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不動産業界という魔界

先日、「スクレイピングした物件データを利用した物件検索サービスは問題ないのか」を書いたところ、某所から参照して頂いたようで、いつもとはケタが一つ違う数のページビューになっていました。

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同じようなことを(できるのなら)したいと思っている方や興味ある方も多いようで、一日たってそれに気が付き、「これは今後の事もあるからちゃんとしたものにしておかないといけないな」と、詳しい説明を追加したり、言葉足らずだったと思う所を補ったりしていたのです。

すると、詳しい解説を加えていけばいくほど、色々な要素が絡み合って、グチャグチャに絡み合ってしまうという、まるでスパゲッティコードのようになってしまいました。それほど今回の一件だけをとってみても、不動産業に関わる事情はややっこしく、煩雑なんだよなぁ、と思う今日この頃です。

不動産業というのはもともと、法律上の数々の縛りがある規制産業であり、むやみに外部から参入できる業種ではありません。(事業をするには免許が必要であり、宅建士も一定数必要>そういう意味では、宅建士は独立開業しやすい)

それに加えて、不動産業は競合他社を含めて、同業他社(横)との繋がりと連携が非常に重要なものとなる特殊な業種です。(「不動産業界がITデジタル化で遅れている本当の理由」の中の、「不動産業は横の連携が必須」で少し説明しているので、ご興味あればご覧ください)

これがどういう事を意味するかというと、横との連携においては、明文化されていない、慣習的なルール・決め事で仕事が回っていく、ということであります。常に他社たちがどうしているかアンテナを張り、他社に合わせて共同歩調をとらないと仕事が進みません。例えその決め事がいかに異様なものであったとしても、文句をいっても始まりません。「そういうもんなんだ」とあきらめて合わせるほかないのです。知ればそれなりに理由があったりもしますし、無かったりもします。まことにやっかいな話しです。

よく、「宅建を持っていない営業でも、そっちの方が優秀だったりする場合もある」なんて話しがまことしやかに言われていたりしますが、それも一理はあって、「宅建士」の資格を持っているというだけでは、実務や慣習的なルールに疎く、初めは大変でしょう。(性格の向き不向きもありますし)

こうなると、外部から見た時、明文化されている法律による規制と、明文化されていない慣習とが交じり合って、「不動産業界は魔界」のように見えるのではないでしょうか。色々と誤解もされやすいのも当然です。

さらには不動産業界の中にいる人でも普通は知らないレインズという国交省と天下り元官僚が蠢く利権が絡む構造も存在します。

そんな不動産業界に(その周縁部とはいえ)、冒頭に紹介したような外部の方が(イノセントというかナイーブなというか)思い立っての勢いのようなチャレンジをしたところで、当然のように討ち死にするわけです。(あの物件検索サイト、即効で閉鎖になってしまいましたね。自分としては、あの件に関しては基本的には解説するだけでニュートラルな立場のつもりだったのですが)

不動産業という魔界の中に棲息する人にとってみれば、「あ~あ~、分かってないなぁ、当然だろう」などと思うところかも知れませんが、外部(IT系サイド)から見れば、「なんでだ、オカシイだろう、諦めるな」という反応も根強くあったりします。それ以外の殆どの方は「利用規約でダメって言われてるのだからダメだろう。(もしOKなら自分もやりたいのに、ズルするのはセコイ)」という気持ちなのではないでしょうか。(色々なところのコメントを読んだ限りの印象)

自分としては、法律を含めた現実的なハードルもふまえつつ、イノベーションも阻害したくない(むしろ強烈な推進派)、と思っていて、単に「これもダメ、それもダメ」みたいなことは言いたくありません。ただ「やり方」ってのがあるのだろうと思います。「ルールを破るならまずルールを分かった上で(無意味と思う部分を)破っていく」、じゃないと単に怪我をするだけです。

関連で、「日本の『不動産テック』が誇る最新技術とは?スクレイピングとCSV弄り?」を書きました。

自分は、IT側と不動産側の両方の側の気持ちや立場も分かる非常に特殊な立ち位置にいる人間なので、自分には、業界ごとに中の人達とそれ以外の人達の間にまたがる(相互の無理解と誤解に基づく)深い溝、みたいのも見えてしまうので、時には茶化しながら諫め軽く煽ってみたりもし、なるべく誤解を解くような解説をしたりといったような事もしてきました。

なるべく両者の間にまたがるその深い溝を少しでも埋めることができたら良いな、と思いつつ、ひとりだと心もとないので、もし似たような方が他にも存在するのであれば、是非ともお近づきになりたいなぁ、と思ったりもします。

実際、前々から「不動産情報デジタル標準化」の必要性を訴えている中で、自分と同じようなことを主張している人はいないかと、色々と探してみたりするのですが、日本で他にただ一人「不動産情報の標準化」(PDF)を書いている人がいます。著者は東京大学の教授でありました。敷居が高過ぎ

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