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BCN 視点 #56 「創業者とエンジェルの良好な関係」 (2015年4月30日)

 4月28日に東京証券取引所マザーズ市場に上場する予定のGunosy(グノシー)の「新株式発行並びに株式売出届出目論見書」を見て、非常に驚いた。創業者の福島良典氏、吉田宏司氏、関喜史氏の所有株式の比率が(新株予約権による潜在株式数を含めても)それぞれ3.53%と異様に低いからだ。

 グノシーは、当時、東京大学の学生だった福島氏らが、情報処理推進機構(IPA)が実施している未踏プロジェクトで研究開発した成果をベースに2012年11月に設立したベンチャー企業で、スマートフォン向けのニュース・キュレーション・アプリを提供している。なんと設立から約2年半での上場である。

 目論見書によれば、所有株式比率は木村新司氏が41.12%、KDDIが16.93%、ジャフコが10.16%である。筆頭株主の木村氏は、東京大学物理学部物理学科卒業後、ドリームインキュベータに勤務、2007年にウェブ広告会社「アトランティス」を創業、これを2011年にグリーに約22億円で売却、2013年にグノシーへ出資して代表取締役共同最高経営責任者となっており、2014年8月に退任している。

 この不思議な所有株式比率については、創業者チームと木村氏の間で何があったか知らないので、なんとも言えないのだが、非常に目を引く数字であることは確かである。

 例えば、IT企業の時価総額トップのアップルも40年ほど前に遡れば、2人の創業者と1人のエンジェルによって生まれたベンチャー企業である。2人の創業者は、言わずと知れたスティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアック。1人のエンジェルは、フェアチャイルド・セミコンダクターとインテルに勤務し、ストックオプションで財をなしたマイク・マークラである。彼は、創業間もないアップルに個人資産を投じ、97年に退任するまでずっと取締役であった(80年代始めにはCEOを務めている)。アップルは1980年12月12日に新規株式公開(IPO)しているが、その時の所有株式を調べると、ジョブズが750万株、ウォズが400万株、マークラが700万株である(ウォズの株数が少ないのは、自社株をもたない社員に株を譲ったからだといわれている)。ちなみに、初日の終値は29ドルであり、ジョブズやマークラは2億ドル以上の資産家となった。

 新技術や製品・サービスを生み出した創業者とエンジェルとの関係は、アップルの事例のようでありたいものだ。

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