作る・売る・暮らす
NIGELLA(ニゲラ)という洋服ブランドがあります。
服はふだんそんなに気にかけてなくて、たまに買うとしたら無印かGUかearthなんだけど、でもNIGELLAのお洋服は大好きで展示会のたびに遊びに行ってる。
ブランド、といっても街のショーウィンドウには飾られてないし、大量生産品ではない。かよこさんという素敵な女性がひとりで全てやってるのだ。
かよこさんと出会ったのは、私がDokkoiseHouseに所属してた頃、あだち麗三郎さんにレコ発企画への出演依頼をオーケーしてもらったので、挨拶がてらパペラへライブを観に行ったときだった。無事、挨拶できたと思ったら「この人ね洋服ブランドやってて、今度衣装つくってもらうんだ。よかったら話しててよ」と紹介されて、なんだかお互いよく分からないまま仲良くなった。
話を聞かせてもらって、どうにも相当ユニークな働き方をしてるらしいことが段々と分かってきて目を丸くした。
というのも、
・初夏に秋冬物の、晩秋に春夏物の商品のオーダーを取り、注文された分を約3ヶ月で全部縫う(ひとりで)
・合間に次のシーズンのデザインを考えたり、ミュージシャンの衣装製作の仕事もする。(先日は折坂悠太さんのワンマンにスタイリストとして付きっきりで世話してたとか)
「…え。アパレルって、そんなやり方があるんですね。」
と言ったら
「ないよ(笑)。ないけど、いつのまにかこうなってたの」
と、明るく笑うのだ。
しかも驚いたことに、代金は商品到着後の後払いだという。「だだだだいじょうぶなの…っ?」と思わず確認してしまった。
だって、物を作るには材料費がかかる。
趣味で編み物をはじめたときに、質の良い毛糸はそれなりの値段がするというのを知って、(セーターだと材料費と道具代で1万近くかかる)ハンドメイド作品の単価の高さの理由がやっと理解できたのだ。もちろん材料費だけで商品は出来上がらない。作っている間の生活費やその他諸々、暮らしていくのに必要な先立つものがある筈だ。
でも、かよこさん曰く「前のシーズンの売上で回してるから大丈夫」と。NIGELLAはもう5年目なのだそうだ。シーズンで言えば今回11回目になる。
かよこさんは、たぶん誰もやってこなかった方法で、商品を作って売って暮らしている。そういう術をオリジナルで作りあげたのだ。ただただ、すごいなぁと思う。
独自のスタンスのアパレルブランド、なんていうと字面の印象が凄いキレッキレになってしまうけれど、かよこさんはホワーっとしてて気さくで爽やかな感じの人だ。
「“買わなくちゃ!”って思わせるのが嫌で、展示会もあまり人を誘わないから…」
とか言ってるとこも押しがよわいというか優しいというか。。
でも「友達にも声をかけてない」と言う割に、展示会にはひっきりなしに人が訪れる。大体いつもてんてこ舞いになってる。なにしろ接客もひとりなのだ。
でもお客さん同士で
「似合いますね!」とか
「あ、可愛い〜」とか
「どっちの色がいいですかねぇ」とか
和気あいあいと勝手に試着大会が繰り広げられるので楽しい。なんだか空気がのびのびしてて自由なのだ。アパレルに付きまとう良くも悪くもピリッとした緊張感がまるでない。そういうのも、かよこさんの人柄かなぁと思う。
オーダーはInstagramでも受け付けているけれど、実際に商品を触ったり着たりすると、生地の質感が写真で見た印象を塗りかえてくれて、あれもこれも試してみたくなる。
https://instagram.com/kayoko_tommy?igshid=r639obzd3kb3
今日もインスタを見てやって来たお客さんが、あれこれ着て試して楽しそうにしていた。「でも事前にね、“その展示会って一般人が行っても大丈夫ですか?”って聞かれたんだよねー」とくすくす笑っていた。
ちょっとその気持ちは分かるかも。
私も知り合いがいなければ、なかなかそういう場所に行ってみる勇気は出ないと思う。イメージも付かないし。
会場は本郷三丁目のFAROという落ち着いたカフェで、コーヒーもご飯もケーキも何もかも美味しい。濃くて甘い自家製ジンジャーエールも好きだ。
NIGELLAのお洋服は安物ではないけれど、手の届かない値段でもない。1万円台〜3万円くらい。オーダーをして、3ヶ月間楽しみにしながらお金を貯めて待つのもきっと楽しいと思う。
「ほんと無理に買わなくていいからね〜!」とのことなので、興味があれば遊びに行くだけでも楽しいと思う。
「NIGELLA 2019-20秋冬展示会」
6/9 11:00〜17:00
@FARO COFFEE&CATERING
文京区本郷2-39-7
「このシャツ、折坂くんも気に入ってくれてるみたいなんだよね」
「じゃあ折坂悠太ごっこできるじゃん」
「ちょっと猫背になったりしてね(笑)」