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「この人を悼む」シリーズ・3回目はたてかべ和也氏。(2015年6月18日没)

で、いつものいろいろ深く読み込んで構成している
うちに書き上がらない病がいくつかありまして、
ここはシンプルに、と方向転換。

折角2つもフリを利かせたのですし、ここは改めて
たてかべ和也氏に関しての追悼評を「この人を悼む」
シリーズの第3回目としてリライトしつつ纏めよう
かと。

(まあ思い入れがある分だけ、少々長文の纏めですが
そこは御容赦のほどを)

まず思ったのはもう小山薫堂が完全に忘れ去って
かまけている宿題を指摘出来るような人間がこれで
全て消えてしまったのか、といふ「サプライズ!」
問題ってのがある、と。

かつて日産一社の提供番組としては「料理の鉄人」
や「ワーズワースの冒険」などがフジをキー局と
して番組としては(かつ小山薫堂が関わってた番組
としても)有名でしたが、『料理の鉄人』終了後の
1999年から1年ほどオンエアされていたいかにも
小山薫堂らしいターゲットとなる人物にドッキリ
するようなことを仕掛け、ターゲットにとっての
「幸せな結末」へと導く、といふコンセプトの
「SURPRISE!」といふ日産一社の提供番組がござい
ました。

 で、私は断片的にしか録れなかった回があり、
それはターゲットが「川上とも子」さんだった
回がありまして、そこでいろいろ悩んでいた
川上とも子にアドバイスを与えつつ、ドッキリ
するようなことを仕掛ける側に廻っていたのが
当時バオバブのチーフマネージャーだったかべさん
ことたてかべ和也氏なのでした。

後に川上とも子さんが亡くなった時にこの
「SURPRISE!」のことを想起し、かつ『ARIA』
シリーズで歌アテナさんをやっていた河井英里さん
が亡くなった時に「ワーズワースの冒険」の
シャ・リオンを想起していた人間としては、
この二人を真っ当に弔っていないからこそ
フジテレビは没落し続けているのだな、といふ
実感を持ち続けているのですが、そうした
小山薫堂のサプライズ思想も結局はキチンと
した形に納めていないことによって、はからず
も数多のCMと同様胡散霧消していくのかな、
とかべさんが亡くなって改めて思ったのが
まず第一でした。
(ひとまず生前にお逢いすることが出来なかった
人を追悼するのに「この人を悼む」シリーズを
使用している、といふコンセプトではあるの
ですが、川上とも子さんは以前イベントで何度も
お逢いしているのでおそらく「お逢いしたことの
あるこの人を悼む」シリーズで採り上げることに
なるかと)


次に思ったのはこれで青野武・納谷悟朗・納谷
六朗と来て「水曜どうでしょう」高速バスの旅の
端緒だった最初のやられポイント中山峠を過ぎる
と存在する喜茂別町出身のかべさんが亡くなった
ので、ベテラン声優で頼れそうな同郷の人は
もう上田敏也氏(おじゃる丸のトミーじいさん
とかで有名な貴族・神父役などをこなすベテラン
声優)[81]とこないだも洒脱に「ローカル路線
バスの旅」や「ケーズデンキ」のCMでもいい
ひとくさりを入れてくるキートン山田氏[リマックス]
くらいしかいなくなったのだな、といふ寂しさが
思わずこみあげてくる、と。
(そして時は経ちキートン山田氏は引退宣言を
出して(ポツ一はおがちゃんこと)◆緒方賢一に
ローカル路線バスのナレーションは◆津田健次郎
(アンドステア)に禅譲)引退、上田敏也氏は
2022年の初頭に亡くなられました。年上で
お逢いしたこともあるベテラン声優としてはもう
札幌丘珠高校出身の◆松井菜桜子[up&ups]さん
くらいしかもういないのか、といふ寂しさは
一層感じます)

因みに私が初めてたてかべ和也氏が声優などの
マネジメントをしているお方でもあることを
知ったのはコミック版の「ミスター味っ子」に
あった似顔絵写真のショットからで、アニメ版
『ミスター味っ子』はまさしくかべさんの
理想とするかべさんの「声優学校」だった、
といふ話から次は進めて行ければいいのかな、と。

それはまた別のサイドで考えると、長寿番組の
当たり役があったがために声優業からなかなか
足を洗えなかったマネージャーとしての
たてかべ和也氏について、しっかりとここは
追悼文を書かなければな、といふ気合が必要
だったのかもしれないな、と。
(そこからかつての『ドラえもん』や『タイム
ボカンシリーズ』にまつわる要点整理をして
いけば伝わるかな、と思いつつ纏めて参ります)

