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ユーザーファーストを徹底するために、僕らがこだわっている15のこと(企業秘密)

僕らのサービス「mybest」は、いま月間で3500万人が5000万回くらい使ってもらえるまでに成長しています。

ここまで成長することができたのも、創業以来「ユーザーファースト」にこだわっていたからだと思っています。

Googleは

「ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる」

という哲学を掲げていますが、僕らもまったく同じ考えです。

mybestは、ひとことで言えば「選択をサポートするサービス」です。

片側にユーザーがいて、もう片側にたくさんの選択肢(モノやサービス)がある。僕たちはそのあいだに立ってユーザーに最適な選択肢をマッチングさせようとしています。

僕らは「世の中にあるモノやサービスを大量に購入してきて、徹底的に検証し、データベースにする」ということを日々頑張っています。

「なんでそこまでやるの?」とたまに聞かれるのですが、

それは「選択肢」のことをよりよく知って、マッチングの精度を上げたいから。あくまで「ユーザーにとって、どういう情報があれば、選択の役に立つか」を考えているだけなんです。

……というわけで今回のnoteでは、モノやサービスの購入、検証、コンテンツづくり、オペレーションに至るまで、僕らがこだわっているポイントをなるべくお伝えしたいと思います。同じようにコンテンツやプロダクトをこだわって作っている人のヒントになればうれしいです。

注)あれもこれもと整理していたら長くなってしまいました。企業秘密も含まれそうなので一瞬迷いましたが公開しちゃいます。

1、モノやサービスを大量に購入する

mybestの特長は実際にモノやサービスを購入し検証するということです。

ひとつの商材に関して、すべてのメーカーの商品を購入するのはさすがに難しいのですが、なるべく多くの商品を広く購入するようにしています。

売れ筋のもの、名前が知られているものは網羅しますし、ジャンルによっては知る人ぞ知るものすごくニッチな商品を買ってくることもあります。

購入予算の上限はありません。

社員には「必要なものは全部買ってください」と伝えています。そこでケチってもいいものはできません。惜しみなく投資するスタンスは初期の頃から。まだあまりキャッシュがない時期から同じスタンスを貫いています。

当然ながら、商品の購入にはお金がかかります。

有機ELテレビであれば1台10〜20万円ほどします。それを20台30台と買ってくるわけです。ドラム式の洗濯機は1台30万円ほどです。それを10台買うだけで、300万円ほどです。美容液も、いまは200商品くらいあると思うのですが2〜3万円する商品もざらにあります。

そうやって計算していくと、商品によってはひとつのコンテンツに1000万円近くかかっているものもあります。

ちなみに、商品だけでなく「検証するための設備」も高額だったりします。先日は「音域をチェックできるマネキン」を買いました。そのマネキンにヘッドホンをつけて音を聴かせると、高音・中音・低音をチェックできるというものなのですが、マネキンと機械だけで200万円くらいしました。

肌にあてると肌の水分量などが測れる機械も150万円ほどしましたし、商品の360度画像が撮れるカメラも700万円くらいしました。設備にもかなりお金はかかっているんです。

コンテンツ内の商品の入れ替えも日々やっています。

うちでは月に1回は絶対に更新する形をとっています。抜本的に変えるのは、どうしても半年とか1年に一回になってしまうのですが、月に1回は商品を追加するかしないかという意思決定をするようにしています。

2、検証の労は惜しまない

モノを購入してきたら「検証」をします。これが大変なんです。

たとえばWi-Fiルーターの検証では一軒家を貸し切って電波の強さを検証しました。88万円かけて52台のルーターを購入。4日間で52回Wi-Fiの検証をしたのです。違う部屋でもちゃんとつながるか? お風呂場はどうか? 同時接続はできるか? など、ひとつひとつ検証していきました。

(その一部始終はマンガにもなっています。)

フライパンの検証では、フライパンを合計2万回こすって品質の検証をしました。担当者は「今日は出社して、正拳突きみたいにずっとフライパンこすってました」と言っていました。

バスケットボールの検証のときは、元バスケ部の人たちを集めて近所のコートで検証しました。アイプチの検証のときはアイプチをやりすぎて目が腫れちゃった子もいました。洗濯機を担当している社員は「洗濯機を運ぶのが大変です……」と半泣きになっていました。

