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死にたいと思ったことある?



僕はジェットコースターが苦手である

幼少期のトラウマというかなんというか
並んでいる時の絞首台を一歩一歩登る錯覚を覚える感じ
万が一事故に合ったらなどの悪い妄想
僕の恐怖心を煽らずにおれないイジワルな兄達

それら全てが苦手だった

でも1人の男として、いつまでも怖いものがあるのも
いかがなものかと思って先日のUSJで挑戦してきた

トラウマ克服キャンペーン中だし いい機会だ

「死にたいと思ったことある?」

タイトルのこのセリフはそんなUSJで一番人気らしいジェットコースターに並んでいる時に妹から投げられた話題だ

遊園地の、しかもジェットコースターに並んでいる時に投げる話題としてどうなん?と思ったが

緊張して無口になってる僕を見かねた妹の優しさか、はたまた悩みでもあるのか

何はともあれ何も考えずにいるにはUSJの待ち時間は長すぎる

恐怖心と向き合うのも疲れた頃合いだったので
丁度いいと思って考えてみる…

…僕にはこの人生で死にたいタイミングがなかった

こういう時の妹というか女性はだいたい聞いて欲しい話がある話題を投げると何かで読んだので

自分は特にないと話題を切り上げて、さっさと主導権を妹に渡すことにした

妹は昔いじめられてた話や、仕事が大変な話
友達がリスカしてる話などツラツラたくさん出てくる

どうやら優しさというより話したいだけみたいだ

そこからは関西人の悪い癖で話を聞くフリしながら
何か気の利いた返しはできなかったかと1人反省会をしながら話半分で聞いていた

なので妹の話はまったく記憶にない
とりあえず今の妹の心に闇はないようなので安心した

そうこうしてる間に周りがどんどん騒がしくなってきた
どうやら上でジェットコースターが少し止まってるらしい

誰かが怖すぎたか体調不良か、粗相したみたいだ

そんな些細な情報も僕の恐怖心を存分に煽る

ついに来た順番
楽しそうなキャストという名前の執行人
ワクワクしてるのが見てわかる妹
青ざめた顔で観念した私
えらく物騒な形をしたジェットコースター

股間部に突起があるから乗る時気をつけろとアナウンスが入る、余計なお世話だ

もう心を決めねば
座席にロックされ、安全バーにしがみついた

兄の威厳を示すために妹に軽口の一つでも叩いてやろう

「俺死にたいと思ったことないって言ったけど
 今たしかに早く殺してくれって思ってるわ…」

ジェットコースターは発進した

生きててよかった

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