でほ『ミスター味っ子』について。かると鯖の
本は確かにダンジョンから発掘して出て来たけど
ここでは割愛。本筋を進めます。当時のいくつか
書かれた声優による本からの印象をまとめると、
田中真弓はオーディションに行った、とだけ
書かれて後日の表記がない。
その時点でちゃんと記録と数字に残る人気作品
になることは叶わなかったけれども、味皇やって
た◆藤本譲[BAO]の傍らにかべさんがいた
ようにアニメ版『ミスター味っ子』は人々の
記憶の片隅に残るようないかにもかべさんらしい
「声優学校」としての育成の場をキャスト的には
担っていた作品だったのではないかと。

ただそれは一方でぷろだくしょんバオバブの
声優としては味吉法子◆横尾まりやオリキャラ
山岡しげるを演じた後に『クレヨンしんちゃん』や
『ちびまる子ちゃん』につながる名バイプレーヤー
◆ならはしみきなどを育て、その他にも堺一馬
◆鈴木みえ(これ以前では『小公女セーラ』の
ベッキー、この後には『クレヨンしんちゃん』で
マサオくん『ちびまる子ちゃん』でお母さん
〈さくらすみれ〉『忍たま乱太郎』では福富
しんべヱを長く演じ一龍斎貞友と改名、所属も
フリーに)松井菜桜子、大滝進矢などに加えて
終生の師弟関係を担った◆堀内賢雄を下仲基之役
で出演させる傍ら、三悪とジャイアンが長寿
シリーズ過ぎて結局声優をやめられなかった
かべさんもクワイ・チャン・カモン役で出演
している、ここまではいい。

ただただ残念なのは三石琴乃の本の記述にもある
通り、勝田声優学校出身の声優をよりによって
先に起用してしまったのが「高木渉君(三石琴乃
とは勝田声優学校で同期)が出ている、ということ
で『ミスター味っ子』のアフレコ見学」だったのが
後世から観ればかなり後味の悪い印象を形成するの
に造作もなかったあたりなのが悔やまれるところ。

この点で非常にボヤけた記述になっているものが多く、
証言が曖昧模糊で止められざるを得ないあたりの
不足感が非常に悲しいあたりではある。
(ただ『SHIROBAKO』に風味付けで高木渉も横尾まり
も参加してるあたりは結構キツいスパイスのよう
にも当時は感じ取れたのですけど)

なのでここで投入するのが史料としてファイリング
していた中にあった雑誌「ハートフル・ボイス」
(メディアックス)の最終号(vol5)。
ここにはたてかべ和也と肝付兼太のベテラン対談が
収録されている(83ページから5ページ分)。
多分冒頭にあるあぐらでもかいてリラックスしてな
よと云われてた担当マネージャーS嬢は他の話でも
よく出てきてた白崎恵理嬢かな、と)

https://product.rakuten.co.jp/product/-/bb0e61feb6156fddc7cae190e697b6f0/

 ここから導かれるものとしては大体1984-1985年
あたりにかべさんはオフィス央の社長をやめて
バオバブに復帰し、ほぼ同時期にマネージャー
(営業)の仕事もはじめる、と。
堀内賢雄はオフィス央時代に新米のマネージャーが
連れてきてからの関係で、まさしく終生を共にした。

矢島晶子はたまたま行った舞台から発掘し、紹介
したオーディションの該当アニメは『クレヨン
しんちゃん』ではなく『アイドル伝説えり子』。
そこで田村英里子役を射止め1年勤め上げた後に
『クレヨンしんちゃん』のオーディションに呼ばれて
自然な演技を買った本郷みつる監督がしんちゃん
(野原しんのすけ)に採用して現在にいたる、と。
(その後子ども声の限界を口にしてしんのすけを
降板し、フリーになったのは御存知の通り)

水谷優子、折笠愛、小林沙苗などを育てたなどの
記述もあるようだけど、先述した川上とも子も
はじめリアムタイムで聞いてたあたりだと、
「ガラガラポン」が始まっていたラジオの行く末が
不安な頃にゲストとしてかべさんが登場し、所属
事務所を変更する可能性があった頃にかべさんの
紹介でバオバブ入りした「金八先生」出身の声優
宮島依里なんかもかべさんの薫陶を受けた一人だった
かと(その後は事務所の連鎖倒産に巻き込まれて
現在は懸樋プロ所属かな)。

2002年4月に、声優の堀内賢雄がぷろだくしょん
バオバブから独立してケンユウオフィスを設立
した際にかべさんも一緒に出て取締役を兼務する
ことに。

そして2009年にはスキルス胃がんのステージ5まで
行っていたかべさんと堀内賢雄との関係については
ここのページが最も端的でいい。
(全ての文章をフリー公開してない分胡散くささは
見えますが、ここの会話は最も的確で状況と関係性を
伝えるものとしては最適)

