人工言語の作り方#002 基礎的な方法論
人工言語制作に必要な道具
私にとっては、人工言語創作は究極的には紙とペン、それから発声器官のみを必要とする創作ジャンルである。いわゆる狭義の自然言語には、音声がない言語は基本的にはないとされているため、音をデザインする過程は必要になるだろう。だから発声のために必要な器官を使う。もしなんらかの原因で自分の音声器官の使用が難しければ、友達や家族に協力してもらうこともできる——思った音をなかなか出してくれないという可能性もあるが。それから、自分で発音しながら決めた音(というより、その一連の音の羅列)を、なんらかの方法で書き留めておかないと、多くの人にとってはそれら全部を記憶しておくのは無理である。このため紙とペンは必要である(一瞬で言語を作ってしまい、紙に一文字も書かずにそれを学習し、使えるようになってしまうなら必要はないが、多くの人はそういうわけにはいかないはずである)。
ではそのほかに本当に何も道具を使わないのかと言われれば、そんなこともない。推奨されるのは、最低限人工言語の単語とその意味をまとめておくために使う、Excelなどの表計算ソフトである。
もし、ワークフローをより便利にし、作った辞書にきれいなフォーマッティングを自動で施してPDF出力したり、活用表を自動生成したりしたいのであれば、Polyglotなどのソフトウェアを使うのも手である。ただ、これらのソフトは個人によって開発されたものが多く、動作が不安定だったり、欲しい機能がちょうどなかったりもするので、私は辞書ツールとしてのみ使う。Polyglotは優れたツールであるが、活用表機能がそもそも必要ない言語もあるだろうし(たとえば中国語に似たような文法を持つ言語を作るならまず必要ない)、言語の歴史変化の記述にはどうしても不足する部分があるので、結局Polyglotだけを使って創作することはできない。
また、私個人の好みとしては、紙を使ってアナログに作業する際には、左端に数センチのマージンを取ってある罫線入りのノートが使いやすいように思う。特に語を作るのにあたって、左側のマージンには見出しとして翻訳前の語(例えば英語で「fish」とか、日本語で「魚」とかである)を書き、右側に思考のプロセスを書くという方法を導入してから、記録のミスが減ったように思う。この辺りは個々人にあったワークフローに即して選べば良いので、あくまで参考までにしていただきたい。
人工言語制作に必要な知識——言語学は必要なのか?
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