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「日本、気づけばガラパゴス 不動産API連携に後れ」

*タイトル、日経新聞の「日本、気づけばガラパゴス 銀行API連携に後れ」という記事からのもじりです。(パクリ・・いやインスパイアともいう)

「ガラパゴス」というのは、ガラパゴス諸島での閉じた生態系における独自の進化を遂げた状態を言います。本来はこの言葉にネガティブなカノテーションはありません。(含意というか原意?言外の意味?最近、歳なのかうまい日本語が出てきません・・・)

日本では、バブル期の終わりの頃だったでしょうか、携帯電話の独自進化が目覚ましく、日本の携帯電話の機能はまさに、他の国々を余裕で追い越しその先を行きつつ、ガラパゴス状態でもあった、というのは誰も反論の余地のない事実だと思います。

では、なぜガラパゴス化が悪いものであるかのように言われるようになったのでしょうか。

日本における携帯電話は、その初期から世界最先端の独自技術を多く採用し、その性能や機能は世界最高水準であった。しかし、日本の携帯電話は海外市場ではほとんど売れず、その特異現象からガラパゴス化という用語が生まれその原因と将来的帰結が議論されるようになる。

ガラパゴス化 - ウィキペディア

自分が思うに、日本の携帯は独自規格にこだわり過ぎて、広く普及する国際規格に乗っかれなかった、という点と、欧米でのパソコンとインターネットの普及度を見誤った、という点が大きいと思います。

iモードが流行っていた全盛期、自分は20代前半で世代的にはど真ん中だったのですが、既にパソコンで「ホームページ」を作ったりして遊んでいたので、「あんな数字のボタンでチマチマと文字なんて打ってられないし、普通のインターネットのページも見れないのに無駄な機能ばかり多いごちゃごちゃしたメニューのなんて・・・」、とかなり冷めた目で見ていました。

なので、パソコンとインターネットがとっくに広く普及していた欧米で、日本の携帯が売れなかったのも当然だろうな、という思いであります。あっちの人達はタイプライター時代からキーボードに慣れ親しんでいる人達ですからパソコンにも抵抗がなかったのです。それに、途上国向けには無駄な高機能化で価格が高すぎましたしね。

その後、インターネットのページが普通に読めてしまうタッチ機能付きのiPodが日本にやってきて、ついにiPhoneという黒船が到来します。ご存知のように、日本のガラパゴス携帯(ガラケー)は一掃されました。はい、自分はiPod時代からずっとiPhone一筋です。

ガラパゴス化の教訓とは、狭い視野の範囲しか見ずに、そこだけにこだわって特化した仕様では、ひろく皆に受け入れられるものではなく、いずれ滅び廃れる運命にある、という事です。本当の使いやすさ、というのを考えずに、小さな市場に向けて高度なオレオレ仕様を通用させても、結局は広い世界では通用せずに、いずれ淘汰されてしまうのです。これはどんな業界にも当てはまることです。

さて、元タイトルの日経新聞の記事ですが、語弊というか間違いがあります。引用します。

「日本のAPI市場はインターネットにつながらないパソコン状態だ」。フィンテック協会の鬼頭武嗣代表理事副会長(クラウドリアルティ社長)は嘆息する。やり玉にあげるのが、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の仕様だ。企業や金融機関によってばらばらで、組み込み型金融の肝である事業者と金融機関の連携が進まないガラパゴス状態になっている。

APIは電話線のようにアプリケーションをつなぐ役割を果たす。フィンテック企業と金融機関や事業会社を結ぶ重要なインフラだ。

日本では2018年に施行した改正銀行法で金融機関にAPI連携に関する努力義務が課された。100を超える金融機関がAPI契約を結んだが、銀行によってAPIの仕様が異なり、金融機関向けのサービスを横展開しづらい。

日本、気づけばガラパゴス 銀行API連携に後れ

APIとは、システムの一部の機能を切り出して、それを外部のシステムから利用できるようにする機能です。(本来はこんなの「市場」で売り買いするものでもありません)

で、なんですが、ここでいう各社のAPIの仕様がバラバラで単に標準が存在していなくて連携とれてない状態のことは「ガラパゴス」とは言いません。日経の記者さんもアレですね。別に日本だけの「独自の進化」を遂げている訳でもあるまいし。これは、各社独自仕様で、現在は適者生存状態というか戦国状態にあるとでもいうか、「バベルの塔」後とでも言うべきか・・・。初めは普通どこもそんなもんです。

そもそも、単に遅れていることや出来ていないことを「ガラパゴス」なんて誰も言わないです

通常なら、その分野において最も多く使われているか、またはもっとも良いAPIの仕様が選択され残って(選択の自由と適者生存)自然と同じものに収れんして「デファクトスタンダード」が出来ていくか、皆で集まって仕様の「標準化作業」をするかのどちらかです。

デファクトスタンダード化する、とは全国メディアが発達するにつれて「方言」が廃れて「標準語」化していくのと似ています。

因みに、「標準」といえば、ITの世界ではW3Cのを始めとする一連の「Web標準」は基本中の基本の知識となりますが、日本一般ではビジネスコンサルとか意識高い系?経営者とかが言う「業務標準化」という言葉の方がむしろ広まってしまい、混同されがちです。もともと一般には知られてないから記者が「標準化なにそれ」状態なのも仕方がないのかもしれません・・・。