たてかべさんは、堀内さんとの酒の席で、軽い口調
で葬式の話をした。
「賢雄(堀内さん)、俺、がんで死ぬかもしれない
けど、葬式は内輪でやってくれればいいから」
「いやいや、カベさん(たてかべさん)、それは
できないよ」
「なら偲ぶ会なんてどうだ?」
「それもダメだよ。葬式は盛大にやるから」

そんな会話をして、「俺たちって何て楽観的なんだ」
と大笑いしたそうだ。

そして、堀内さんはこう言った。
「カベさん、葬式の心配より、まずがんを治すことを
考えなくちゃ。事務所ぐるみでバックアップするから」

といふことでここからも割らずに最後まで。そろそろ
リミットをかけて本題をしっかり語りきるのが供養の
一つと思って書きましたので、最後までお付き合い
頂けると幸いです。

「ぼくが思うに一人っ子っていうのは一人ぼっちに
なりたくないって所があるんですよ。友達がいないと
駄目なんです。もっともいろんな一人っ子がいて、
例えばすごいマニアックになっちゃう子もいるだろう
けれど、ぼくは外へ出て、仲間外れにされたくないから
一生懸命おもしろいことを考えた。そうするとみんな
がかわいがってくれるわけです。またジャイアンみたい
のもいてね。昔のジャイアンみたいのは色々なことを
教えてくれるわけですよ。そんな、ぼくが小さい時に
見ていたジャイアンのようなものがスッと入って
ジャイアンになった」

(「ハートフルボイス vol.5」(メディアックス)ベテランインタビュー5「たてかべ和也・肝付兼太」p86)

北海道喜茂別町出身(実は前出の雑誌に連載されて
いた堀内賢雄の連載「Over Drinkerの詩」にはかべさん
の亡くなったお母様の納骨に同行した話が載っていて
「その地は廃駅になっており、小枝をつかみ、地面に
かがみこみ、この辺のはずだと地面に印をつける姿の
バックに夕映えの羊蹄山が大パノラマで浮かびあがる。
この場景を私は忘れることができない」とあるのが
印象的)。

日本大学芸術学部演劇学科卒。同期には小林清志など。
中国の芝居ばっかりやってたと述懐していた劇団泉座時代
から声優としてのキャリアを積み、はじめは外国映画、
次いで吹き替えアニメに数多く参加。本名名義の立壁和也
名義としては主な代表作に『サザエさん』の穴子さん
(初代,若本則夫(紀昭)は二代目)、『はじめ人間
ギャートルズ』のドテチンなどがある。

(顔は怖いが、おとなしく、ゴンに対しては優しい。
馬鹿力を持ってるけど、強さは安定していない、といふ
ドテチンのキャラ評はまさしくかべさんらしいキャラ
といえよう)また『ど根性ガエル(1)』のゴリライモ
(五利良 イモ太郎)も立壁和也名義時代の代表キャラ
(『ど根性ガエル(2)』にあたる『アニメ 新・
ど根性ガエル』(1981年版)のゴリライモを演じたのは
青空球児)。あとスパロボ関連のアニメでは『勇者
ライディーン』の化石獣や巨烈獣はかべさんでしたし、
『超電磁ロボ コン・バトラーV』では西川大作役やって
たので、よくスパロボで声を聞いてた印象がございます。

で、ジャイアンと『ドラえもん』に行く前に、
当然私は「タイムボカンシリーズ」世代の申し子です
から三悪について一通り語ります。とはいっても
やっぱり当時の世代としてはピンポイントで抑える形
にはなりやすいのですが。

となるとワルサー時代の『タイムボカン』は中村光毅の
コキタナイ美術がハナについてイヤだし(ちなみに
キャラデザやってた天野嘉孝の上司で初代(無印)
ガンダムの美術が本質的にコキタナイのもこの人に
起因する)、『ヤッターマン』のトンズラーはキャラ的
に一番安定しているけど、えこひいきされすぎてなんか
好かない感じが常にある。仏を冒涜してシリーズ構成
(小山高生)にソッポ向かれた『イタダキマン』の場合は
作品自体田中真弓のOP以外特に印象にも残らず
トンメンタンはやっぱり中途半端。

一部で黒歴史扱いになっちやってる『タイムボカン2000
怪盗きらめきマン』のオンドレーはなかなかハマってた
と思うのですが、やっぱり滝口順平のナレーションが
全体的に(あの時代においては)鈍重過ぎた嫌いがある。
あと『ゼンダマン』のドンジューローはやっぱりオシイ
星人が脳裡に出てきてまさしく「オシイ」感じで選外。

