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夢をみていた

好きなアイドルが結婚と妊娠を報告した。
最初は何かのドラマかバラエティの宣伝だと思ったが、本人が直筆で手紙をファン達へ公開した。

失恋のような、裏切りを受けたような、苦しい感情が胸中に渦を巻き、わたしを取り込んだ。

気付けば、彼のグループがデビューして8年経っていた。デビュー前からチェックをし、初めは別のメンバーのファンになったが、彼のファンになるのにそう時間はかからなかった。

彼の歌声とファンサービスを見て、魅了された。ファンへの対応や、パフォーマンスへのストイックな姿勢が好きだった。
洗練されていく歌やダンスを見て、ますます好きになり、のめり込んだ。

わたしは、ちゃんとライブやファンミーティングへ行くほどのファンではないけれど、それでも彼に対しての熱意は持っていると自負している。
常日頃から「アイドルは恋愛対象ではない」「アイドルは拝む対象に等しい」と断言していたくせに、件の報道が出た瞬間、身体中から力が抜けた。

わたしは“きちんと”彼のことを恋愛対象として見ていたのだ。
アイドルと言う職業は、羨望もされ敬いもされるが、その裏では計り知れない努力があると思う。
それを乗り越えてわたしたちの前で、ありったけのパフォーマンスを披露してくれている。裏を見せないことも、血の滲むような努力だとわたしは思う。

美しく綺麗で清潔感のある対象に、わたしは惹かれたのだと思う。誰もが羨んで望み、それに応えることが出来る存在。

わたしはそういうものに、憧れていたのだ。
人に求められ、与えることが出来るアイドルを愛し、羨み、崇拝し、妬んだ。

わたしは妬ましかった。
アイドルの妻となる人が妬ましいのも少しはある。でもそれよりも遥かに嫉妬するのは、そのアイドル本人だと気付いた。

地位も名声も持ち、見目も能力も備え、さらに金銭的にも安定している。(芸能界だから流行り廃りはあるからそこはなんとも言い切れないが)
「一生を一緒にいたい人」を見つけ、さらにはその人との子どもも授かった。

彼は若干27歳で、わたしと同い年だ。そこがとても大きなポイントである。
側からみれば、仕事もプライベートも成功しているように見える。


心からおめでとう、と思えるようになりたい。
あなたのファンで、あなたを好きになって良かった、幸せだ、と心から思える力が欲しい。

いつか必ず、そう思いたい。

ご結婚、ご懐妊、共におめでとうございます。
大変なこともあるかもしれませんが、充実した日々になることを願っています。