マイベストはIT会社のように見えていますが、実情はかなりアナログで泥臭い作業も多くあります。

チェーンソーの検証。片道2時間くらいかけて登山して検証しました。
https://my-best.com/2060
防水カメラの検証。プールに潜って息を止め続けたので、酸欠になりそうでした。
https://my-best.com/439
雨傘の検証。送風機を使って「耐風性」を比較しました。
https://my-best.com/5844
電子レンジの検証。主婦に使い勝手を評価してもらいました。
https://my-best.com/11661
縦型洗濯機の検証。主要メーカー7社の中から人気の縦型洗濯機18商品を集めて比較しました。
https://my-best.com/2523
ヘアアイロンの検証。全商品を担当者の地毛で試したため、髪がパサパサになっていました。
https://my-best.com/60

ちなみに最初の検証記事は「猫用おもちゃ」の記事でした。

当初は何を検証したらいいかも手探りで、専門家に聞きながらやっていました。「やっぱり猫の食いつき具合が大事だよね」ということになり、猫カフェを貸し切って「どのおもちゃが食いつきがいいか」を検証していました。

3、「MONOQLO」の元編集長に入社してもらう

しばらくは手探りで検証記事を作っていたのですが、大きな転換点になったのが、晋遊舎の雑誌「MONOQLO」や「家電批評」の元編集長・浅沼が入社したことです。

彼の入社でコンテンツの質は飛躍的に上がりました。

「MONOQLO」や「家電批評」といえば、モノの比較やレビューにおけるトップ誌。そこで質の高い記事を作っていた浅沼に、コンテンツのクオリティを見るトップの役職「Chief Contents Officer(=CCO)」になってもらったのです。

浅沼が来てから、社員を採用をするときの基準も変わりました。

それまではどちらかというと「ライティングのスキル」を見ていたのですが、そうではなく「専門性があるか」を見るようになったのです。商品そのものについて詳しい人間を採用するようになりました。

「検証の基準」や「モノの価値とは何か」に関しても、浅沼がもたらした知見はやっぱり大きいものがあります。「検証はこれくらいの精度がないと困るよ」とか「コンテンツのクオリティはこれくらいないと困るよ」とか、コンテンツの基準を引き上げてくれました。

「狂気の火」を大きくしていく

コンテンツに対する狂気の「最初の火」は僕から生まれているものだと思いますが、浅沼が入ったことでさらにその火は大きくなりました。

編集長が務められる人とそうでない人の違いに「スピリットや情熱」があると思っています。スピリットがないと、どうしてもいいコンテンツは作れない。お金さえかければいいコンテンツが作れるかといえばそうではなくて、やっぱりスピリットがある人が作るとすごくいいものになります。

そして、スピリットは伝播していきます。

「突き抜けたスピリットを持っている人」が1人いるかどうかは大事なポイント。うちではメンバーが「このコンテンツで出そうと思います」と言っても編集長が首を縦に振らないといったことがよくあります。するとメンバー全員の基準が引き上がる。編集長の基準に応えようとすることで、会社全体がだんだん「狂気的」になっていくんです。

ちなみに今度、トップ女性誌の元編集長だった人間も入ります。ますますmybestがパワーアップしそうで楽しみです。

4、カバレッジ(領域)ごとに「専門家」を置く

それぞれのカバレッジには専任の担当者がいます。

「コスメ」や「家電」などカバレッジごとに担当者がいる。僕らは担当者のことを「ガイド」と呼んでいます。コスメのなかでもさらに細かく分かれていて、たとえば「スキンケアのガイド」と「ベースメイクのガイド」は別の担当者だったりします。

ガイドを採用するときの基準は「ライティングスキルがあるか」より「そのカバレッジの専門家かどうか」です。

家電量販店で働いていた人を家電の領域に置いたり、ベビー用品店で働いていた人をベビーグッズの領域に置いたりしています。なかには元スポーツトレーナーもいます。釣り具用品のガイドは「年間250日ずっと釣りばかりしていた」というツワモノです。

彼ら彼女らの専門性が最終的にはクオリティにつながります。なので、社外で専門家として活動していくことも、会社として後押ししています。資格取得の支援をしたり、SNS活動の支援をしたりもしています。

