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BCN 視点 #55 「起業家が起業家を育てる」 (2015年2月26日)

 シリコンバレーでは、次々とITベンチャー企業が生まれている。優秀で野心を抱く若者が世界中から集まってベンチャー企業を設立すると、エンジェル投資家やベンチャーキャピタル(VC)が彼らに資金とノウハウを供給し、成長を促す。もちろん廃業に追い込まれる企業も多いが、失敗した起業家が再挑戦するケースも多い。この挑戦の多さがグーグルやフェイスブックなどを生み出している。

 シリコンバレーの最大の特徴は、起業経験者が起業家を育てるという好循環のエコシステムが形成されている点にあると思う。

 例えば、シリコングラフィックス(1982年創業、1990年上場)の創業者ジム・クラークは1993年に、イリノイ大学でMosaicを開発したマーク・アンドリーセンらとネットスケープコミュニケーションズ(1995年に上場)を設立している。このアンドリーセンは、1999年にホスティング事業を行うラウドクラウド(後にオプスウェアと社名を変更)を創業し、そのホスティング事業を2002年にEDS(Electronic Data Systems)に売却し、残るデータセンター管理ソフトウェア事業を2007年にヒューレット・パッカードに売却している。

 そして、アンドリーセンがオプスウェアの元CEOのベン・ホロウィッツと設立したのが、アンドリーセン・ホロウィッツというVCである。このVCは、ツイッター、フェイスブック、スカイプなどのインターネット企業に投資し、これらの企業の急成長を支えたことで知られており、現在、最も注目されているVCとなっている。

 ベンチャー企業の育成はアベノミクスの成長戦略の柱の一つだ。政府は、開業率を現在の5%程度から10%に高めるという目標を掲げている。このためには、チャレンジ精神や起業に対する意識を高めることも重要だが、ベンチャー企業、とくにスタートアップ企業にリスクマネーを供給する仕組みや、ベンチャー企業経営のノウハウを提供する支援体制を整備していく必要がある。起業家が起業家を育てるシリコンバレーのようなエコシステムを日本に構築することは一朝一夕にできることではない。しかし、だからといって何もしなければ何も変わらない。まずは、小さくてもよいので、成功した起業家が次の起業家を育てる仕組みをつくり、好循環の種をまく必要がある。

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