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花より

三月の半ばの雨に
花が咲く前でよかったと
少し安堵して

車窓越しに
川沿いの桜並木を眺めた

どうしても
浮かれた気分になる出店と

約束もしていないのに出会った
友人との会話は

「花より団子」なんて今更
笑いにもならなかった

そんな風物詩の記憶が
いつもより少し遠くて

喪失感に似た感情は
桜に失礼だとかき消した

そんな僕を無視するかのように

雨に濡れた桜並木は
静まり返ったまま

もうすぐ二回目の
春を受容れる



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