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008 Playingマネージャーの憂鬱

社内で「課長さんだと会議や管理仕事が多く現場から遠くなりませんか?」と問いかけると、「いや、私の場合は実質的にはPlayingマネージャーですから、ほとんど現場ですよ。そっちの方が楽しいし♪」といった、会話を良く耳にすることありませんか?英語で「プレイングマネージャー(playing manager)」と言うと、スポーツで選手と監督を兼任するポジションのことです。実はビジネスにおけるPlaying Mgr制は日本では多いようですが、Job型雇用の米国や中国でこのような事はあまりありません。

1.プロスポーツの世界こそJob Discriptionが明確

Playing Mgrは言ってみれば「監督と選手を同時に演ずる」ようなもの。アメリカでは野球やクリケット、アメリカンフットボールなどのスポーツで見られ、他に「player-manager」や「playing coach」といった呼び名があるようですがあまり成功したという例は無く、止むを得ない事情がある時の暫定措置として採用されているようです。会社組織をプロスポーツチームに例えて良いかという基本的な疑問もありますが、ここでは敢えて比較してみましょう。

プロチームスポーツの世界は、成果=勝ちを求めた機能集団です。監督やコーチといったマネジメント群はその為の選手やチームを育てる専門職であり、わざわざ自らが直接プレーに参加することはありません。つまりコーチ、監督といった立場と選手とは一線が引かれています。仮に監督やコーチが往年の名選手であり、まだまだ現役の選手より上手だったとしてもです。この考え方に立てば本来、コーチ、監督、マネージャーはPlayerとは違う象限にあるのです。プロスポーツチームの様に組織化された世界では個々の役割がルールで明確に定義されていると言えるでしょう。すなわちプロスポーツチームのルール・役割設定が昨今盛んに議論されているJob Discriptionの典型的な例と言えるかもしれません。しかしそこにはゲームのルールが確実にあり、プレーヤー自体が既にかなりのレベルで現場に対応できる能力と素質が備わっていることが大前提となります。

2.仕事におけるPlayigのメリット

一方「仕事」というものはスポーツの様に単純なルールで定義できる範囲のものではありません。また、柔軟に取り組めるために厳密なルールを用意していない、といも言えます。そして、会社組織の中では全てのメンバーが必ずしも一流選手とは言えません。このような場合にプレイングマネージャーのメリットは、頼りになる=仕事ができるということを武器にしたマネジメント力を備えたプレーヤー。現場に入り、そのマネジメント力を活かして円滑に業務を進めたり、問題解決をリーディングする。これはすなわちチームリーダー、もしくはキャプテンの役割と言えるでしょう。それが効く組織や要求されるシーンが多数あります。ここでマネジメントの対象を人と工程に分けて考えてみましょう。
マネジメントの対象を「人」と考えた場合、共にPlayすることで苦労や喜びを分かち合いながら問題点や利点を把握し、チームの一体感が高められるというメリットがあります。そしてマネージャー自身もプレーすることで最新の知識とツールのVer-Upが出来るという大きなメリットもあります。
一方、マネジメントの対象を「工程」と考えた場合、ある程度論理的なマネジメント手法や戦術が存在します。敢えて外部から俯瞰することで客観的な対策や指示が出せるというメリットがあります。

3.PlayerなのかManagerなのか

チームスポーツの場合、ケガや不調の場合にメンバー交代が許されています。そこで監督やコーチが突然グラウンドに入り、プレーすることはありません。企業や職場は早く一人前のプレーヤーを育て、層を厚くする。もしくは守備範囲を広げる、潤滑にプレーが出来る環境を整えることが重要です。本来マネジメントに課された役割はそこにあるはずです。しかし、その一方でマネジメントよりもPlayingのを好んでやってしまう♪ 現場を重視するが為にPlayerになってっしまうというシーンをよく見かけます。中小企業やスタートアップ企業であれば、問題にはならないでしょうが、大企業における多くのマネージャーの方がPlayingに力を入れてマネジメントに気が回らない。これがある意味、生産性を悪化させる大きな原因になっている一つの要因とも言えます。
今、管理職の方は自らがPlayingMgrとしてPlayerの一員となる時は、自分がどのような立ち位置で参加するのかをよく考えなくてはなりません。垣根が無いだけにPlayerになることは簡単です。現役Playerとして自らの能力を発揮するのか、マネジメントとしての能力を高める為に参加するのか。

今後、Job型と呼ばれる「自己の能力・強味」といった個人能力を明確にする時代に突入していきます。人材流動化の中でミドルマネジメント層は現在の立ち位置が改めて問われています。




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