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2023.07.16 ゲロと思い出/29歳

こんばんは、拷問です。

写真はドライブの途中立ち寄った公園にあった鳥のフンとカスだらけのドームです。日本語練習中なので分からないのですが、ここでカップルが雨宿りしているのは“エモい”にあたるのでしょうか。分かる方いたらコメントでお願いします。

今回は表題についてiPhoneにメモしていたことがあり、最近書いてなかったのでそれをブログに消化しました。どうぞ。

ゲロと思い出


かつて学生時代に数週間の乗船実習があった。俺は行かなかった。その実習について同期の友達1人は「一生忘れられない」と思いを語っていた。
その乗船実習に同じく参加していたもう1人の友達曰く「対面に座っていた女子が船酔いでゲロってたんだがちょっとエロかった」らしい。
俺はその実習に行かなかったことが大学生活6年間の中で大きく後悔に残ったことの一つである。

一生忘れられない思い出なんてあればあるほどいいに決まっていると思っている。だってそのほうが死ぬ直前の走馬灯で飽き飽きしないですむし、思い出を振り返るだけの精神的オナニーのバリエーションも豊富になる。

ある日最寄り駅のホームの自販機でうずくまってゲロを吐いている女性を見た。うずくまっているので顔や年代は分からなかったがとにかくゲロを吐いていた。

ゲロの匂いとうずくまるその女性を見て学生時代の記憶と後悔をぼんやり思い出した。いつしかそれは「ゲロを吐く女性が本当にエロいのか最後まで見届けて自分の心に確認したい」という明確な意思へと変わっていった。

人生で最初で最後な気がする、ただ駅のホームで立ち尽くして自販機前で女性がゲロを吐き終わるまで眺めるのは。固形物の伴ったそれがいつからか胃液のみとなり、俺の好奇心とともにしばらく無の時間が流れた。
シン・ゴジラの終盤、凍結したゴジラを見守る人類もこんな気持ちだったのかもしれない。一定の静けさの後に体を起こし、フラフラと歩きベンチへと倒れるように座っていた。ゲロはその場に放置されていた。

その女性を確認しに行ったら、ベンチで半目になりながらだらしなく寝ていた。50-60代ぐらいのオバさんで、正直全くエロいと思わなかった。あの時間はいったいなんだったんだ、俺はいったい何をやっているんだ、いったい何を期待していたんだ、そもそもこのBB◯はいい歳こいて人前でしかも公共の場でゲロを吐いてそれを処理もしないなんて恥ずかしいと思わないのか、など恥ずかしさや怒りや虚しさといったマイナスの感情が混ざり合って突沸した。

自分のテリトリーを汚された、後ろ姿が美人そうだったけど全然そんなことなくてガッカリした、そもそもゲロ吐く様子もよくよく考えたらエロくもなんとも感じなかった、自分の学生時代の大切な何かを吐瀉物で汚されたように感じた、こんなことに立ち止まり淡い期待を抱いてしまう自分の内面のなんともいえない気持ち悪さ、いろんな思いが頭を過ぎ去っていってなんだかよく分からなくなった。ただ吐いた後の喉のイガイガのような不快感を感じた。

少し冷静になりその場を去った。ゲロなんて東京に引っ越してきてから何度も見てきたし、そのうちの一つをたまたま生で見ただけだと思えばなんてことはない。別にその一つに特別なことなんて何もないし、ただ俺がその一つに固執して馬鹿を見ただけだ。

駅から家まで歩く途中、かつて見たゲロがほんのり跡になっているのを見た。ゲロも思い出も同じなのかもしれない。それを見たとき、そう思った。


29歳

先日友人から誘いを受け、KONCOSというバンドのライブを見に行った。

KONCOSのピアノ兼ボーカルを担当する古川太一という方が途中MCで
「俺29歳からピアノ初めたんだよね」と言った。

29歳からピアノを始め、そのピアノを人前で演奏して食っていくことを決心し10数年たった今それを実現していることは、いい加減な表現だがとてもすごいことだと感動した。同時にピアノでどうしても表現したいことができ、またその表現したいことに大きな自信を持てたことがこの決心の大きな支えになっていたのかなと想像した。

29歳まであと4年かとふと思った。俺にとってのピアノってなんなんだろうと考える。油絵?ラーメン屋?カレー屋?漫画家?芸人? ラッパー?…
そうではなく、今やっている仕事に関連するものなのかもしれない。

29歳、ある意味節目と感じる歳なのかもしれない。若者と呼ばれるグループから本格的にフェードアウトしていく感覚を徐々に味わっていく頃合いなんだと思う。そんな歳になって俺はなにを考えているんだろうか。今のままでいてほしい俺もいるし、今のままでいてほしくない俺もいる。

会社員1年目で仕事が本格的に始まって「将来のキャリアパス、なりたいもの、特にないなー」と思いながら「こういう人材になりたいです、そのためにこんな○○に挑戦します、行動します」なんて目標設定をタイピングしながらぼんやりと仕事をしている現状と、あのときのステージを比較すると少しだけ心が苦しくなる。「俺には何もないのか」とまではネガティブにならないが割と周囲に比べて貴重な経験を多くしていると勝手に思っているので、「アウトプットがつまらなすぎる」と思ってしまう。

やりたいことってなんなんだろう、最近ずっと考えているけどいまいちいい答えが出ない。でも考え続けないといけない気がする。4年はきっと思っていたより短い。それはもう少しだけ確信を持って言える。




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