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【英国LLM留学】英国法弁護士への道#6 │SQE1の勉強法

こんにちは。
お読みいただきありがとうございます。

ぼくは、イギリスに留学中の弁護士です。
2023年にロンドンのロースクール(LLM)を修了し、現在は、ロンドンの法律事務所に出向中です。

引き続き、ぼくが英国法弁護士に登録されるまでを振り返っていきます。もしかしたら、聞きなれない略語が出てくるかもしれません。よければ、第1回の分からお読みいただけると分かりやすいかと思います。

前回は、SQE1の申込みの事務手続に関することを書きました。今回は、ぼくのSQE1の勉強法について書きたいと思います。

なお、英国法弁護士で大変なのは、試験勉強ではなく事務手続です。各手続に関する要件等については、できるだけ確実な情報に基づいて話を進めていきますが、最終的には、ご自身で確認頂くようお願いします。


2022年10月:学習開始

4月には教材が届いたものの、渡英の準備やプレセッショナル・コースなどでしばらく放置していたSQE1ですが、受験の申込みを済ませて、ようやく勉強を開始します。ちょうど、ロースクールが始まるタイミングでした。

留学前にスキャンしていた予備校のテキストのフォルダを開き、ELS(English Legal System)の教科書を読み始めます、、、。

学習スケジュールを立てるべきだった

初めに書いておくと、漫然と勉強を始めるのではなく、受験日程から逆算して、いつまでに何をやらないといけないのか、きちんと予定を立ててから進めるべきでした(笑)

ぼくの場合は、勉強を始めた時点で、(完全に自分が悪いのですが)SQE1まで残り16週間ほどしかなく、1日たりとも無駄にできませんでした。皆さまの時間も有限だと思います。もし、留学中に英国法弁護士のPractising Certificateの取得まで済ませたいと思うのであれば、何より効率的な時間の使い方と、無駄のない事務手続の処理が肝心だと思います。

この記事も、ぼくの実際の経験を振り返る形で進めていますが、真似した方がいいかもしれないところと真似すべきでないところがあるはずです。そういった観点から、お読みいただければと思います。

ELSのテキストを読み終えるも、、

受験生からの評判は良くないQLTSchoolのテキストですが、ぼくは割と楽しく読めました。ELSは、コモンローや衡平法の基礎知識であったり、裁判所の組織構造や、Brexit後のEU法の取り扱いなどが対象分野であり、英国法に興味を持った人であれば、勉強するのに苦痛は感じないはずです。

ただ、時間がかかり過ぎました、、。ELSのテキストを読み終えたときには、既に一週間も経っていました。予備校のテキストは全部で19冊あります。このペースで読んでいると、問題演習をするどころか、16週間後のSQE1までにテキストの読破すらできません。

リビジョンノートに切り替える

というわけで、せっかく自炊してPDF化したテキストですが、ELS以外のテキストについては、SQE1の受験までに一度も開けることなく終わりました。

その代わりに、QLTSchoolのポータルサイトからダウンロードできるリビジョンノートなるものを読む方針に切り替えました。これは、テキストの内容を、講義レジュメのような形式でまとめなおした復習資料で、気合を入れれば、1~2日で読み終えられます。

フラッシュテストは不要、ビデオも見なくてもいい

QLTSchoolの教材の話ばかりで恐縮ですが、契約した受験生がアクセスできるポータルサイトには、リビジョンノートの他にも、単元ごとに知識を確認するフラッシュテストや、解説のビデオがアップされています。

ただ、そこまで網羅してやっているといつまでたっても単元が終わらなくなるので、個人的には不要だと考えています。

本番までに解くべき問題

どこかに書いたかもしれませんが、SQEでは、過去問は公開されていません。そのため、頼れるのは、SRAが出している僅かなサンプル問題と、ぼくの場合はQLTSchoolが作成した問題だけです。

SQE1のサンプル問題はこちらです。

QLTSchoolでは、テキストごとのPractice Questionsという練習問題(各100~200問程度。分量は科目ごとに異なる)と、Mock Examという模試が用意されています。まとめると、以下の通りです(*1)。

Practice Questions (FLK 1):1405問
・ 
English Legal System:125問
・ Constitutional and Administration Law
・・ Constitutional Law:100問
・・ Public Order:20問
・・ Judicial Review:25問
・ Contract Law:150問
・ Tort:150問
・ Legal Services
・・ Legal Services:60問
・・ Anti-Money Laundering:35問
・・ Financial Services:50問
・ Human Rights:50問
・ Business Law:200問
・ Tax
・・ Income Tax:50問
・・ Corporation Tax:60問
・・ VAT:60問
・・ Capital Gain Tax:35問
・・ Inheritance Tax(Buisness Proporty Relief):15問
・・ Tax Anti Avoidance:10問
・・ Professional Conducts (FLK1):60問
・ Dispute Resolution:150問
Practice Questions (FLK 1):830問
・ Land Law:150問
・ Property Practice:150問
・ Equity & Trusts:150問
・ Wills and Administrations of Estates:150問
・ Criminal Law:150問
・ Criminal Litigation:150問
・ Solicitor's Account:75問
・ Tax
・・ Property Taxation:20問
・・ Inheritance Tax:75問
・・ Capital Gain Tax (Wills):10問
・ Professional Conducts (FLK2):50問
Mock Test (FLK 1):90問×15回=1350問
Mock Test (FLK 2):90問×15回=1350問

合計で、約5,000問あります。ELSのテキストを読むだけで一週間費やしてしまったぼくは、本番に間に合わせるために、何をいつまでにやるべきか考える必要がありました。

