ビジネスマンに勧める資産形成(株式投資)⑰~キャリア戦略に資産形成が有効な理由~

数カ月間にわたりお付き合い頂きました講演内容のご紹介は今回で終わりとさせて頂きます。

(↑は当日のPPTスライド)

投資実績やファイナンス理論から科学的に考察すると、企業年金や退職金というのは意思決定において殆ど考慮する必要がないことが分かりました。しかしこのうち、ファイナンス理論は誰にとっても一律に平等なツールですが、投資実績はそうはいきません。将来のリターンを現在価値に割り引くための「割引率」というのは、平均して高いパフォーマンスを出す投資家は高い割引率を用いますが(割引率とはその投資家の平均リターンであるため)、未だ投資実績に乏しく高いリターンを享受していない投資家の割引率は小さいことが通常です。

そうすると、年金や退職金を現在価値に割り引いても数字はあまり小さくならず、例えば自分のケースで5,250万円を割引率3%で現在価値に置き換えると、約3,800万円となり、退職の意思決定にそれなりに大きなインパクトをもたらすことになります。

この様に、退職や転職の意思決定において、勤めている会社から得られるはずの将来リターン(辞めた場合の機会損失)の影響を引き下げるには、20代後半や30代前半といった若いうちから投資を始め、投資実績を少しずつ高めていくことが重要となるわけです。

いわんや、資産形成に取組まない人の割引率は市中金利になってしまうので、勤めている会社から支給されるであろう将来のリターンが、殆どそのままの数字で意思決定に影響を及ぼすことになります(市中金利は非常に低いため、将来価値と現在価値が殆ど変わらない)。

こうなると、転職しようとするインセンティブがなかなか高まりません。

話を戻しますと、自分の場合は大手商社から得られる将来の金銭的報酬(機会損失)は全く考慮せず、「楽しいことをやる」「オモシロいことをする」「得意分野の経験の幅を広げる」といった興味関心だけで殆ど次のキャリアを選択しました。

大手商社ではリスク管理やM&Aなど狭い領域をひたすら深堀するスタイルでしたが、今はベンチャーのCFOとして、IPO準備・資本政策・資金調達・IR・株主総会・法務対応など幅広く手掛けており、ビジネスマンとしての戦闘力は比べようもないくらいレベルアップした実感があります。

しかもこれは商社にいては間違いなく得られなかった充実感であり、セカンドキャリアに進んだ決断は今のところ人生でベストの英断の1つであったと確信しています。

この様に、セカンドキャリアやサードキャリアで大きく羽ばたくビジネスマンを日本でもっと増やしていく為に、これからも微力ながら若手・中堅ビジネスマンを対象に啓蒙していきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?