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多様化する肩書き

ひと昔前は、我々の業界の肩書きはとてもシンプルでしたが、最近はとても多様化しています。多様化している最近の肩書きの文脈を読み解くことで、時代背景の変化を考察していきたいと思います。

ひと昔前の肩書き

クリエイティブディレクター。アートディレクター。コピーライター。デザイナー。プロデューサー。営業。プランナー。etc.

最近の肩書き

ビジネスプロデューサー。ビジネスデザイナー。デザインエンジニア。エクスペリエンスデザイナー。デザインストラデジスト。デザインコンサルタント。コミュニケーションデザイナー。コミュニケーションプランナー。ブランドプロデューサー。ブランディングデザイナー。ブランドディレクター。コンセプトプランナー。コンセプトデザイナー。ソーシャルデザイナー。ソーシャルプロデューサー。クリエイティブプランナー。UXデザイナー。ファシリテーター。etc.

上記以外にも様々な肩書や職種があると思います。また、WEB業界の肩書にまで足を伸ばすと、カオスになってくるので割愛させていただきます。

肩書の由来

肩書の由来は、歌舞伎役者の右肩に座本の略称が小書きされていたことが由来となっているようです。その頃は、自分の所属を示すものでしかなかったようです。現在のように、広い意味で使われるようになったのは、名刺文化の浸透が大きく影響していることは想像に難しくありません。ちなみに、我々の業界では撮影のスケジュールを香盤と呼びますが、その語源も歌舞伎からきていたはず。言葉によって継承されている文化があることを知ると、少し嬉しくなります。

現代における肩書の役割とは

一般的に肩書は現代の企業人にとってとても重要なものです。肩書は給与やステイタスに直結し、肩書が変わることで一喜一憂します。その人の価値を象徴するもので、肩書によって発言力は変わり、その責任も変わります。対外的な見られ方も変わってきます。企業人は肩書を求めて働いていると言っても過言ではありません。

対して、我々の業界は専門性が高く、スキルと肩書がイコールであることが多く、比較的シンプルな肩書きが多かったのですが、冒頭の通り最近ではその専門性が多様化しているように思います。つまり、社会が求めているニーズが多様に変化してきているとも言えますし、我々のクリエイディブが提供できる価値が広がっているとも言えます。

肩書の欧米化

最近は係長という肩書を見かけることが少なくなりました。そもそも係長って、どのような立場で、どんな発言権があるのか、よくわからないですが、見かけなくなった理由の一つには、肩書きの欧米化が急速に広がっている背景があるように思います。

例えば、

名刺2

どーでしょう?コミュニケーションデザイナーの係長って、なんかピンときませんよね。

例えば

名刺3

これならピンときます。

違和感があるのは最近の肩書が、欧米から由来しているケースが多く、日本企業の肩書との噛み合わせが悪いのかもしれません。そしてもう一つ、新しい時代に必要なソリューション自体を、職種として肩書にするケースが多くなってきいるんだと思います。

IDEOがデザインシンキングの概念を日本に広げたり、シリコンバレーから始まったUIやUXデザインの概念。最近ではD2Cなど、新しい概念や、サービスが生まれると、新しい肩書きが生まれます。その殆どは欧米から来るもので、日本の独自サービスが枯渇していることがよくわかります。

肩書きに求めるもの

肩書に求める価値が、役職や地位を示すものから新しいソリューションの専門スキルを表しているものに変わりつつあります。終身雇用が崩壊し、一社で人生を真っ当するために出世レースに足を踏み入れる時代ではなく、個人がどこに行っても価値を認めさせようとする時代を象徴しているようにも思います。つまりセルフブランディングの意識が高くなってきています。

個人がセルフブランディングする様に、企業もまた、社員の肩書を通して、自社のサービスをPRしているようにも思います。

まとめ

ひと昔前の傾向

社員の地位や立場、居場所を明確にし、社内の発言権や、給与に結びつく内向きな意識が強い。

今の時代の傾向

自社のサービスをPRすると同時に、個人のセルフブラディングを重要視した、外向きな意識が強い。

ひと昔前の肩書と、今の時代の肩書を比較すると、そんな文脈が見えてきます。

昔と今と、意味は違えど「肩書が欲しい」という人々のニーズは変わらず残っていて、どこか肩書に依存しようとする悪き習慣が残っています。コロナ禍において、リモートでの打ち合わせが増える中、名刺交換をすることなく打ち合わせをするケースが増えています。そんな状況下では肩書きではなく、発言やその説得力が重要になってきます。

本当に力のある人は、肩書なんて気にしていないし、自分の名前で勝負できています。むしろ、昔からあるシンプルな肩書を背負い、今の時代に必要なソリューション力を、ガンガン身に付けている人の方がカッコイイと思ってしまうのは、私だけでしょうか。いづれにしても肩書きは、今も昔も、日本のビジネスマーケットにおいては、とても重要なコミュニケーションエレメントであることがわかります。


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