時点では分かりませんが、それにトライしてみる価値は十分あるように思います。

ちなみに少し話は逸れますが、それこそ若いうちは強みに全振りしても構わない時期もあるかもしれませんが、あるタイミングで弱みに向き合わざるを得ないようになるはずです。

それは、強みを圧倒的に尖らせようとする過程で弱みが足を引っ張ることが出てくるからです。もちろん、弱みを強み化することは難易度が相当高いでしょうし、非効率だとも言えますが、気にならなくなる程度までは底上げする(≒凹みを無くす)必要は出てくると思います。

また別の観点からは、マネジメントに挑戦していく段階になると同じく弱みに向き合わざるを得なくなります。それはメンバーには色々なタイプがいるので、そのメンバーを活かそうとすると自分の強み一本鎗だと厳しくなる瞬間があるからです。

これも上記同様、全てを自分の強みレベルに引き上げるなどはできませんが、弱み・苦手というものにも向き合い、一定の対応はできるレベルまでは持っていきたいものです。

強みという利き手をうまく使って、弱みのカバーをしていこう

②強みは才能起因とビジネススキル起因のものがある

ストレングスファインダーでいう強みは、才能に投資をして開発したものを指しています。そして才能というのは、「生産的に適用できる思考、感情、行動の自然な繰り返しパターン 」と定義されていますので、ある意味で当たり前に発揮しているもの、苦労することなく習得できたものと言えるかと思います。「自分らしさの解放」とも言えるかもしれません。

ただ、強みと言われるものはそれだけではないですよね。仕事をする中で自己研鑽も含めて鍛えてきたもの、つまりはビジネス経験を通じて「広げてきたCan(スキル)」の中にもあると思います。またスタンスやマインドといわれるものにも強みの源泉はあるはずです。

その観点から考えてみると、今回の例はロジカルシンキング(構造化、水準思考、Must/Wantなど)のようなビジネス基礎力が足りてない可能性があるということです。この場合は資質云々ではなく、ビジネススキルの一つであるロジカルシンキングを鍛えて習得する必要があります。これらを切り分けて捉えないと、何でもかんでも資質を鍛えることで解決しようとしておかしな話になってくるように思います。

これも今回の例を「コミュニケーションスキルの問題」であると捉え、もし対象者の上位資質にコミュニケーションなどがあったとすれば、場合によってはその資質を鍛えることで自然と自分らしく問題を乗り越える可能性ももちろんあります。

そういう意味では、まずは問題を特定し、適切な課題を設定すること。そしてその課題に対して資質アプローチでよいのか、ビジネススキル開発が必要なのか、そもそもマインドセットを変える必要があるのか、などを検討していくのがよいと考えます。

ちなみに、ビジネススキルも鍛えようとしたものが全てが強みになるとは思いませんが、これは①で言及したとおり、強みにならないまでも「凹みを無くす」ぐらいまでは鍛えることはできるはずなので、苦手意識があることや興味関心が低いものはそのレベルを目指せばよいと思います。

強みにも種類がある。そしてそれを開発するアプローチも異なる。

③強みをHowと捉えれば、一石二鳥を狙える(ビジネススキル開発と強み開発)

②の続きとも言えるかもしれませんが、仮に設定した課題に対して今回はビジネススキルの開発が必要だと決めた場合にも、ストレングスファインダー的な強み(上位資質)は活かすことができます。というよりも、それを活かすことができれば、問題を解消するためのビジネススキル開発と自分本来の強みの開発の両方を実現することができるかもれません。

再び今回の例で考えると、仮に構造化・水準思考などのロジカルシンキングを鍛える必要があると考えたときに、どのように取り組めば(≒どの資質を活かせば)、自分らしくストレスなく身につけることができるのかを考えてアクションプランを立てるということです。

そうすれば、ロジカルシンキングを習得するプロセスで資質を使うことになります。資質は使えば使うほど鍛えられ、どんどん強み化していきますし、自分らしくアプローチできているとすれば、ロジカルシンキングの習得もスムーズに進むはずです。

今回のAさんは親密性、調和性、共感性、ポジティブ、回復志向を持っているとのことでした。あくまで例えばですが…

親密性を活かすとすれば、仲間とともに目標達成を目指せる資質とも言えますので、親しい人に声をかけ、それぞれの苦手を克服する勉強会などの体裁で仲間と叱咤激励しながら進めていくのもよいかもしれません。

ポジティブを生かすとすれば、克服すべき問題そのもの(=ロジカルシンキングを習得すること)に意識を向けるのではなく、克服したその先に何が実現できそうかの前向きなイメージを膨らませることで自分を奮い立たせることができるかもしれません。

これはあくまで一例ではありますが、ストレングスファインダーで明らかになる資質は「何が得意なのか」とだけ捉えると活用可能性は限定的になってしまいますが、「どのようにアプローチするのが自分らしいか。自分を活かせるのか」を表していると捉えると、その活用の幅は大きく広がると思います。

自分を信じて、自分らしく取り組むことを意識すれば一石二鳥

何か問題に直面しているとき、思ったようにうまく進んでいないとき、自分の上位資質をどのように活用するとよいかを考えると、資質(才能)起因の強みは開発されていくはずです。


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