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「夜天一族」完結章

完結章 「彷徨う小鳥」サマヨウコトリ

月面都市空港「MOON CITY AIRPORT」から飛び立ち、ミクロトンネルを通過した高速シャトルの目前には美しい青い惑星が浮かんでいる。
「本当に美しい星ね。早く降り立ちたいわ」
窓の外に映し出されている青い地球にうっとりとユージニーが呟いた。
宙の漆黒に映える水を湛えた青く輝く美しい惑星が、自分達を歓迎してくれているようにも思う。
「ワクワクするでしょ、地球はエキサイティングなことばかりよ。楽しみね。でも一番はショッピングかしら、スイーツ巡りも好いわね」
「そう、それ!それが好いわ!そーゆーフツーな生活体験をしてみたかったの」
少女のような無邪気な笑顔を視せたユージニーの笑みに吊られて菊花も笑顔になる。


「王女は地球に降りるのって久し振りなのでしょ?どんな気分?」
シャトル内の客席に隣り同士で座る菫青が、コザル王女に地球への想いを訊ねる。
「はい、ワクワクドキドキするですの。それも今回はキンちゃんと一緒なんてステキですの」
楽しそうに応えたコザル王女に菫青も嬉しくなる。
「地球ではリアリティなことを楽しみましょうね」
「はいですの」
王女が満面の笑みを視せた。

「コザル王子、うちに戻ったら何する?」
「そうニョロね。セイチョンと一緒にタノシイことするニョロね。ボクはタノシイことが大好きニョロ」
「うんうん、僕もだよ。それじゃ、手始めに昼寝しよう。地球到着まで、まだ数時間掛かるから、とりあえず、おやすみ~」
「そうニョロね。おやすみニョロ」
子供達はそれぞれに楽しみを視付けたようだ。

「金剛、私は月以外の世界を知らない。地球人や他星人は月面にも多数生活しているから面識はあるけれど、ネイティブの地球人に出逢うのは不安と期待とが半分ずつない交ぜになっている」
まだ視ぬ地球への複雑な気持ちを吐露する。
「ユージン、君は知らないだろうが、地球では「月の貴公子、ユージン・ムーンシャイン」は有名人なのだ。君の名を知らぬ者はいないくらい君は人気者だと云うことを知っておくべきだ。シンガーとしての君は地球での音楽業界に欠くことが出来ない存在なのだ」
世間知らずとなってしまっていても仕方ない。
月神殿出身の月天人なだけに、今後、彼を取り巻く環境も心配と不安はある。
しかし、それはその時に考えれば好い。
人生とは何があるのか分からないが、大抵のことはなんとかなるものである。
「楽しむさ、どんな状況になったとしても、今までの心の不自由さに比べれば、今後の私は自遊だ」

自由とは、誰の強制も受けぬこと。
自遊とは、自分を愉しむこと。
世界は「JIYU」に満ちている。
それは誰もが選択出来る権利である。


♫ 星に願うならばなかったでしょう

月にはワタシ達のことが視える

失くしたものを何処へ探しにゆくの

過去から未来への想いを誓う

月の祈りの魔法を唱える

言葉をワタシに伝えて欲しい

視えずに探してた暑い夏も

ワタシは何から逃げていたのかな

ずっと まだ それさえも忘却の中で

亡くしたくないと知っている

その時のヨロコビもあの時の淋しさも

月の祈りのすべてをワタシに託し

ココロの底に焼きつく想いに切なくなる

月が満ちゆくまでは届かない

空の上ではアナタは幸福 

そう 夢を視てきた日を忘れないでいる

いつの日も最後の唄を

天上を走り唄声は駆ける

地上にはカミサマがいるのにさ

ナゼか女神の唄声だけが聴こえているのに

王様だけは余所を視ている

シナリオの始めはすでに出来ている

探る様に王は口を閉ざし

去りゆく今の現実は過去からのメッセージ

あなた達の愛は何処にあるのか ずっと

誰かが持っている誰かの奇跡を

失くした愛を探して歩き出す

風は変わり空を凪いでく

鳥たちは風に乗り先へゆく

ワタシのココロはツバサ

手に手を取り合い 目と目は交差する 身体は前進を求め

闇を切り裂き光に変えるフォースは奮い立ち上がる

去りゆく今の現実は過去からのメッセージ

あなた達の愛は何処にあるのか ずっと

探し続けている淋しさの行方を越え

アナタを救う神の手が持っているさ きっと ♫

「彷徨う小鳥」

完結章「彷徨う小鳥」了


全編完了「夜天一族」20220504 WORD清書UP   トリササmoon

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