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レインズの情報を一般公開しない理由

本日、note運営から「あなたの記事が話題です!先週もっとも多く読まれた記事の一つになりました!」というメッセージを頂戴しました、ありがとうございます。先日の、「スクレイピングした物件データを利用した物件検索サービスは問題ないのか」であります。

その関連で色々な人の意見をつらつらと読んでいたところ、やはり、「レインズの情報を公開しろ」、というコメントが散見されました。いわゆるレインズのオープン化、と言われるやつですね。

レインズとそれにまつわるもろもろは、物凄く誤解が多く、適当な話しが出回り過ぎているので、本当にウンザリで、どれだけの人が分かって言っているのかは不明であります。

以前より、「レインズの情報は不動産ジャパンに掲載されている」みたいなデマは何度も何度も見かけます。「米国では一般でも普通にMLSを見れる」、みたいなデマも。

不動産や取引に係る情報は、機微な情報(売り主の特定に繋がる「個人情報」に該当する氏名、枝番を含む住所などの物件情報、成約情報)が多いので、一般に公開出来たとしても守秘義務個人情報等に関わらない情報だけです。

単にオープンにしろ、っていうのは「違法に個人情報を公開して、守秘義務も破れ」と言っているようなもの

追記:>他にも色々あるので、「巷の「レインズの『オープン化』論」の論点を整理してみる」でより詳しく解説しました。

米国のMLSだって、当然ながらお金を払って利用契約を結んだエージェントやブローカーしかMLSにアクセス出来ません。MLSの場合、日本のような業法の縛りがないので、データの使い道は色々と融通は効きますが。

追記:>「米国の不動産業におけるMLS(multiple listing service)とは何か」で詳しく解説しました。

それに、そもそもレインズをどこが運営しているのかも分かっていない方が殆どでしょう。

たまに「不動産屋が嫌がるからレインズの情報を公開させないんだ」、みたいな話しを見かけたりもしますが、君は一体何を言っているのかね?、という話しであります。不動産屋にそんな権限があると思っているのならおめでたい野郎です。(化石のような酷いシステムの利用を強制させられて、その上、お金まで支払わされているのは不動産屋ですがw)

『不動産屋の利益の源泉は情報の非対称性なので情報格差をフラットにするようなテクノロジーを受け入れるわけがない』という言説」のような、思い込みというか誤解というか。

とはいえ、不動産屋だってどこがレインズを仕切っているかなんて、殆どの人は恐らく知らないのではないでしょうか。良くてもぼんやりと「どっかの公益法人とかそんなんじゃなかったけ?」ぐらいでしょう。

じゃ本当のとこ、どこが、というのは「不動産流通機構:あらためてレインズの問題を考える」で詳しく書いていますのでここでは割愛しますが、一言で言うと、法律上、国交省(大臣)が「指定」するところにやらせて、天下り団体(公益財団法人不動産流通推進センター)を使って指導・監督させてるわけです。まさに国交省の利権構造の一部。

で、国交省はどう考えているかと言うと、「国交省が主導した『不動産ジャパン』が大失敗をした理由」で紹介した国交省のPDFの一文にその片鱗が見られます。

※過去にレインズ情報の一般公開も選択肢の一つとして検討された。しかし、レインズ情報の基本的な位置付けである、「宅建業法に基づく強制登録」と、「広告として民間業者が競い合ってサービス提供する公開情報」とは相容れないという問題がある。

国土交通省不動産投資市場整備室
https://www.lij.jp/html/jli/jli_2002/2002spring_p025.pdf

日本では、当初より「宅建業法に基づく強制登録」としているので、それを今更いきなり一般公開したら民業圧迫みたいになってしまう、とかそんな感じの事を言っているのでしょう。

*もう少しこの辺りの議論の経緯を知りたい所ではありますね。誰が何と言ったのかなど。ま、決して表には出てこない話しでしょうが。もし誰かご存知でしたら教えてください。見つけたらここで追記、更新します。

つまり、この場合、レインズの物件情報(広告情報)の一般公開に一番反対するのは、物件検索サイトのアットホーム、スーモ、ホームズ、その他もろもろの不動産IT系サービス、コンバート業者、つまりこの不便で非効率な状況から「先行者利益」を得ている既存の不動産テック業界となります。賛成するのは、これから新たに食い込みたい新規参入組のテック企業だけ。

え?って感じで、想像していなかったでしょう。世の中には表向きとは異なり、色々な事情があるのです。

それに、個人情報を抜きにしたとしても、当初より「業者間流通の為」という前提で法律上登録を義務付けられてきたものを、いまさらその前提をひっくり返して「別の用途に使います」なんてのは会員を含め、利害関係者全員の同意を取るべきレベルのおおごとになる話しということでしょう。宅建業法の改正も必要だろうし。

いずれにしても、巷でよく見かける「不動産屋が悪いんだ」という風潮は語弊があるどころか、短絡的で酷い誤解であると言えます。

追記:>あらためて「巷の「レインズの『オープン化』論」の論点を整理してみる」で詳しく書きましたが、「そもそも物件情報は誰のものなのか」というところからじっくり議論をするべきかと。

追記:>「不動産の『物件データ』は誰のものか」を書きました。

追記:>個人的にはあのレインズをどうのするくらいだったら、いっそのことレインズは一旦解体して、制度諸々を再設計するべきと思っています。

*因みに、不動産屋はどう考えるか、というのは、それだけで長文が一本以上書けるぐらいのネタ(不動産業者といっても色々業法自体の問題があり・・・以下省略)なので今は控えますが、どの道、現状のレインズなんて見ても、ガックリするだけだと思いますよ。詳細は「不動産流通機構:あらためてレインズの問題を考える」で書いています。

追記:>「朝起きたら一日で数万のアクセス・・・(レインズとスクレイピングの件で思うこと)

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