しかし、ぼくは、それをしませんでした。ただ、なんとなく、11月末までにテキストを読み終えて練習問題を1周、残り2か月をひたすら問題演習に費やそうと考えました。本当に、なんとなくそう決めたのです。

2022年11月:終わらないFLK1

当時の勉強記録を振り返ってみると、結局、10月末時点でリビジョンノートの読み込みと練習問題1周を終えたのは、ELS、Constitutional and Administration law、Contract Lawの3科目のみでした。まだ、FLK1の3分の1も終わっていません。

Legal ServicesとProfessional Conductは捨てる

焦ったぼくは、Legal ServicesとProfessional Conductという、日本の司法試験の感覚だとあまり重要そうではない科目について、リビジョンノートだけ読んで、練習問題はやらないという選択をしました。

これら2つは、アップロードされている練習問題の数が相対的に多かったのも、練習問題を解くのを躊躇させた要因です。

SQE1を終えて過去のことを客観的に見られる今のぼくの考えとしては、Legal Servicesは、覚えていないと解けない問題が多く、かつ、実務でも使う知識ばかりなので、きちんと練習問題をやっておくべきです。他方で、Professional Conductについては、法律家として常識な選択肢を選べば、6割ぐらいは正解できます。そのため、可処分時間との兼ね合いで勉強に時間を割かないという選択肢はありだと思います。

ボリュームが重すぎるDispute Resolution

二科目を捨てるという暴挙に出ても、まだFLK1の範囲が終わりません。Dispute Resolutionがいつまでたっても終わらないのです。

リビジョンノートで100頁以上あるうえ、英国の民事訴訟手続は日本とあまり似ておらず、既存の知識を利用しながら比較法的に勉強していくことが難しく、それでいて細かいところまで、暗記しなければなりませんでした。実務を経験した今あらためてテキストを読み返してみると、そこそこ面白い科目なのですが、当時は苦痛でしかありませんでした。

そうこうしているうちに11月も瞬く間に過ぎて、FLK1のリビジョンノートの読み込みと練習問題1周を終えたころには、11月末となっていました。

2022年12月:大急ぎでFLK2を進める

FLK1の範囲を終わらせるのに2か月かかってしまいましたが、FLK2もこのペースでいくと、試験本番までにMock Testを解く時間がありません。

そのため、この頃のぼくは、FLK2の範囲を12月中に終わらせるべく、リビジョンノートはほぼ流し読み状態で進めていました。当時の記録を見ると、Criminal Lawを2日間で終わらせています。もはや、何をやったか思い出せません。

ロースクールがTerm 1の定期テスト期間に入る

焦りばかりが募る中で、ロースクールのテストが近づいてきます。2022年の授業が12月中旬に終了し、年明けにTerm 1の定期テストが始まることになります。

本来ならば、定期テストの勉強を頑張らなければいけないところ、FLK2の範囲が終わっていないせいで、全く定期テストの勉強に手を付けない日が続きます。以前にも書いたとおり、こんな体たらくのせいで、ぼくは、とある教科でFail(不可)をとっています(笑)

留学中にロースクールの勉強と並行して、SQEの勉強を進める皆さまは、ぜひ他山の石としてください!

虚無の冬休み

妻いわく、2022年の冬のロンドンはとても寒かったそうですが、全く記憶にありません。ひたすら家の中でFLK2の科目を勉強していたからです。

周りのロースクールの友人は、ヨーロッパに旅行してクリスマスマーケットを堪能したり、年末の花火を楽しんだようですが、ぼくにはそんなことをやっている余裕はありませんでした。

年末は徹夜も挟みながら、ぎりぎり2022年中にFLK2の範囲を終わらせたことを覚えています。

2023年1月:本番直前

定期テストで足止め

先にも書いたとおり、1月上旬にロースクールの定期テストが行われるため、年始の1週間は、エッセイの執筆やテストの準備などに使いました。この1週間は、SQE1の勉強に一切触れていません。

Mock Testの演習開始

当時のカレンダーを見返すと、定期テストが全て掃けたのが1月9日でした。一応昨年末までにFLK1とFLK2の全範囲のインプットとアウトプットを終えていたので、ここからは、Mock Testをやり込むことになります。

ぼくが受験したときは、FLK1が1月26日、FLK2が1月30日に実施されましたので、20日間は勉強に充てられる日があった計算です。

この20日間を使って、Mock Testを2周(+間違えた問題はもう1周)しました。このときが一番知識を吸収できたように思います。

当時のメモだと、1回目で平均して50~60%の正答率でした。ぼくは、SQE1にギリギリで受かったので、直前期にぼくと同じぐらいの正答率であれば、合格のチャンスはあると言えるのではないかなと思います。

小括

本日は、少し長くなってしまいました。
とりとめのない文章にお付き合い頂きありがとうございました。

振り返ってみると、時間に追い立てられるばかりできちんと勉強できていなかったのが浮き彫りになりましたね、、。皆さまには、もっと計画的に、かつ、余裕を持って勉強を進められることをおススメします。

次回は、SQE1の受験レポを書きたいと思います。

このエントリーがどなたかのお役に立てば、嬉しいです。
また次回もよろしくお願いします!


【注釈】
*1 QLTSchoolの教材の内容は、予告なく頻繁に変わるので、現在も同じ問題数の構成なのかは分かりません。現在の正確な情報については、ご自身でお確かめください。


免責事項:
このnoteは、ぼくの個人的な意見を述べるものであり、ぼくの所属先の意見を代表するものではありません。また、法律上その他のアドバイスを目的としたものでもありません。noteの作成・管理には配慮をしていますが、その内容に関する正確性および完全性については、保証いたしかねます。あらかじめご了承ください。


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