「花とか空ばかり撮ってても写真は上達しないよ」と笑われた、あの日
こんにちは。トサノコージです。
関東では桜もすっかり散りつつありますね。
今年は写真展があったので、舞い散る桜しか楽しめませんでした。
桜といえば、みんなが大好きな花の代表格でもあります。
4月過ぎたあたりはどこに行ってもみんな桜にスマホを向けてたり、自分と桜に向けてたりしますね。
SNS も桜だらけになって目に優しいです。
花を撮るということについて
先日の写真展に来ていただいた方から、後日X にてコメントで「実はトサノさんのたまに撮る草木の写真も好きです」的なご感想をいただきました。
ありがとうございます。
なるほど。
実はSNS に載せる写真に関しては、いかにもな「花ぁ!!」って感じの写真は滅多に載せないのですが、よく考えたら色を利用した組み写真なんかでたまに投稿する気がします。
花の写真が嫌いかって?
いや、そんなことないです
大好物です
花や緑、そもそも自然って良いですよね…。
観てるだけで癒されるし、撮っても楽しい。
SNS に投稿しないだけで、気になる景色や形、色があればなんの躊躇もなく写真を撮っています。
が、そんな僕ですが、花を撮ることに少し引っ掛かりがある…と言ったら言い過ぎですが、ちょっと昔に考えさせられる出来事があったのです。
今日は、そんな話を。
マウントおじさんがしゅつげんした! どうする? たたかう?
あれはまだ僕が熊本で編集者兼なんちゃってカメラマンをやっていた頃で、熊本城近辺を写真を撮りながら楽しく散歩していた時のこと。
当時僕は富士フイルムのFinepix s5 Pro という、中身はフジなのにガワはまんまニコン、という一風変わったカメラを使っていたんです。
そのカメラには、みんな大好きなフィルムシミュレーションが今より全然少ない数ですが入っていて、買ったばかりの僕は楽しくてvelvia モードでひたすら撮っていた気がします。当時はまだポジフィルムとかでベルビア使ってたんで、違いも楽しかったです。
で、城に向かう道端に綺麗な花が咲いていたので「オハナキレイ。アザヤカニトッテアゲルネ」と心の中で気持ちの悪いつぶやきを行いながら撮ってると、後ろに気配を感じたんです。
ん?? と思って振り返ると、首からやたらデカいカメラにバカでかいレンズを付けてぶら下げた初老のオッサンがニヤニヤしながら立っていたのです。
そして開口一番
「そんな、花とか空とかばかり撮ってても、写真上手くなんないよ? wwwww」
などと、ニヤニヤした顔で宣わりやがったのです。
wwwww ← 草はマジでこれぐらい生えてる感じ
?????????
一体このオッサンは何を言ってるのだろう…?
なぜ、花を撮ってたら上手くならないんだろう…?
ていうか、俺、今日はまだ空撮ってないんだけど??
昨日、阿蘇に行って青い空をベルビアモードでさらに真っ青にして楽しんでたけど、そこでも後ろにいたん??
え待って。
ストーカー!??
などと考えていると、いつの間にかオッサンは自分の持ってる重たそうな鈍器を手に、やたら何かを熱く語っていたのに気づきました。
僕はムカつくと思った人の話はシャットダウンできる便利な耳を持っているので、詳細は曖昧ですが
「ああこの人、自分の持ってるご立派な機材の自慢がしたいだけなんだな」
そう気づいた僕は
「あ、そっすね」
とだけ言い残して、その場から去ることを選びました。
トサノはにげだした!!!
あれは、時間にするとほんの数分の出来事だったのですが、当時20代半ばだった自分にとって機材マウントおじさんとの初めての遭遇だったので、かなりインパクトの強い記憶となって残っています。
それから15年近く時を経た今でも、花や空を撮ろうとする時、たまに呪いのようにあのオッサンのニヤケづらが思い出されるのです。
草は wwwww ←これぐらいの。
この記事でも書いたのですが、面倒臭い人ってどこにでもいるので、可能な限り遭遇は避けたいものです。
会うたびに10年の時を越えて発症する呪いにかけられるとか、嫌にも程がある。
で、話はそれましたが、本題
なんでも好きなもの撮って良いんじゃないの?
