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迷子

地図を見るのが苦手だ。

目的地はみつけても
そこへと続く
最短の経路が分からない。

すぐに面倒臭くなって
まぁいいやと
何となくで歩き出して
そのうち着くだろうと彷徨う。

見知らぬ路地の
見知らぬ家の前を横切る。

ここに住む誰かと
窓際でくつろぐ猫の生活に
無駄に思いを馳せてみる。

犬と、散歩する人とすれ違う。

犬は僕に無関心で
当然、人も僕に無関心で
僕も表向きは無関心だ。

僕と犬と人は
たった今、何の変哲もなくすれ違ったが
そんな事はもう、僕らの一生では
二度と無いかもしれない。

こんな風に迷子になると
「何の変哲もない」が
「一生に一度の出来事」になる。
(可能性がある)

そんな事を繰り返し考えているうちに
目的地だったはずの場所が
ぼやけてきてしまって

そもそも
目的地に行く目的が
なんだったのかすら
分からなくなって

そろそろおしまいにしようと
家へと続く駅の方へと
踵を返した。

僕の迷子は半分、確信犯で
もう半分は
無事に家にたどり着いたとしても

ずっと続いている。

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