三方の小品【39:嫌いな食べ物】
嫌いな食べ物
嫌いな食べ物 (テキスト版)
内容は上の画像と同じです。
顔を、顰めていた。
口を何やらモゴモゴとして、レンズの奥の瞳は右は左へとぐるぐる、キョロキョロ。どうしてもこの食感だけは……慣れることがない。
もたもたとした感覚を少しでも早くさよならしたいと、氷のしっかり入ったコップいっぱいの麦茶を一気に飲み干した。
ことの始まりはなんでもないことで、新しいメニューの開発をしようというもののはずだった。せっかくならば、今までにないものをお届けするのが良いのでは?という一言が良く無かった。好きなものはお届けしてきたでしょうと、差し出されたのは苦手なものばかり。3分前の自身の発言に呪いをかけたくなりつつも、引き下がれないので立ち向かう。
ツンとするもの、もんにゃりしたもの、ピリピリするもの、痛いもの。今まで摂取してこなかった味覚に瞳は潤み、身体は中から発熱してるみたいにぽかぽかしてきた。
や、やっぱり、今回はダメです…!そう叫んで何杯目かの麦茶を飲み干したその時。もしかしてこの味と掛け合わせたら何かできるかも…と、閃いて生唾を飲み込んだそんな気だるげな曇り空の午後。
初出:2022年5月19日
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