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「黄色い家」を読んで

「黄色い家」
著者:川上未映子
オーディブル版を読んでの感想文です。

2024年本屋大賞ノミネート作品の中から選んで読んでいます。
久しぶりの長編小説を読み始めると止まらなくなりました。貧困から導かれる犯罪だけではなく、そこに至るまでのさまざまな伏線があり、引き込まれる内容となっています。物語で描かれている少女たちの会話、生活や犯罪の手法もリアリティが感じられました。


物語の展開から感じたこと

「幸せな生活」とはどんなことだろうと考えさせられた。生まれた環境があたえる影響は計り知れないとも感じた。思春期には、自分の居場所がないと思ってしまう少女たちの心情に、心がつらくなる場面がありました。

物語は主人公の「花」が、中学生の時知り合った「黄美子」との生活が描かれている。その「黄美子」が裁判にかけられているネット記事を読み、20年前の自らの黒歴史を振り返っていくところから始まる。

主人公の「伊藤花」が過ごした生活環境は、育ち盛りの中学生にとっては劣悪な状態であったと思う。そこに突然現れた「黄美子」が、主人公の心まで満たしてくれる存在だったことは確かだ。

主人公の「花」は、「生きていくため」に母親ではなく「黄美子」との生活を始める。生活を維持していくための「お金」という必要不可欠な存在に翻弄される。ここにも幼いころの体験が、影響を受けているように感じた。

物語の中盤から、主人公の「花」と「黄美子」が始めたスナック「れもん」での生活が始まる。そこで出会った「蘭」と「桃子」が、初めて友達と呼べる存在となった。

彼女たちには、学校でよくある気の合う友達同士の光景が随所に描かれている。ファーストフードでたわいもない会話をしたり、買い物をしたり「普通に見かける高校生」と何ら変わりない。しかし、その裏では居場所のない者同士が、必死で生きている姿に心が痛みました。

生きていく上での「知らない」ことの怖さ

誰もが「幸せな生活」を維持していきたいもの。そのためには、生きていく知恵が必要だと思った。物語の後半では、彼女たちが犯罪に手を染めていく姿が描かれている。

主人公の「花」は風水にちなんで作った「黄色コーナー」を大切にし、「黄色」にこだわっている。自分の決めたルールや決め事に執着しているところを強く感じる。その結果、「蘭」や「花子」との友人関係が崩れてしまう。

知らないうちに翻弄され、搾取されていく。知らないうちに騙されて「生きていくために必要なもの」までも失くしてしまうことになる。

物語の終盤では、花も蘭も桃子も「犯罪をしていること」がわかっている。しかし、お金に翻弄されしまった彼女たちは、やめることができない。感覚が麻痺してしまっている。

自分たちではどうにもできないと思っている。そこに至るまでの「知らない」ことの怖さを感じた。

まとめ

「生きていくことは難しいもの」。しかし、「生きていこうという夢」を描ければ必死になれる。必死さに加えて「生きていくための知恵」を備えていけば生き抜くことができると思った。

生まれた環境によって、人のスタートラインの状況は変わるかもしれない。しかし、その人の「幸せな生活」は、その人の「生きていこうとする心」「生きるための知恵」によって変わるのではないだろうかと思った。


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