見出し画像

夜の毛玉

 夜になると、毛玉が私の元を訪れる。毛玉はいつも、困ったような顔をして、目をしょぼしょぼさせている。私は、何かあったの、と尋ねるけれど、毛玉は、ふわふわと毛をとばすばかりで、返答がない。返答はないけれど、毛玉はやはり、次の晩にもやってきて、目をしょぼしょぼさせて私の部屋の窓辺に立つ。

ここから先は

1,664字

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?