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都市部事業系リーシングに特化した不動産会社が目指す次のステージ

2月25日(木) に第2回ブランディング事例共有会を開催しました。1人目の発表者を紹介します。株式会社バウンディングパルス代表取締役 海野 康弘さんです。

海野さんは、人材コンサルティング会社にて大手~中小企業の人材育成、教育研修の企画提案の仕事で延べ300社以上に関わり、営業責任者として成果と実績を挙げながらチームマネジメントの経験を積んできました。その後、通販に特化した広告代理店、そして、戦略系コンサルティング会社にて事業戦略~実行支援、人材マネジメント、組織の活性化に至る一連の問題解決に従事してきました。
コンサルティングと広告の経験を活かし、ブランディング事業を核として
株式会社バウンディングパルスを設立。中小企業の経営者の懐刀となり、企業理念の言語化~浸透・展開、新規事業のブランド開発やブランド・マネージャーの育成を中心に活動しています。

ブランド・マネージャー認定協会のマスタートレーナーででもあります。

ということで、海野さんの事例発表の内容を簡単ではありますが、こちらでご紹介します。

海野さん支援先の株式会社リーシングサポートは、2008年に現代表取締役社長の吉住社長によって設立された会社。創業以来、順調に業績を伸ばしてきたものの、社長・常務・専務の創業期から会社を支えてきた3人の力量に頼った経営になりがちであり、今後、企業として更に成長を目指していくためには、企業全体としての力量の底上げが課題となっていた。

吉住社長は、企業として次のステージを目指すにあたり、コンサルタントである海野氏の提案のもと、ブランディングとチーム作りを同時に行うことができる取り組み・活動である、ブランディングとチームビルディングを実施することとし、企業としてのチームブランディング(※)を図っていくことを決めた。

※チームブランディングの定義
ブランド構築に係る活動を、プロジェクトメンバー各々が担うことで、
信頼関係の醸成と経営目標の達成を目指す、小集団でのアイデンティティ構築手法である


株式会社リーシングサポートの主要事業部門は、下記の3つである。
①リーシング部門:店舗・テナントのマッチング事業
②オーナーサポート部門:ビルの運営管理を代行することで、建物の付加価値を高める事業
③事業部門:事業用ビルの付加価値を高めて、運用・売却する事業

また、戦略としては下記2点の特徴がある。
①絞っている
・商圏を福岡都心部に絞っている(福岡市の特定地域のみを対象とする)
・顧客を商業店舗に絞っている(個人向けは対象としない)

②社外パートナーとの提携
・自社で全てを賄うのではなく、協力企業を積極活用
・協力企業は幅広く提携

このような状況下にある企業を次のステージへ導くために、今回のチームブランディングを目指すこととしたのである。

ブランディングの背景と狙い

ブランディングを開始した背景は、次の2つがあった。

【1つ目】
住友商事など大手企業との取引も増えてきており、会社の格を上げたい。
格を上げる=優良な顧客を増やしたい。
→対外的なイメージを変える。いい意味で敷居を上げる。

【2つ目】
社長、専務、常務のスーパープレイヤーたちが稼ぎ頭となり、
業績を築き上げてきたが、さらに上を目指すには限界がある。
→属人的になっていることを組織として可視化 〜 仕組み化する。
(今後は社員が主体的に動けるように)人材育成、社員教育の機会を。

この2点を踏まえて検討したことで、今回はチームビルディングが最適であると判断した次第である。

ブランディングの道筋となる3つのフェーズ

1 "事業”をブランドとして価値・魅力を再定義する。
2 "会社”のブランドを理念として再言語化する。
3 ブランドをストーリーとして表現、実践していく。

この3つのフェーズを実現するための、今回の提案の全体像としては下記2点である。

1. 事業のブランディング
⇒リーシングとオーナーサポート事業を新規顧客層の拡大や優位性を築くために再定義する

2. 理念の再言語化
⇒会社全体として今後、どこに向かっていくか、何のために事業をするか思いを整理し、ストーリーとして伝える。

これらの一連のプロジェクトを実行するにあたり、作業工程としての全体スケジュールを作成し、事業ブランディングとコーポレートブランディングを2フェーズに分けて実行していくこととした。期間想定としては約8か月程度である。

プロジェクトの立ち上げ

企業としての将来のビジョン・ミッション・バリューの再構築として立ち上げるプロジェクトメンバーは、プロジェクトオーナーである吉住社長に加えて、リーシング部、オーナーサポート部から各1名の若手女性が選ばれた。

社長以外のメンバーの選定理由は、入社経験が浅く既存の企業文化に染まり切っていないことで、違う角度からの視点で新しい発想が生まれることと、若手であるがゆえの行動力や未来を構想する思考の柔軟性を期待しての抜擢である。

また、これに伴走するコンサルタントとして、下記2名が加わった。
・バウンディングパルス 海野(ブランド・マネージャー認定協会マスタートレーナー)
・西鉄エージェンシー 鈴木氏(ブランド・マネージャー認定協会1級資格保持者)


