人が育つ工場環境って何だろう? <食品工場のケース>
前回のnoteには、なぜ食品工場は生産性が低いのか、という点で概要を書きました。そこでは私なりの解決案を3つをあげましたが、ここでは「人」に焦点を充てて考えてみたいと思います。
少し論点がズレてしまうかもしれませんが、食品工場の離職状況と離職原因から掘り下げて解決手段をご提案してみたいと思います。
食品工場で働く従業員は他業種と比べると離職率が高いという農林水産省のレポートを見たことがあります。離職率が高いということは雇用に大きな課題を持っている業界とも言えます。先ず、その理由を洗い出してみました。ざっとこんな感じです。 ①苦渋作業が多い、立ちっぱなし作業や臭い、熱い環境での長時間労働等を想定 ②収入が低い ③繰り返し作業が多く仕事にやりがいを感じにない ④職場内のコミュニケーションが上手くいかない ⑤季節変動商品等で繁忙期が決まっており、暇な時期には契約が切られる
このような要素をあげてみました。私自身食品工場の一部工程をロボット化(無人化)する業務に携わったことがあるのですが、連日現場を見て感じた事は「とにかく作業面では肉体労働が多い」という印象でした。また、契約社員やパート従業員の入れ替わりも多かったことを記憶しています。
ここで一度整理すると、食品工場の「人」に焦点を充てて問題点を考えたところ、「退職の連鎖を防ぐにはどうしたら良いか」というテーマが出てきました。
手っ取り早いのは、給与面を上げて退職を防ぐ事ですが、収益性が低い食品工場では早々に実現できないと思います。先ずは給与面の対策を除いて、どのような対策・改善が出来るか考えてみると良いです。このテーマに該当する企業の方は一度ラインスタッフや部門マネージャー等を集めて議論してみてください。そして出された意見に対して検証していきましょう。このテーマは後述する「人が育つ工場環境」を考える事とイコールの取組みです。大切な事は課題に対してどう向き合うかです。ちなみに私が以前、某食品工場の工場長から相談された時は、小集団活動を思いっきり加速させ、グループライン内のチーミングを強化しました。
今回テーマとした「人が育つ工場環境」にはビシッとした答えはありません。人・社風・文化・方針等が企業によってそれぞれ異なるからです。
しかし、実行すれば確実に人が育つことがあります。それは、
「3S」活動です。
3S活動とは「整理・整頓・清掃」の頭文字Sを取ったものです。この活動が工場に定着すると工場は見違えるほどによくなります。工場環境が良いということは、そこで働く従業員の仕事の質も良いという事です。
3Sは単に工場の中をきれいにしておく、という意味だけには止まりません。無駄なものがなくなれば製造現場のスペースが確保できます。すると、新しい製造ラインが構築でき、新しい売上が期待できます。また、不要なものを無くす意識を持つと余剰在庫にも目が止まります。在庫が削減されると収益・品質・スペース等様々な面でメリットが生まれます。食品工場の場合、異物混入などのリスクも下がりますね。つまり3Sの実行は企業体質そのものに大きなインパクトを残します。3Sは継続ありき、ですが日々改善意識を置いて活動する事で徐々に従業員の改善意識が高まり、現場が活性化します。
「人が育つ環境は?」と問うと、モチベーションや目標設定、承認制度の導入、プロセス管理等のキーワードが出てくるのですが、実際の現場に落とし込んだ時にこの3S活動がカチッとハマりました。
これが今回私が伝えたかった「人が育つ工場環境」です。機会があれば、5S活動セミナーの説明資料もUPしたいと思います。こうご期待です。
次回は製造工程を見える化して「ボトルネック」を把握する基本的な考え方をUPしたいと思います。