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#オリーブストーリー 匹敵モスカとの戦い

こんにちは、オリーブオイル職人のYurie(@YurieAdachi)です。
今日の #オリーブストーリー  は、イタリアのオリーブの天敵、モスカのお話です。虫の写真が出てきます。苦手な方はサクッとスルーしてくださいね。

家庭菜園でも学校の授業でも、野菜や果物を育てたことがある方ならみんな知っていると思いますが、どの野菜やフルーツにも天敵がいます。イタリアの葡萄の天敵には「スズキ」さんっていう虫もいるんですよ。ジョークじゃなくて、本当にラテン名がスズキさん(Drosophila suzukii)。東南アジアが原産の目が真っ赤なショウジョウバエなんですが、1931年にMatsumuraさんという方によって発見されました(1916年には他の方に発見されていたようですが)。

なんで発見者がマツムラさんなのに、ラテン名スズキという矛盾。。笑

1930年代には日本や韓国でも見かけられるようになり、2000年に入ってからはアメリカ大陸でも。ヨーロッパでもここ10年ほど見つかるようになり。ぶどう含む多くのフルーツに多大なる被害が出ました。イタリアの農家は、普通に「あの憎たらしいスズキめ!」みたいな感じで話すので、私の苗字がスズキじゃなくて安心してます。

もちろんオリーブが大好きな虫さんもいて、日本ではアナアキゾウムシが有名ですよね。イタリアにも地域によって虫さんが変わるのですが、有名なのが通称「モスカ(オリーブ蝿)」と呼ばれるものです。(写真はこちらのサイトから)

モスか

まるで蝿。でも蜂さんみたいな棘を持っている、蜂と蝿のあいのこ、みたいな感じです。。棘から卵をオリーブの中に産み込みます。

このモスカさんなんですが、めっちゃ頭いいんですよ。というのも、「緑で大きなオリーブ」しか選ばないんです(それ以外の色があまり見えないっていうのもあるけど)。緑で大きなオリーブって、一番美味しいオリーブなので、本当に農家としてはやってられないというか。わざわざそれ選ぶ?って聞きたくなるほどです。

大体第1ジェネレーションが7月ごろに始まります。この時期にこのモスカが大量発生してしまうと、その年のオリーブの収穫はほぼ全滅になります。今年の夏はとても暑かったので、第1ジェネレーション、第2ジェネレーションも死んでしまい、9月後編に入って第3ジェネレーションがやっと活動し始めました。月1ぐらいで、新しいジェネレーションが生まれるんですよね、もう勘弁です。長い年は第7ジェネレーションぐらいまで生き残ります。。

さて、このモスカちゃん。オーガニック農法では何もできません。文章のまま、爪を噛みながら収穫を待つだけです。モスカは湿度が大好物なので、秋から冬にかけてどんどん増えていきます。

オーガニックではない農家は、昨年までは殺虫剤がありましたが、それも今年から違法になりそうです。もうなすすべがありません。。Calcio(カルシウム)の粉を散布することで、湿度を減らし、また緑色を白色にすることで少しだけモスカを惑わせることはできます。でもそれも雨が降ったらやり直し。カルシウムは安いけど、散布しすぎると木の成長を止めてしまうそうなので、それも困る。

あとは、毎日何匹捕まえるか、フェロモンを使って誘き寄せて確認する方法があります。このフェロモンで誘き寄せ作戦、実は日本の企業がリーダーです。シンエツという企業なのですが、ぶどうのフェロモントラップなども作っています。まぁ、とはいっても、100匹捕まえても何もできないので、確認するだけなのですが。プーリアではいろんな地域に何匹捕まえたかというのを毎週確認してくれる人たちがいるので、メールのニュースレターで、どの地域で何匹いるかなども教えてくれます。ありがたいけど、結局は爪を噛みながら収穫を待つ、という感じです。

私も爪を噛みながら待ちたいと思います。

オーガニックって難しい。共存なんてできないからね、モスカちゃんと!

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