見出し画像

PとDだけで会社を回す「ご破算経営者」

たくさんの人々が参加する会社は、計画によって動かされる。
これが計画統制と呼ばれる。
 
計画では、あらかじめ、目標、目標を達成するためのやり方、人々の役割や仕事の分担が決められる。
人々は、計画によって、自分が、いつ、何を、どのようにやればよいか知ることがででき、自律的に行動する。
 
進歩する優れた会社では、計画統制をPDCAで回す。
すなわち、「計画(P)→実行(D)→チェック(C)→アクション(A)」の一連のマネジメント・サイクルによって、会社を動かしている。
 
これに対して、進歩のない会社では、計画を立てて実行はするものの、チェックとアクションが抜けてしまう。
 
チェックとは計画通りに実行できたかに対する「評価」であり、また、アクションはアクトと言われることもあるが、計画と実行のずれを修正するための「改善」である。
 
経営者が、計画を達成しようとする強い意志があるから、PDCAサイクルの運用では、自ずと真剣なCとAの活動が行われることになる。
 
例えば、Cの活動の結果、計画目標が高すぎるのであれば次のサイクルでは低めの目標が設定されることになるし、また、計画目標達成のための経営資源が不足していれば次のサイクルではより豊富な経営資源を投入するというような、有効性の高いAの活動が実施されることになる。
 
最近の日本の大会社では、CとAが抜け落ちた「ご破算経営者」が多い。
「ご破算」とはソロバンをはじくときに、すべてのソロバン球を初期値のゼロに戻すことである。
 
「ご破算経営者」とは、現実を直視できず、また、有効な改善策を見つけることができる能力が不足しているため、真剣な計画統制を行えない経営者のことである。
 
典型的な「ご破算経営者」は、希望的観測に基づく大甘な計画目標を設定する。
実行によって計画が達成されなくても、おざなりな予実の分析はする。
しかし、予実の分析で満足し、何ら実効性のある手立てをとることなく、それで一件落着とする。
そして、また、来年の大甘な計画を設定するということを、延々と繰り返している。
こんなことをしていても、会社に進歩はない。
 
 
昨今、大企業の経営者には、東京証券取引所から「資本コストや株価を意識した経営」が要請されている。
しかし、多くの会社が、ROEやROICを高めるためには実効性のない計画を発表して、お茶を濁そうとしている。
 
経営者は在任期間中、「ご破算経営」でしばらくお茶をにごしてから、次の経営者に会社を引き渡し、涼しい顔をしている。
 
東京証券取引所が望んでいるのは、「ご破算経営」の経営者ではなく、実効性のあるPDCAを回すことができる経営者である。
 
「ご破算経営」しかできないような経営者は、「即刻経営者の座から退出せよ」と言われてしまう。
 
「ご破算経営者」となるのは、社内には有効性の高い改善策が思い浮かばないからである。
 
社内に知識や知恵がないのなら、外から持ってくるしかない。
 
社内のスタッフは反対するだろうが、社内のだれもが経験したことのない変革の時代には、経営者は外からの知識や知恵の吸収にもっと貪欲でなければならない。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA072IG0X00C24A5000000/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?