コンテンツの企画や設計、最終的なライティングまで、基本的にはガイドが全部やっています。「どういう商品を購入してくるのか?」「どういった項目で評価するのか?」「どうやってデータを集めるのか?」「どういうデータベースにするのか?」といったことを一気通貫で担当します。

5、業界の人しか知らないことを書く

mybestのコンテンツをよりよくするために僕がよくメンバーに言っているのは「業界の人しか知らないことを書いてほしい」ということです。

たとえば日立という会社は原子力発電所も作っています。原発には強力なタービンが必要です。つまり「回転」の技術に強い。だから日立の洗濯機は強力らしいのです。そういうことをガイドは知っています。

化粧水であっても「これはOEM(他社ブランドの製品を製造すること)で、Aという工場で作っているのですが、実は別の化粧水も同じ工場で作られているんです」といったことをガイドは知っている。

そういう「業界の人しか知らないこと」を書いてほしいと伝えています。業界の人しか知らないことを書くと、書き手に対する信頼度も上がります。「この人、この分野に詳しいんだな」と思ってもらえて、納得感につながります。

6、ユーザーをリアルに想像する

「ユーザーをリアルに想像してほしい」ということもガイドやメンバーによく言っています。

mybestは現時点では、検索から入ってくるユーザーがほとんどです。そのときに、そのユーザーはどういう人で、どこで検索して、なぜその記事にたどり着いたのか? そのことを考えてほしいと伝えているんです。

ユーザーが見ているのは、もしかしたら「布団の中」かもしれない。「パソコンに向かっているとき」かもしれない。そしてそれは、何歳くらいの人なのか? そういったユーザーの想像は、解像度高くやってほしいと伝えています。想像力の解像度を高めておくことは、当然コンテンツの質にもつながるからです。

先日も洗濯機の担当者にちょっとダメ出しをしました。

そのコンテンツには洗濯機ごとの「騒音レベル」が書かれていたのですが、そのシチュエーションが「脱水時」と「乾燥時」だけになっていたのです。それはいいのですが、でも僕は「本当にユーザーが知りたいのって『ナイトモード』のときの騒音レベルなんじゃないか?」と思ったのです。

乾燥とか脱水のときの騒音レベルも気になるかもしれませんが、本当に気になるのはナイトモードの音。それがうるさいとご近所迷惑にもなったりします。そこで担当者に連絡して「ナイトモードの騒音も入れてね。そこの想像力が大事だよ」と伝えました。

ちなみに、社員には補助金を出して、mybestで好きな商品を買ってもらっています。僕らが「お試しmybest」と呼んでいる制度です。ユーザーとしてmybestを使うことで、想像力を磨いてもらいたいなと思っています。

7、いいコンテンツとは何かを考え続ける

mybestが月間3500万UUまで成長したのは、ひたすら「いいコンテンツ」を作ってきた結果です。やることは基本的に変わっていません。

僕らの仕事は「ユーザーにとって必要な情報ってなんだろう?」「いいコンテンツって何だろう?」と考え続けることです。

コンテンツ作りを試行錯誤するなかで印象に残っている施策があります。

いまの「mybest」のコンテンツは「商品の選び方を解説して、そのあとにランキングを発表する」という構成になっています。これは猫用おもちゃのころから変わっていません。

選び方⇒ランキング、という順番。

でもあるとき、ユーザーは「早く答えを知りたいだろうな」「解説よりも、先にランキングが知りたいだろう」と思って、ランキングを先に持ってきたんです。

ランキング⇒選び方、という順番にしてみた。

でも、それが実は数字がすごく悪かったのです。コンバージョンレートはものすごく下がった。

やってみてわかったことですが、ユーザーはやはり解説部分をスクロールしながら「専門家がこんなに丁寧に検証しているんだな」と感じていたのでしょう。内容を細かく読んでいるかはわかりませんが、コンテンツの雰囲気だけでも「こんなにしっかりとしたコンテンツなら信頼できるかな」と思ってもらえているのだと思います。

