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マスクを巡る意見の分断の可視化~思ってたんとちょっと違った話

さて,新型コロナウィルス騒動が始まった直後から,マスクについては話題が付きません.マスクの買い占めからアベノマスクまで,新型コロナウィルスとマスク騒動は切っても切れない縁があるといってもいいんじゃないでしょうか.

とくに4月に入ってからは,やれアベノマスクだ,やれカビの生えたマスクだ,SHARPがマスクを作ったぞ,などいろいろな話題が出てきています.そこで,ツイッター上ではどんな話題が中心となっているのか調べてみることにしました.

1. ネットワークの図示

とりあえず,うちの研究室で昔から行っているツイートの分類手法を使ってTweetネットワークを作成して,そのネットワークを図示することで傾向をつかんでみようと思います.
簡単に言えば,ある程度以上リツイートされているツイートについて,どのくらいに多様な人にリツイートされているかによって分類をする手法です.
同じ人たちがリツイートしているツイートは似ているよね,というのがベースのアイデアです.詳細は以下の論文をご覧ください.

というわけで,とりあえず4月20日から4月25日までの「マスク」が出てくるツイートのネットワークを作成してみました.

大体出てくるネットワークはこんな感じです.各ノードがツイートを示しており,類似性の高いツイート同士がリンクで結ばれている形です.ノードをクリックすると詳細情報も獲得可能.

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2. ツイートの分類

さて,このネットワークですが,実は大きく3つくらいに分割されることがわかりました.

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それぞれ特徴的なことがわかります.

まず,赤い丸は布マスク配布に対する批判系のツイートです.布マスクに異物が混入していたり,予算が不透明だったりしたことに対する批判が中心です.例えばこんなツイート.

次に,青丸で囲まれた部分は,SHARP製のマスクが売り出され始めたという話や,マスクが買えないという話が中心.また,マスク購入に関する体験談やドラッグストアでの逸話などが含まれ,マスク不足に関する話題が中心となっています.マスク不足に悩む人たちが主にリツイートしているツイート群だと考えてよいかと思います.ちなみに,アベノマスク賛成派のツイートは,なぜかこのグループに含まれていました.

そして,最後に黒丸ですが,こちらは「リツイートした人にはマスクをプレゼント」という,プレゼント応募系のツイート群でした.こういったプレゼント応募のために作られたアカウントが多数あるため,それらのアカウントの被り具合からこういったツイート群が抽出されたかと思います.

ちなみにどうでもいいことですが,ネットワーク上に現れるこういったノード群のことを「クラスタ」と呼びます.新型コロナの影響で別の意味のクラスタが余りにも広まってしまったため,ネットワーク研究者としてはなんとも言えない気分になりますね.

3. 考察

というわけで,マスク騒動にかかわる4月中旬のツイートを分類してみました.
アベノマスク反対派は,てっきりSHARPのマスクの話題にも食いついて,政府より民間のマスクだ!みたいな感じでいるのかと思いきや,この二つの話題には大きな断絶があることが興味深いです.
これだけ断絶があるということは,アベノマスク反対派の人たちはマスク不足の話題にはほとんど興味を持っていないということを意味しているわけですから,マスクの件を主に政治問題としてとらえている人たちは,マスク不足に悩まされていない人たちなのかもしれません.

新型コロナ禍で様々な問題が政治問題としても捉えられ「分断が生じているのではないか?」という危惧があります.
事実マスク関係に関しては大きな断絶がありましたが,政治的な分断が生じているというよりも,政治的な意見を言う人たちと,マスク不足を悩む人たちの間に分断があったというのはちょっと興味深い.

というわけで,新型コロナ禍で,分断が発生しているという話はあるけれど,ちゃんと調べてみたらなんか思ってたのとちょっと違うタイプの分断が見つかったなあというお話でしたとさ.
とっぴんからりんの、ぷう.

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