ただ、これ、日本の金融機関にしても、単に法律で言われたから、という理由で嫌々それっぽいものを適当に作ってみただけ、という雰囲気がプンプンします。

元々、標準化とは一般に、その必要性と意義を認めたステークホルダーが自主的に集まって標準化団体を組織したりするのが定石です。そもそも日本のように法律でAPIの機能を提供するよう「努力義務」を科す、というのは非常に違和感があります。まぁ出来た方が全然便利でよいは良いのですが。

銀行側にしても、なんらかの理由があってやる気がないのでしょう。やる気があれば普通は相互運用性を第一に気にします。そもそも、横の連携が必須である不動産業界とは異なり、なんで銀行側のシステムをフィンテック企業に連携させてやらないといけないのか、私もあんまり分かりません。「フィンテック企業側のただ乗り」だ、と銀行側が警戒するのもまぁ分からないでもないです。

もちろん、銀行側が保守的すぎて果敢に色々なサービスを提供していかないからいわゆる「フィンテック企業」が台頭してる、という経緯・背景は分かりますけどね。

ま、お互いやり合って発展させてください

しかし、お上に言われないと出来ない日本の企業というのもオコチャマだなぁと思います。そんなんで競争力がつくわけがないです。まるで法律で義務だからといって適当に作って放置しているレインズ、という不動産業界のようですね(チクリチクリ)。

とはいえ、日本の金融業界では、法律で言われたからとはいえ、APIを提供しているだけマシです。

有史以来、2021年の現在までに、日本の不動産業界と関連IT企業でAPIを提供しているところは皆無です。横の連携が必須の不動産業界なのにも関わらず、不動産関係のシステムを開発または運営している所でAPIを提供している所はひとつも存在していません。

 ゼロ。ナダ。

これ、自分はひとりで20年近く言っているんですけどねぇ・・・情けない。

日本の不動産業界と関連する不動産ITサービスは、遅れているとかガラパゴスとかいうレベルの話しではありません。もうそれ以前の問題ですね(停滞したままというか腐ってきたというか)。

え?不動産テックがあるじゃないかって?それ、「不動産チャラテック」の間違いでは?

未だに「当社ではCSVのデータをコンバートしてFTPで送信できるんですよ!」とか、20年ぐらい前にタイムスリップしたような眩暈を感じます。

余談ですが、自分は数年前より暗号通貨の取引所が提供しているAPIを利用して、暗号通貨を自動で取引するツールを作ったりして遊んでいます。フィンテックの元祖的な、というか裏本命というか、デジタル通貨ですね。

暗号通貨の取引の場合は、さすがデジタルネイティブというべきか、取引所は(日本や海外のに限らずどこも)当初より当たり前のようにAPIを提供していて(当然無料)、利用できる機能やツール類なども多く、利用環境がとても成熟しています。(Githubでも無料のオープンソースのライブラリなどが多数公開されてます)

暗号通貨取引所のAPIの仕様はそれぞれ異なるので、一度ソフトウェアを作ればどの取引所のAPIにも対応、という訳には行かず、確かに面倒です。それぞれの取引所が提供している機能は元から異なるので、現時点でAPIを共通なものに標準化する、というのは難しい事も良く理解しています。ただ、基本機能の標準化はして欲しいですけどね、少なくともTickerぐらいは。

各社のAPIの違いとして面白いのは、しっかりしている所(ビットバンクやビットフライヤー)はやはりAPIの仕様もしっかりしていて、セキュリティでやらかしている所(こいんちぇっくとかざいふ)はAPIの仕様も中途半端でやる気のなさが現れている、という所。見てると結構面白いです。APIの仕様がダメダメな所は単に利用しないまでです。

いずれにせよ、各社バラバラとはいえ、APIを利用できることは素晴らしいことです。

一日中チャートに噛り付いて手動で取引、なんて自分には向いていませんし、24時間365日ソフトウェアが自動的にやってくれる方が楽です。

本来、自分がやりたかったのは株式の自動取引だったのですが、やっと最近(2020年)になって一部の証券会社(kabu.com)がAPIを公開し始めた段階で、自分が利用している証券会社はまだ未対応なので、株取引ではまだ利用はしていません。まぁ結局は株式取引の場合は取引単元が高いし手数料とかもかかるし、暗号通貨の方が面白いやと・・・。

で、儲かっているのかって? いやいや・・😎・・そんな野暮なことを訊くもんじゃありません。てか、儲ける為にやっているわけでもなかったり。

因みに、APIで言えば、ブログであればどこのブログサービスでも投稿APIとRSS/Atomフィードを公開しています。

行政の方でもAPIの活用に向けて動き出す模様ですね。

行政機関間における情報照会及び情報提供について、中間サーバ等を介在させずAPI連携等を手段として、効率化とリアルタイム化を追求していくことも求められる(コストの削減やシステムの疎結合化)。

「はじめに、アーキありき。」 デジタル庁(準備中)

ま、当然のことですね。

まったく動きがみられない日本の不動産業界は世の中の進歩から完全に取り残されているような気がするのですが、大丈夫なんでしょうかね。私はもう不動産業には従事していないので、もはや関係無いといえばそれまでですが・・・。

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