ミュージックステーションの特番でも100位から紹介していくから1位がすごく感じる。でも、1位から紹介したらすごさが伝わらない。

いきなりランキングがバーンとあって「これがいいよ!」と言われても、ユーザーからすると「なんで?」となってしまう。

特に検索からくるユーザーが多い今の状況では、この「納得感の醸成」というのが重要なポイントだとわかったのです。

8、とにかくスピードを追求する

いいコンテンツを追求する僕らですが、一方で無限に時間をかけることはできません。

どれだけ担当者の情熱があっても「1年かけてひとつの記事を作ってました」と言われたら困ってしまいます。

僕らはユーザーに提供する「付加価値の総和」を大きくしていきたいのです。だから「この95点のコンテンツを100点にするために時間を使うよりも、他のコンテンツに取り組んだほうがユーザーのためになるならそっちのほうがいいよね」といった議論をよくしています。

「質か量か」がよく問われたりしますが、僕はその問い自体ちょっとナンセンスだなと思います。

量というのは、つまりスピードです。なので、問うのであれば「質かスピードか」でしょう。ただ、スピードというのは質に転化するのです。とにかく効率的に早くやって、余った時間で質を上げていく。それがベストだと思っています。

締め切りも厳格です。

「締め切りが一日遅れても、そのぶんいいものができるんだったらいいだろう」という考え方もあるでしょう。でも一日の遅れというのは、だいたい「段取り」とかそういうレベルの話。一日遅れたほうが高いクオリティーのものができるなんてことは、ほぼない。

だから、僕らは締め切りを厳守するようにしています。

9、「レーティング」を機能させる

コンテンツへのこだわりはまだまだあります。

最近僕らが注力しているのは「レーティングを機能させること」です。なぜかというとジャンルを超えた評価指標を提供したいからです。

たとえば食べログであれば、フレンチとラーメンは違うジャンルなのに「星3.5以上なら美味しいだろう」というような指標があります。これをモノやサービスでも実現させたいのです。

そこで僕らは「満足度」という統一した指標を置きました。

その商品を使って満足できるかどうかは普遍的な基準である、という仮説を立てたのです。その仮説のもと、満足度評価を進めています。

たとえば、洗濯機と化粧水はモノとしては違います。でもどちらも「4点以上なら満足できる」というようにしたい。4点以上なら洗濯機も化粧水も満足できる、と言われるようになりたいのです。

レーティングの設計は慶應義塾大学で経済学の教授をしている坂井豊貴先生と一緒にやっています。

坂井先生とはレーティングを作るときは週1ペースで5ヶ月くらいミーティングしていました。いまも月1くらいでレーティングに問題がないかどうか見てもらっています。

ちなみにレーティングは5段階なのですが、裏側における評価基準は7段階で持っています。坂井先生いわく「7段階が人間が感知できる違いの限界だから」だそうです。

「Amazonのレビュー」に勝てる理由

レーティングの精度を上げるカギは「相対評価」です。

食べログの「星4つ」が信頼できるのは「相対評価」だからです。食べログでレビューしているのは、年に何百軒と食べ歩いてるような人たち。たくさんお店に行っているから相対的に「あの店よりこっちの店のほうが美味い」という評価ができるわけです。

レーティングとして「絶対評価」と「相対評価」のどちらが信頼できるかといえば、やはり相対評価のほうです。絶対評価は何かと比べて評価しているわけではないので、どうしても「個人の主観」に終始しがちなのです。

よく「Amazonのレビューや口コミは脅威ではないんですか?」と聞かれますが、僕らの強みは「相対評価」ができることだと思っています。

Amazonのレビューや口コミの多くは「この化粧水がよかった! 悪かった!」と評価することがほとんどです。しかし、その人が使ったことのある化粧水といっても、おそらく5つとか10くらいが限界でしょう。

その10個の中から「これがいちばんいい」と言っても、世の中には化粧水はごまんとあるわけです。その人が使っていない商品の中に、もっといい商品がある可能性は高い。

僕らは何百という商品を買ってきて、すべて検証します。だから「相対評価」のレーティングが成り立つのです。

10、「プロモニター」を育成する

相対評価をしてレーティングを機能させるため、いま取り組んでいるのが「プロモニター」の育成です。ただのモニターではなく、目利きのプロである「プロモニター」を育成しようとしています。

