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【自治体の課題は74%が自部署だけでは解決できない!?】沖縄県DXアドバイザーとしての課題分析と提言内容を公開します。

僕は縁あって、沖縄県のDXアドバイザー(県民生活領域)を担当させていただいております。
2021年度を終えて、県庁の皆様と触れ合い課題について触れ、アドバイザーとして関わらせていただく中で、自治体DXを実現するための課題が浮き彫りになってきましたので、その内容をこちらに記載したいと思います。
※公開については、沖縄県様の許可を頂いております。

沖縄県庁各課から挙げられた課題の傾向を分析しました

各課から挙げられた事業や業務の課題について、その課題の傾向を以下の視点で分類しました。

挙げられた課題の件数は43件でした。もうちょっとデータ数がほしいところですが、顕在化している課題について、一旦こちらのデータを元に考えてみることにします。
基本的に件数をカウントし、グラフに表現することでその多寡を考えることとしていますが、挙げられた1課題につき複数の要素が該当したため、基本的に棒グラフにて表現しています。

DXで実現したいこと

実現したいこととしては、43件中21件が業務効率化に関する事項でした。以降は新たな価値の創出に関する事項が10件、情報共有・管理に関する事項が同じく10件と続きます。
本来DXは業務効率化にとどまらず、新たな価値創出の実現を目指したいところではありますが、顕在化している課題としては業務効率化に関するものが多そうです。

要望

各課から挙げられた課題について、端的に要望として何を期待しているのかをまとめたところ、以下のような結果となりました。

自課で取り組むというよりも、他の課が取り組んでくれないことで困っている、という課題が最も多かったです。

部門横断的な取り組みの必要性

自分達の課だけで解決できる課題か、それとも他の課を巻き込まないと解決できない課題かを分類しました。
結果として、74%の課題が自分たちの課だけでは解決できず、部門横断的な取り組みが必要であることがわかりました。

つまり「各課で施策を考えて提案してね」という従来の縦割り型アプローチでは、どんなに頑張ってもすべての課題の1/4しか解決できないのです(個人的にはこの結果は衝撃でした)。

内容を見てみると、「Aという業務を担当と思われるa課がやっていない」ですとか「Bという業務をb課とc課の両方がやっている」、「d課、e課、f課の関わるDという業務について音頭を取る課がいない」といった感じですね。

具体的な課題例

ちょっとぼかして書きますが、具体的には以下のような課題が挙げられました。

(1)情報の確認、参照をスムーズにする

予算要求資料等で求められる資料がリンクされておらず、エクセルや紙ベースのため非効率です。他事務所への予算状況の照会、修正・差替など、手続きや作成に時間を有し、煩雑な作業が生じています。 

各部で企画している政策に関するデータベースを持っていないことに課題感。事例確認ができていないことで、各部で同じようなプロモーションが実施される恐れがある。報告書が紙ベースであり、事例確認ができていない。

(2)組織を再編する、指揮系統を整える

部門横断的に方向性や施策のとりまとめ、データの収集・管理を一括(統括)する際に、誰が旗振りをするのか、どのような優先順位で取り組むのか、合意をどのように形成するかなどの調整と意思決定に時間がかかる。

(3)転記や手入力を減らす

決算統計等の資料作成に時間を要している。システムの導入により時間外労働が削減できれば、働き方改革や予算削減に繋がるのではないか。 

各種システムが連動していないことや、資料をExcelで作成し提出させていることで、数値の転記ミスやそれに伴う歳入歳出の値の不一致等を引き起こしている。これに伴う確認作業に多大な労力を費やすなど、職員の負担増につながっている。 

(4)コミュニケーションを円滑化する

LGWAN環境下でメール送信、受信それぞれに10分ずつ掛かり、ストレス

(5)ペーパーレス化する

現在、行政文書は紙文書で運用されているため、文書保管書庫が満杯となりつつある。紙文書はその運搬、保管、廃棄に費用や時間を要することが課題であることから、文書の電子化を進める必要がある。

 課題解決の方向性と提案

大まかに次のような提案をさせていただきました。

まずは業務の可視化とBPRから

沖縄県庁様にかぎらず、自治体DXに関して各課の皆さんとコミュニケーションをとらせていただく中で、思うことがあります。

それは「皆さん忙しい」ということです。

「繁忙期には月に60-80時間します」という職員さんもザラ。頭が下がる思いです。そんな中で、新しい取り組みをしよう、DXしよう、といっても、中々実現には至りません。まず新しい取り組みを始めるために余剰をつくる必要があります。

そうすると「業務をデジタル化しよう」「システムを入れよう」という思考になりがちなのですが(現にそのような相談も多いのですが)、その前にやるべきことがあります。BPR(業務整理・業務改革)です。

僕もプロジェクトをよくご一緒させていただく(株)Public dots & Companyによると、データ化・デジタル化を行う前にまずはBPRを行い、本来やらなくてもいい業務を整理することを推奨しています。


次の図は、キヤノンマーケティングジャパンさんが行ってきた業務プロセス改善において、どのような施策を行ったのか、件数をまとめたものです。

【出典】ビジネストレンド|キヤノン「業務プロセスを改善するために重要なこと~業務量調査による業務の「見える化」~」https://canon.jp/business/trend/column-visualization

注目すべきは、非システム施策が大半を占めることです。ここからは現行の業務全てをシステム化するのではなく精査が必要であることがわかります。DXとはすべてをデジタル化することではなく、既存の業務のやり方を抜本的に見直すことからはじまるのです。

システム化と組織・指揮系統・権限の再編を

BPRを行った上で、システムの導入などによって「情報の確認、参照をスムーズにする」「転記や手入力を減らす」「ペーパーレス化する」「コミュニケーションを円滑化する」ことで解決していくことが有効だと考えられます。
また、前述のように課題の74%が部門横断的な取り組みが必要でした。部門横断的な取り組みについては前述のように意思決定や合意形成においてスピーディな動きが難しい現状があります。そのため、組織や権限、指揮系統などの再編・調整が必要だと思われます。

顕在化していない課題に目を向ける

今回出てきた課題は、自組織内における業務効率化に関するものが多数となりました。これらの課題については、顕在化している課題として真摯に取り組む必要があります。

ですが、個人的により注意深く目を向けなければならないのは、顕在化していない課題です。「DXで実現したいこと」の項でも紹介した通り、本来的には県民や事業者などを民間を対象にした「新たな価値の創出」についてもっと多く意見や課題が出てきてほしいものです。

まずは顕在化している自組織の業務改善に関する課題に取り組みつつ、余剰をつくり、その余剰を県民への価値提供に費やす、そんな風に組織を持っていけるとよいと思っております。

2022年度も頑張ります

上記の「課題解決の方向性と提案」の後、「自治体DX全体手順書【第1.0版】」記載の手順にあわせて課題を整理し、細かく提案を行いました。どちらかというと細かいソリューションベースの戦術ではなく、沖縄県庁として組織をどう再編し、どのように人材を育成・登用していくのか、戦略的な部分を提案しています。ただ内容は込み入った話になるので、ここでは一旦割愛させていただきます。

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僕は久米島という小さな町に暮らし、実際に地域に暮らす者として島の皆様から学ばせていただいてきました。そしてその学びを活かし、様々な自治体様のDXに関わらせて頂いてきました。

このような取り組みを評価いただき、僕のような若輩者が沖縄県のDX推進という大きなお仕事に関わらせて頂いております。

このような機会をくださった沖縄県の皆様、ISCOの皆様に感謝しながら、2022年度も微力ながら尽力したいと思っております。

引き続きどうぞよろしくお願いします。

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