ということ。
好きなものを、好きな機材を使って撮って、好きな写真を残せて満足できていれば、それで良いじゃないの。
ただし、人に迷惑をかけない限り
花が綺麗だから、撮った。
「自分が好きな写真」が残せた。
まずはそれで良くて、ついでにSNSとかに投稿して一部の人にも共感いただけたらそれもいいし、展示なんかやって交流の場にしても良い。
なんでも良いと思うんですよ。
が
人の撮るものを否定するんじゃない
あのオッサンはあんな狭い街でデカい望遠レンズぶら下げて、何を撮るつもりだったんだろう??
野鳥とか?
それとも熊本城でいちゃついてるカップルでも遠くから盗撮するんか?? (実際、そんな奴がいたと当時聞いたことがある)
好きならなんでも撮ってて良いと思うよ(盗撮は論外だが)
が、ついでに言うけど
人の好きなものを否定するんじゃない
そもそもなのだが
なぜ、花や空を撮っていても上達しないんだろう??
今、あえて自分の視点から深読みすると「綺麗だからって何も考えずに撮ってても上達はしない」というありがたいアドバイス的な意味とも捉えられるのだが、当時はまだ職業としてカメラマンを目指してたわけでもなく、別に上達しなくても良くない? と思っていたのです。
なんなら、今でも趣味で撮るなら上達する必要はあんまりないと思っています。
というか、あのオッサンのニヤケ具合からして、先にマウント欲があって「花や空」じゃなくてもオッサンにとってなんでも良かったのかもしれない。
そういう手合いに何を言っても自分の中で考えても、結局は時間の無駄なんだけど、あの経験で自分にとって少しでも得られたものがあるとすれば「花や空を撮るなら、より一層しっかりと向き合って撮ろう」という気構えができたことと、背後に気をつけるようになった、ということかな。
というか、花もちゃんと撮るのは難しいと思ってて
物撮りにも通じるところがあるのだけど、花はそれ自体が美しいけど自分で移動しないし(移動すらできない場合もあるし)、決して微笑んだりしないし、なんならイケてるポージングもとってくれないので、正直タイミングによっては人間を撮るより難しいと思う。
空を撮るのだって季節や時間をよむ能力が必要だし、天候という誰にも操れない「運」の要素が絡んでくるので、かなり手強い被写体だと思っている。
そんなものに向き合ってる人たちに対して一括りで「上達しないよ」はオッサン、少々短絡的なんじゃないかなあ。
レンズはクソ長のつけてたのにね。
自分としては道端を歩いていて花や草木を発見した時、人を撮るのと同じ感覚で向き合っているつもり。
背景を考え、光を考え、向きを考え、深度を考え、スピードを考え、仰俯角を考え、風をよみ、雨粒がついているならそれらが最も輝くタイミングまで考える。
最近話題になった「構図」や「フレーミング」にもまあまあ気を使う。
花はいいよ。
「笑って」と言っても笑ってくれないけど、逆に不機嫌になることもないから、花の撮影も面白い。
そもそも僕は「人見知り大学 シャイ学部 厨二病専攻」なので昔から女子と向き合うのが苦手で女子のポートレートを撮るよりも花撮ってた方が精神的なストレスが少なかったのもある。
流石にこの歳になって、カメラマンを10年以上続けてるともう平気ですが。
男? 男は下ネタでも言いながら撮ってたら勝手になんかいい写真になってたから問題なしです。
ガイアが囁いてくる系の兄ちゃんとか、撮りやすいにも程がある。
写真はわからないのです
このやりとり
そう。わかんないのです。
語りたいことはいっぱいあるのだけど、正直「正しいかどうか」は自信がいつもないので、上から目線で語ることなんて自分は一切ない。
花を撮る時とは違って、下から仰ぎ見ることはあっても、上から見ることはないのです。
なので上から急に語られても「なんだこいつ? ストーカー?」ってなっちゃう。
写真を撮り始めて20年ほど、仕事にして10数年、まだわかんないし、これからも解るつもりもなく楽しんでいきたい。
そもそも写真が「上手くなる」ことと「楽しむ」ことは違う。
仕事で撮る写真に関しては、最適解を求めたり一定水準の技術は必要になるけど、楽しむ方面に関しては、もっとゆるくでいいと思うんだ。
上手くなることを楽しむ、という感覚もあるけど、「楽しい写真」や「好きな写真」を否定することは断固否定したいところだね。
好きな写真は、好きでい続けたいものですね。
それでは、また。