僕らが基準にしようとしているのは「満足度」。それを測るのは人です。そこで統計的に有意な「N数」を集める必要があります。満足度は人によってどうしてもバラつきが出る。なので、人数が多くないと統計的に有意な結果になりません。

ただ、もしそれがきちんと評価できる人たちばかりなのであれば「N数は少なくてもいいよね」という話になります。僕らはきちんと評価ができる「プロモニター」を揃えることでN数が少なくても統計的に有意な結果を導き出せるようにしているんです。

プロモニターに重要な資質は「細かいところに気づくこと」と「それを言語化できること」です。「どうしてこっちの商品のほうがいいと思ったのか?」を言語化できる人。

ソムリエはワインを飲んで「地中海を思わせるような〜」といった表現ができます。それと同じようにモノやサービスの満足度を表現できる人が向いています。プロモニターは新しい仕事なので採用は大変なのですが、人数は少しずつ増えてきています。

11、オフィスは工場のようなオペレーション

ここからはオペレーションの話です。

マイベストの社内はモノで溢れかえっていて、人がテキパキ動いていたりして、かなりダイナミックです。

オフィスの設備も、オペレーションがスムーズに行くように、分業がうまくいくように改造してきました。社内に倉庫を作ったり、撮影用のブースを何個も作ったり。工場のようになっています。

ガイドが「どういうコンテンツの設計にするか?」を決めたら、あとはオペレーションを専門とするチームがダーッと動きます。

オペレーションチームは、検証する商品を全部購入し、商品が届いたらナンバリングし、物撮りし、倉庫に保管します。検証するにあたって人を呼ぶ必要があればアルバイトをアサインする。こういった分業化の仕組みは、やっているうちにどんどん細かくなっていきました。

毎日何十箱も大量のダンボールが届きます
社内はモノだらけですが、どこに何があるかは徹底管理しています

分業、分業、分業

ポイントは「分業」です。

たとえば「コンテンツの画像作成を支援するチーム」があったりもします。コンテンツを作る人(ガイド)がホワイトボードにラフを描いて、その写真をそのチームに投げると、それをより正確なラフに変えて外注のデザイナーに依頼するようになっているのです。

実は先月から「ガイド」の役割も2工程に分けています。「プランナー」と「ディレクター」です。プランナーは企画や設計だけをやる。ディレクターは検証とライティングを担当します。

このやり方が正解かはいずれわかると思いますが、こうやって日々検証しながら改善していくようにしています。

12、オペレーション改善の専任チームを作る

うちのオペレーションが劇的によくなったきっかけは「オペレーション改善の専門チーム」を作ったことです。

オペレーションは作って終わりではありません。日々質を上げていく必要があります。

たとえばカメラマンの物撮りの質を上げたり、そこのコストを下げる改善もある。「この部分はアルバイトでも撮れるようにしよう」といったことです。そういうことが無数にある。終わりがないわけです。

オペレーション改善の専門チームは、オペレーションを回すこともやりますが、それを日々改善することが重要な仕事なのです。

「マニュアル作りとマニュアルの改善」もこのチームの仕事です。

マニュアルはメンテナンスが重要です。作って終わりではない。オペレーションを改善したら、都度マニュアルも変えます。マニュアル改善だけの担当者もいます。責任を持ってマニュアルを最新の状態にする担当者を置かないと、どうしてもなあなあになっていくからです。

購入・検証してデータベースにできているのは、現時点で月間だいたい2000商品ほどです。かなり頑張ってはいますが、それでも2000。短期的には、これを月間2万ぐらいまで引き上げたいと考えています。

よってオペレーションや制作体制のさらなる強化は急務です。質の高いコンテンツをなるべく多く作る上でも、オペレーションはものすごく重要なファクターなのです。

13、システムの裏側の仕組みを変える

ちょっと専門的になりますが「システムの裏側の仕組みを変えたこと」も、うちとしてはターニングポイントになりました。

シンプルに言えば、これまで「メディア的」にデータを保持していたものを「データベース的」に作るようにしたんです。

それまでも裏側の仕組みは全部自前で作っていました。いわゆる「メディア的」なシステムだったんです。わかりやすく言えば「Word」みたいな仕組みのCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)です。