といふことで基本的に「私の好きな三悪」と選り分け
すると、基本的にはピカレスクロマン的な「ドンデン」が
ある歴史物から扁平足なロボが出てくる『タイム
パトロール隊オタスケマン』から『逆転イッパツマン』
までとなるので、ここのコメントを厚めに。

かべさんがヨタノフ・ドワルスキーで『タイムパトロール
隊オタスケマン』をやっていた時期は丁度ゲキガスキーが
「四悪」として参加し、人気を博す時期と重なっているの
ですが、その具体的な声優としての指導を山本正之に
レクチャーしていたのもまたあるわけで。
 (おそらく新宿整音)スタジオのボイラー室で付きっ
きりの特訓してたのもかべさんだったと伝わっている。
因みに最終回は多分に『鉄腕アトム』のテーゼが織り込まれた
「大ドンデン」があるので、機会があれば是非。

かべさんがアラン・スカドンやってた『ヤットデタマン』。
印象に残っているのはやはりササヤキレポーターを確立した
富山敬の名調子と笹川ひろし総監督もお気に入りで多分に
現在の「アイカツシステム」にも影響があるという変身
シーン。わずか3秒のシーンのうちに笛の練習や体力
トレーニングをしてきてからヤットデタマンとしてやって
くるシークエンスは、最近の『アイカツ!』で「芸能人は
カードが命」が流れていると、そこに『ヤットデタマン』
風味を思い起こさせるあたりがすごく絶妙。
EDも往年の鈴木ヒロミツ「ヤットデマン・ブキウギ・
レディ」でひと味違います。

https://sp.nicovideo.jp/watch/sm24558994

満を持して富山敬が主役、代わりのナレーションに
鈴置洋孝を配したがためにつかせのりこ、長堀芳夫(後の
郷里大輔)、あきやまるなと故人多すぎで再現がホントに
困難だと言われる『逆転イッパツマン』。

かべさんはキョカンチンやってましたが、ガラの悪さが
かなり希薄となり、キャラとしても「三悪らしくない」のが
残念なのだけど、それだけ最もこの時期に即した作品として
遺された『逆転イッパツマン』らしさの特徴であると考察
出来るのかも。あと小ネタとしてはシャレコーベリース社
オストアンデル北部支社として参加してる声優さんの
「一刻荘住人率」がかなり高い作品でもあったり
(二又一成、青木和代、千葉繁が参加)。

そしてここで『ドラえもん』の表記整頓をここで
入れますか。幻の日本テレビ動画版を『ドラえもん(初)』
とするのは相違ないところですが(ジャイアン役は肝付兼太。
スネ夫役だったのは『くまのプーさん』の2代目で
肝付氏とカブる役柄の多かった八代駿)、その後の表記が
各所でズレることが多いです。

私の表記としてはシンエイ動画版の『ドラえもん』を
細かく3分類して記します。つまり以下の通り。

『ドラえもん(2)』10分番組時代の区分。
つまり1979年から1981年9月までの『ドラえもん』。
『ドラえもん(3)』30分番組フォーマットになった
1981年10月から2005年までの『ドラえもん』。
『ドラえもん(4)』いわゆるわさドラ。
2005年以降の『ドラえもん』。

・つまりジャイアン役に照らし出せば次の通り。
『ドラえもん(初)』のジャイアン◆肝付兼太
『ドラえもん(2)』『ドラえもん(3)』の
ジャイアン(剛田武)◆たてかべ和也
『ドラえもん(4)』のジャイアン(剛田武)◆木村昴

といったあたりで『焼きたて!!ジャぱん』で出てきた
シュワインリッヒは完全にリスペクト・オマージュ
だったとか、晩年では『銀河英雄伝説 螺旋迷宮』で
チャン・タオ一等兵役も演じていたとかたてかべ和也
時代のコメントも尽きないあたりなのですが、
そろそろこのあたりでたてかべ和也さんへのコメント
を締めくくりたいかな、と。

かつての「ら」スレで交わされたコメントの中にも
あったように、私も確かに映画『のび太の結婚前夜』で
一番しんみり来るシーンはジャイアンが呟く

「ガキの頃みたいで楽しかったぜ」

という台詞だったりもする世代なのですが。
ジャイアンが別れる時に軽く挨拶しただけなのに、
何か心にいろんな物が伝わってくる感じがおそらく
かべさんのパーソナリティが作り上げたジャイアンの
理想像であり、そこがすごくかべさんらしい佇まい方
でもあったのかなと思います。