説明的文章の授業をつくろう:上
ことば学びの方略
児童生徒がことばのおもしろさ(ことばを学ぶおもしろさ)と出会う機会をつくるためはどうすればよいのでしょうか。今回は、ことばの学びをつくる方略について考えます。「方略」ということばについて、ここでは、教師が国語科授業において自覚的・意図的・計画的に用いる仕掛け・企てととらえることにします。方略には、「学習指導計画」のような大きなものだけでなく、「発問」や「指導技術」のような微細なものも含まれます。今回は説明的文章教材の授業に注目して、その学びの方略を考えてみます。
説明的文章とは何か
小学校国語科の授業で学習した説明的文章というとどのようなものを思い出すでしょうか。森田信義は、説明的文章を次のように定義しています。
「説明文」という呼び名もありますが、それは「説明的文章」の一種に過ぎないという理解がまず必要です。事象との遠近、読み手意識の強弱、実用性などの観点から文章の性格をとらえることが、説明的文章での学びをつくる前提となります。そのうえで、国語科における説明的文章の授業の主要な教材となるのは、「論理的性格の文章」だというわけです。
説明的文章の学びをどのようにつくるか
説明的文章の授業でむずかしいのは、その文章を読もうという興味や関心・読みたいという気持ちを、どのようにして児童生徒に抱かせるかということだと思われます。個人差もあるかもしれませんが、文学(小説や詩)と比べると、説明的文章には、児童生徒を「読みたい!」という気持ちにさせる力が比較的弱いのではないでしょうか。その意味で、説明的文章の授業は、児童生徒にとって、自分自身で読むというよりも、教師に読まされたという印象が残りやすいと考えられます。この、「教師に読まされた感」をいかにして減らすか。これが、説明的文章の授業の大きな課題なのです。
「読まされた感」を減らしたい! そのために、ことばの学びをどのようにつくっていけばよいのでしょうか。以下ではそれを、「平和のとりでを築く」(筆者・大牟田稔)という説明的文章で考えてみたいと思います。小学6年生国語担当の教師になりきって取り組みましょう。
ワーク
(1)タイトル「平和のとりでを築く」だけをじっと見てください。いまから問いを五つ出します。どの問いがもっともあなたに響きましたか。
(2)本文を黙読してください。
(3)本文を再読しようと思います。児童生徒が目的をもって再読できるようにするために、あなたなら小学6年生にどのような問いを出しますか。次の二つの形式のどちらかを使って書き出してください。そのように問う理由や意図についてもメモしてください。
・「( )に注意しながら、本文をもう一度読んでください。」
・「本文をもう一度読んで、( )を見つけてください。」
太字部分の文言は変更可能です。
(4)いま考えた意見を共有します。①グループに分かれます。教材文とこのプリントと筆記用具をもって移動してください。②自己紹介をして、発表順番を決めてください。③(3)に書いたことをそのまま読み上げてください。④発表された「問い」のうち、どの「問い」がもっともメンバーの注目を集めましたか。「注目を集めた問い」と「その問いのよさ」を紙にメモしてください。⑤グループを解散します。
(5)(4)でメモしたことをクラス全体に発表しましょう。
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以上、2015年に実施したある講義の前半部分でした。この回、下の記事に続く。
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