しかし、その仕組みを「Excel的」に作り変えた。データベースとして、データを保持する形にシステムの裏側の仕組みを変更したことは、大きな意思決定だったなと思います。

「メディア」ではなく「データベース」にすると、選択肢を「コンテンツ」としてではなく「データ」として扱えるようになります。コンテンツだと、単なる文字情報なのですが、データにすることで「定量的な情報」になるわけです。

すると各商品の値段やスペックなどの情報に「検索性」が付与されるため、短期的には自分に合った商品を探しやすくなるんです。

将来的にはそれぞれのユーザーに最適な選択肢をレコメンドしてあげるところまでやりたいと思っていますが、選択肢を「データ」として扱えるようになっておくことで、レコメンドの精度を上げていく際の機械学習が機能しやすくなると考えています。

14、ユーザーをよく知る

僕らは最終的に「ユーザー」と「選択肢(モノやサービス)」をマッチングさせるプロダクトを作ろうとしています。

現状、僕らの強みは「実際に商品を購入してきてデータを溜めている」ことです。どこにもないデータがあることが、うちの価値。だからユーザーにも使ってもらえています。

でも、その価値をさらに進化させていきます。

つまり「どこにもないデータがあること」だけじゃなくて「そのデータを使って選択しやすいこと」に価値を移していきたい。

そこで重要なのが「ユーザーをよく知る」ということです。

僕らは「ユーザーをよく知る」という部分を強化するため、2020年にZホールディングスと資本業務提携をしました。

Zホールディングスといえば、ヤフーとLINEの会社。彼らが保有しているユーザーデータを活用することで、よりユーザーを知ることが可能になると考えたのです。

提携の経緯を簡単にお話しします。

2019年頃に、当時ヤフーの取締役で現社長の小澤さんにお会いしました。ヤフーも僕らと同じような領域を攻めていきたいというお話しでした。その中で「一緒にできることがありそうですね」という話になったのです。

僕は以前から「ユーザーデータの活用」が、ユーザーの選択をサポートするときに最終的にはとても重要になってくると思っていました。

日本でいちばんユーザーデータを持っているのはヤフーやLINEだろう……。インターネットビジネスにおいて「データが価値の源泉だ」とよく言われます。Zホールディングスとの提携は、ユーザーデータの蓄積をショートカットできるメリットがあるので、僕らとしてもとても魅力的でした。

一方で僕は、これまで自己資本での経営を貫いてきて外部の資金を入れることに対して慎重でした。ただサービスの将来や世界中の人が使ってくれるようになるまでのスピード感などさまざまなことを考えた結果、資本業務提携を決断したのです。

それから2年ほど経ちますが、やはり資本業務提携の決断をしてよかったと感じています。一緒になったことで経営上の制約が増えるようなことはほとんどなく、むしろ心強い場面やサポートが多い。提携して本当によかったなと思っています。

15、あらゆるステークホルダーよりユーザーを優先させる

大切なのは「真のユーザーファーストを貫く」ということです。

ユーザーのことを第一に考え、開発や改善のときも、内部の目標や収益ではなく「ユーザーファースト」でい続けるーー。

「そんなのあたりまえだろう?」と思われた方もいるかもしれません。

ただ、実際にユーザーファーストを貫き続けられる企業はごく一部。実はすごく難しいことなのです。

会社というのはステークホルダーがたくさんいます。株主、クライアント、従業員……。ユーザーファーストというのは、それらたくさんのステークホルダーがいるなかで「ユーザーをいちばん優先します」ということ。

株主よりも、クライアントよりも、従業員よりも、ユーザーを優先させる。この意思決定をし続けることができる会社は実は少ないのではないでしょうか。(もちろん従業員の健康だけはユーザーよりも優先されるべきだと考えていますが。)

社員の視点で考えると、さらに難しくなります。

自分やチームのメンバー、上司、会社……いろんな存在があるなかで「ユーザー」をいちばん重視してやっていく。これができる人はなかなかいない。

口では「ユーザーファースト」と言っていても、実は自分が評価されることを考えてしまう。上司のことを優先してしまう。それだとクオリティは上がりきらないし、妥協してしまうことも出てきます。

だからこそ、僕は「ユーザーファースト」にはものすごい価値があるし、真のユーザーファーストを貫くことにこだわっているのです。


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