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【オリーブオイルへの想い②】サレントのオリーブ畑の現在

こんにちは!オリーブ農家のYurieです!今日は、クラファン中の記事にもある、プーリアのサレント半島のオリーブ畑についてお話しします。

私の住んでいる、プーリア州は、古代からオリーブオイルで有名でした。近年になっても、イギリスの産業革命時代の街灯に使われていたオリーブオイルは、プーリアのガリポリという町からイギリスに輸出されていましたし、ベネチアの石鹸やフィレンツェの繊維業界にもたくさん使われていました。その量は、ヨーロッパの60−70%を占めていたほどと言われています。18世紀から19世紀にかけては、特に私たちが住んでいる町、アンドリア市が一番生産量が多かったため、ヨーロッパのオリーブオイルの値段(毎日変動します)は、アンドリア市の農家で決めていたほどなのです。

オリーブの国、プーリア州。この州が有名になったのは、大量生産ができることだけではありません。それに追加して、世界最高峰のオリーブオイルができる、それが決め手でした。

プーリア州は今でもイタリアのオリーブオイル市場の60%を占めています。イタリアにとって、ヨーロッパにとって、とても大切な場所なのです。

そんなプーリア州の南、サレント半島に、南米からあるバクテリアが入ってきました。それがXylella Fastidiosa(俗称:シレラ)と呼ばれるものです。このバクテリアは、バッタのような虫、スプタッキーナという虫を通して広がります。木の命でもあるリンファ(リンパ腺)を枯らし、木の中から木を死に追い詰めて行きます。

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シレラに感染した木の初めの症状は、この写真のような感じです。私たちも毛先から痛んで行きますよね。木もリンパ腺がやられると、枝の先から枯れて行きます。

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だんだん枯れた木は最終的に葉がなくなります。オリーブは葉っぱがないと実がつきません。(オリーブは針葉樹林なので紅葉して葉っぱが落ちることはありません)

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シレラ対策には、もちろんワクチンが必要になります。ただ、2013年より研究されていますが、いまだにまだ研究は進んでいません。それ以外のシレラ対策は、感染した木、そしてその周りの木々を燃やすこと。

プーリア州政府、イタリア政府は何も助けていません。いや、助けるどころか、燃やしちゃいけないという指令を出した時も。ユネスコ世界遺産のアルベロベッロの近くには、樹齢2000年のオリーブの木々があります。これらもユネスコ世界遺産。世界遺産を簡単には燃やせません。結局農家はどうしていいかわからず、感染した木々をそのままにして、農地を売りに出し始めました。

このシレラは毎年30kmの速度で動きます。私たちの農地もあと数年で感染範囲に入ります。イタリアだけでなく、もう一つのオリーブオイル大国、スペインにもシレラは入っていますが、彼らはとてもスピーディで、感染した木々はすぐに燃やし、感染範囲をストップさせています。でも、いつかまた火が着くかわかりません。このシレラは、実はオリーブの木だけでなく、ぶどう、アーモンド、フルーツの木など非常に様々な木を攻撃します。つまり、問題はオリーブ農家だけでなく、ワイン農家も含め、地中海全体の特産品の危機なのです。

それでも、私たちがなぜオリーブオイルを作ろうと思ったか。それにはいくつかの理由があります。

まず、今後さらにオリーブオイルが減っていくことが見込まれる中、そしてオリーブオイルがコモディティ化していく中、さらなる不正が増えていくことが予想されます。そんな不正が増える中、私たちは透明性、消費者が生産者のしていることが見える、そんな透明性を大事にして行きたいと思ったからです。

そして、オリーブオイルの将来性がないとしたとしても、美味しい、本物のオリーブオイルを是非世界の皆さんに食べていただきたい、そう思ったからです。

だから、是非皆さんの力を貸してください!

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