ブランド構築のステップ
今回のリーシングサポートのプロジェクトにおいて、念頭においたのは、主にブランド・アイデンティティについてである。

ブランド構築のステップとして、下記についての討議を行った。

1.環境分析による市場機会(事業仮説)の発見
・3C分析
・クロスSWOT分析による方向性の選定
・事業仮説の設定
2.セグメンテーション(S)
3.ターゲティング(T)
4.ポジショニング(P)
5.ブランド・アイデンティティ
6.具体化(4P・4C)
7.刺激の設計(ブランド体験)
8.目標設定

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1.環境分析による市場機会(事業仮説)の発見
環境分析として、プロジェクトメンバーによって下記について討議を行った。

3C分析:環境分析による市場機会の発見(リーシング部門)
リーシング部門について、市場機会の仮説として討議された結果、下記のようなものが発見され、設定された。
「天神の“リアルな今”を知り、きめ細やかな交渉力で最適を素早く提案する、商業リーシング」

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3C分析:環境分析による市場機会の発見(オーナーサポート部門)
オーナーサポート部門について、市場機会の仮説として討議された結果、下記のようなものが発見され、設定された。
「天神のリーシング力と売買ノウハウを活かした、きめ細やかな管理資産の価値向上」

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さらに、SWOT分析を行い、クロスSWOTをそれぞれの部門で作成したが、こちらについては吉住社長にも自ら作成してもらい、プロジェクトメンバーとの認識比較を行った。この結果、吉住社長とプロジェクトメンバーの現状認識については概ね差異がないことが確認された。

事業仮説の設定
全社的な強みを下記として取り上げ、それをもとに各部門の事業仮説を設定した。
•3本柱(テナント仲介・ビル管理・売買 商業ビル開発)
•福岡市天神エリア特化
•第二種金融商品取引業免許がある(会社として)
•親しみやすさ

その結果、各部門において今回のブランディングを機に強化が必要な項目が、下記のように浮き彫りとなった。

<リーシング部門の要強化項目>
・調査手法の確立
・大手に対応できるデータ(見せ方、まとめ方)
・データを活用した提案力アップ

<オーナーサポート部門の要強化項目>
・BM、PM に関するレベルアップ(資格や経験値)
・商品企画から売却まで、ワンストップで考えられる、スタッフのレベルアップ(底上げ)

ここまでの活動によって得られた結論は、下記の通りである。
「不動産の観点からリーシングを通じてクライアントの商いをプロデュースする」

3. ターゲティング(T)
リーシング部、オーナーサポート部ともにペルソナ設定を行い、顧客のターゲティングを行うこととした。特にオーナーサポート部については実際に取引のあるアセットマネージャーに、日頃の業務概要をヒアリングすることで、理解が深まるようにした。

5. ブランド・アイデンティティ
ターゲティングにて設定したペルソナを基に、「BRANDIG = MEANING」の作業へ突入。
この結果、各部門のブランド・アイデンティティが下記のように定められた。

リーシング部
(現在)店舗・テナント賃貸仲介
⇒地域の生の情報と、出店ブランドの理解から生まれる、売れる店舗プロデュース。

オーナーサポート部
(現在)ビルの運営管理代行
⇒現地の目となり、多角的な視点で資産価値を向上させるパートナー。

7. 刺激の設計 (ブランド体験)
これまでの内容を踏まえ、ブランド・アイデンティティの言葉を分解し、ワードごとに具体的にできること、やるべきことを洗い出して、ブランド体験の設計に落とし込んだ。そして、それぞれの部門で、ブランド体験としての刺激の設計をフロー図化する作業を進展させていった。

リーシング部は問題なく完了したが、オーナーサポート部については討議の結果、ペルソナを再度見直し、再設計することが必要となった。

その結果、オーナーサポート部のブランド・アイデンティティは、下記のように改められた。
求めるのは、入り口から出口まで。土地を買って商業施設を開発して最終的に売却までできるパートナー

このようなステップの揺り戻しを体験することにより、プロジェクトメンバーにおいても新たな発見が生まれることとなった。

ここまでのプロジェクトを振り返って

会社の主軸となるリーシング部、オーナーサポート部という2つの部門について、チームブランディングに挑んできた訳だが、今回は社歴の浅い女性ディレクター2名が取り組むことで、従来にない思考のプロセスを学習して体験や経験を増やし、企業の未来だけでなく、社員それぞれのキャリア形成にも役立っていると感じている。

今後、この取り組みが若手からベテラン社員に広がり、それぞれの社員の意識が変わることで企業の成長に繋がるという意識転換が図れることが理想である。


海野さん。まだ過程ではありますが、実録チームブランディングとしての
素晴らしい事例発表をありがとうございました。今後の成果が楽しみです。

※この内容は、第2回ブランディング事例共有会の発表の一部をまとめたものです。
ブランディング事例共有会では、チャレンジし、試行錯誤し、奮闘している実践事例の発表より、このプロセスから受け取る気づきやアイデアはもとより、元気と勇気をもらえます。

次回は、4月22日(木) 16時~ に開催ですので、お知り合いの方をお誘い合わせの上、ご参加ください。※参加費無料

■第3回 ブランディング事例共有会 ※参加費無料
https://form.k3r.jp/brand_manager/seminar03

本編終了後には、当日の発表事例を振り返り、発表者を囲み学びを深めるディスカッションとして、オンライン勉強会を1時間ほど予定しています。
こちらも、ぜひ、ご参加ください。お目にかかれれば、うれしいです!



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