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文脈効果の使い方。

100円のコーラは、シチュエーションを変えることで、本当に1,000円の価値になるのか?


文脈効果とは

知覚(視覚・聴覚・触覚など)過程において、周囲の状況や環境、情報によって対象となるモノやコトの認識が変わる心理的現象のことを言います。

文脈効果はアメリカ合衆国の認知心理学者 Jeromeジェローム Brunerブルーナー氏が1955年に「Journal of General Psychology」で発表した論文で注目を集めました。

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実験では、上記の図がどのように読まれるのかを検証しました。その結果、「L・M・Y・A」をはじめに見たグループは「B」と読む人が多く、「16・17・10・12」をはじめに見たグループは「13」と読む人が多いという結果になりました。

この結果から、人はあるものを認識するとき、周囲の情報を踏まえて判別していることが立証されました。


マーケティングにおける文脈効果

そういった心理的効果は、マーケティングの分野でも活用されています。

しかし、それを表現上のテクニック、価値を上げるための演出テクニックという書かれ方をしばしばしていることに、若干、違和感を感じます。

100円のコーラが、シチュエーションを変えることで1,000円の価値になる。

100円のスプーンも、高級レストランでは、高級カトラリーに見える。

などが、その一例ですが、決して、そのモノの価値自体が変わっているわけではないことを、認識する必要があると思います。


他にも、よく例としてあげられる文脈効果を利用したコピーとして、

「英国紳士が愛したスーツ」があります。

確かに、なんとなく伝統と、格式を感じ、商品として失敗のない価値があるように感じます。

しかし、そのキャッチコピーの背景にある文脈は本当に伝わっているのでしょうか。

スーツ発祥の地が英国であり、英国人のスーツに対する強いこだわりがあることを知っていてはじめて、本当の意味での文脈効果が発揮されるはずです。

ブリティッシュスーツの特徴は、肩パットがしっかりと入っていて、タイトで縦長、生地もしっかりしてい重厚な印象といったところでしょうか。

そして何より特筆するべきは、30年着られると言われる仕立てにあるのではないでしょうか。

私が20代の頃、スーツに興味を持ちはじめ読んだ記事で、英国人は高額なスーツを購入し、リペアを繰り返し何十年も着る。そして、息子に継承することもある。それがブリティッシュスタイルだという記事を読んだことがありました。

なんて、カッコイイんだ!と思った記憶があります。

そもそも、スーツに対する想い入れが日本人とは違うんだと思いました。

それこそが、「英国紳士が愛したスーツ」というコピーの背景にある文脈であり、伝えたい本当の価値だと思います。


文脈効果を利用して本当の価値を伝える

マーケティング用語で使われている「文脈効果」は、確かに言い回しや、演出のテクニックのひとつで、モノやサービスについての印象を変えることはできます。

しかし、伝える側が本来の価値を理解できていないと、例え文脈効果があったとしても、一過性のものに過ぎず、本当の意味での価値は伝わりません。

優れたキャッチコピーは、コピーライターが対象の背景にある文脈を深く理解し、本質をついたものだと思います。もっと言うと、そのモノ・コトの価値が滲み出ているコピーが良いコピーだと思います。そして、その文脈を直感的に理解し、共感する消費者がいて、広告コミュニケーションが成立します。

伝える側が、対象の背景にある文脈を深く理解し、空間、コトバ、デザイン、コミュニケーション、サービスなどを通して、受けての知覚を刺激することで、本当の意味で文脈効果が得られるんだと思います。

英国スーツのように、そのもモノ自体に価値があり、さらにその価値が生み出された背景も全部ひっくるめて深く理解し、伝えること。

それが文脈をデザインすることだと思います。

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