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麻婆豆腐は趣味になる?-「趣味」という言葉はハードルが高い。


趣味は何ですか?って聞かれて、
迷いなく自信を持って答えることのできる人は稀じゃないかなと思う。

「趣味」って、実にハードルの高い言葉だと思うのだ。


たとえば、麻婆豆腐は趣味に入るのか?

いきなり麻婆豆腐の例を出されても困るかもしれないけど、実際私は一時期麻婆豆腐に凝っていた。
凝っていたと言っても、お店を何軒も食べ歩いたとか、本格派の麻婆豆腐を作るためにレトルト製品や香辛料を吟味したとか、そういうレベルではない。

もっぱら使っていたのは、中村屋の黒いパッケージの麻婆豆腐の素。
理由は、スーパーで簡単に手に入る商品の中で一番辛そうで美味しそうだったから。

これに絹豆腐を適当に切って入れて、余裕があれば刻みネギも入れて。
あとは、食べるラー油やごま油を自己流でちょい足ししていた。

たまにこの麻婆豆腐を作っては、ヒーヒー汗をかきながら食べるのが好きだった。

お酒を飲む時もあるし、あまった麻婆豆腐をラーメンにのせて麻婆ラーメンにする時もあったけれど、麻婆豆腐を作る時は決まって「ちょっとお楽しみの日」になった。

明日から休みの週末とか、推しのライブ配信がある日とか、そういうちょっと特別感のある時だけ作るメニュー。
だから、あの頃の麻婆豆腐は、私にとって食事ではなくエンターテインメントの一種だったのだ。


でも、麻婆豆腐が趣味だったとは言いづらい。

当時の私にとってはかなり好きなイベントであり、楽しみがいのあるコンテンツであったはずなのに、ただ決まったレシピで麻婆豆腐を作っていただけでは「料理でしょ?」と思われてしまう。

ものすごく凝ったり追求したり、そういうムーブがないと趣味だって言えないんだろうか。


たとえば、ほぼ毎日観ているYouTubeは趣味に入る?
週末になるとモーニングを食べに近所のカフェチェーン店に行くのは趣味?
一年に数回くらいしか行かないけど、それでも美術館に行くことを趣味と言っていいのか?

趣味なんてないよ、と言う人だけでなく、私の趣味はコレだよ、と自信満々に言う人の中にも、「趣味」という言葉のハードルを高く設定している人は多い気がする。


ほんのささいなことでも、特に高尚なレベルに達していたりオタクだったり高頻度だったりしなくても、仕事や家庭労働以外の個人的な楽しみはなんでも「趣味」だと言いたいし、言える環境であってほしいなあと思うのだった。

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