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なるべく明るい乳がん日記30この世であなたの愛を手に入れるもの

〜前回のあらすじ〜
2022年末の乳がん発覚、2023年4月の全摘手術、6月からの抗がん剤、9月からはホルモン療法の開始…と、順調に治療を進めてきた私。いよいよ最後の放射線治療が始まる。
(いつもタイトルに困る。今回は最後まで書いて浮かんだこの曲から

【9月中旬】
放射線治療を受ける予定の総合病院から電話がかかってきた。乳がんがわかるまでの検査をこの総合病院で受けていたけど、その頃とは私の名字は変わっている。(49歳で再婚した新婚の新妻です私。)名字以外、住所も電話も生年月日も下の名前も何も変わってないけど、確認の電話が必要らしい。

別姓にし続けることは結構労力がいったし不利なことも多い。国勢調査の時にも家族として暮らしているのに『その他』しか該当する選択肢がなくモヤモヤが残った。事実婚から法律婚をしようと決めて私が名字を変えたけど、変えなくてもいいのなら手間だし変えないと思う。

全く同じ名前で違う名字の人のフルネームを見ても、それを自分だとは思わない。それくらい名字は重要な「私」だから。それなのにまだ別姓を選択することすら認められないなんて頭が固すぎる。

50年近く名乗った名前を半分変えることの重みを政治をする人には考えて欲しい。「家族の一体感が薄れるから」なんて反対理由として弱すぎるのになんでまだ実現しないんだろう。


術後170日。
右わきから二の腕に突っ張りというか麻痺というか相変わらず鈍く重いような違和感が続く。毎日ストレッチをする。手を伸ばしてグーパーグーパーと動かす。一生ストレッチが必要かもしれないけどそれで手が動くのならストレッチを続けようと思う。

頭はまだ産毛状態。鏡を見るたびオクラみたいだな〜と毎日愛でていたが、よーく見ると頭皮がうっすら黒い。ヒゲの剃り跡みたいな色。これはもしかして黒い毛が頭皮の内側に待機しているのかもしれない!期待で鼻息も荒くなる。

爪にはきっちり投与回数と同じ数の赤い横線が等間隔の目盛のようにダメージを受けた記録として刻まれている。ダメージのメモリー。足の爪も縦と横に線が刻まれていてちょっとアサリの貝殻に似ている。

先日ついにウィッグを買った。やっぱりひとつはあった方がいい。

ネットでたまたま見た帽子ウィッグというもので、比較的安価で被り心地も柔らかいしちょっと伸縮性もある。後ろにマジックテープの細いベルトが付いていて微妙なサイズ調整もできる。見る人が見ればウィッグとわかるだろうけど誰もそこまで他人のことなど見ない。これは買ってよかった。

【9月下旬】
総合病院へ放射線治療を行うために必要なCT画像を撮りに、早速ウィッグを被って行く。自宅の近辺だしやっぱりウィッグの方が心が落ち着く。

受付で再度、名字のみ変更はあるが正真正銘本人であることを確認される。名字を変えると、変える手間だけでも相当なのに、変えたという事実確認も必要だったりして本当にめんどくさい。特に病院は他人と間違えると大変なことになるのでより慎重なんだと思う。

放射線科で待ち、呼ばれて診察室へ入る。
先生から「主治医の先生から聞いています。手術、抗がん剤治療、お疲れ様でした。」と労われた。いや、特にそんなすごいことしてないですけど。

並んだパソコンの画面のひとつはこれから行う治療の説明用、もうひとつは手術前に撮った私のCT画像。
「主治医の先生から、断片陽性なし(がんは取り切った)と聞いています。ただ、リンパ節への転移があるということは、わきの次に行く、鎖骨のリンパ節への、転移の可能性がある、ということです。鎖骨のリンパ節の辺りには、いろいろと、大事なものが、集まっているので、手術で取り除くことは難しく、触れません。」放射線の先生はとてもゆっくりと穏やかに説明してくれる。主治医の先生のテキパキした感じとは全然違っておもしろい。

放射線治療の目的は、胸とわきと鎖骨にがんが残らないようにすること。
「毎日、少しずつ放射線を照射して、がんを溶かしていくイメージです。」
先生はゆっくりと説明を続ける。

まずCT画像を撮り、そこに赤や青の枠線で何重にも囲んだ照射範囲を指示するデータを作成するのだそう。作成したデータのサンプルを見ながら説明を受ける。照射したくない場所を上手く避けながら幾重にも範囲を指定して積み重ねる。枠線が重なっているところは照射量も多い。地図の等高線にちょっと似ている。

「両腕は、上がりますか?」先生に聞かれ、高々と上げて見せた。ストレッチを続けていてよかった。しっかりと照射範囲を確保できることを確認して先生は「25回、毎日同じ姿勢で、腕を上げて、仰向けになるので、なるべく、楽な姿勢を取ると、いいですよ。」と笑顔で言った。

違う人に照射しないよう本人確認用にマスクを外した顔写真を撮って「あとで読んでおいて下さい」と『病状説明』と書かれた紙を渡された。治療の内容と副作用の説明が書かれている。避けられないのは放射線皮膚炎。ちょっと大変な日焼けみたいな感じ。それでも鎖骨に行ってる可能性がある以上、やる意味のある治療だと思うので私はこの治療を受ける。

診察室を出て承諾書を記入し、CTのある部屋へ移動。上半身は脱いでバスタオルを前に当てて、CTの機械に仰向けに寝る。硬めのビニールみたいな丸いクッションに頭を置き、そのクッションのくぼみに沿わせて両腕を上げる。膝の下には三角のクッションを入れてなるべく楽な姿勢になるよう整える。

術側のバスタオルをめくって先生がワイヤーを何本かテープで貼っていく。全摘の方が乳見られてる感がなくていいと、こういう時ちょっと思う。向こうも仕事だし50のオバハンの乳に興味はないだろうけども。全摘はこういうところがちょっとだけ気楽だし、真っ直ぐなキズの見た目の潔さも私はいいと思っている。(個人的見解)

ワイヤーを貼り終えたらバスタオルを掛けてくれた。CTのドーナツ状の穴の中へとベッドが動く。ニョニョっと機械が動いてあっという間に撮影終了。ワイヤーを外し、着替えて退室。この日の支払いから全部まとめて後日精算になるそう。その方が楽だわー。

病院を出て、お腹も空いたので半年ぶりくらいにコンビニへ行って本当にビックリした。今お弁当ってこんな小さくなってるの??お菓子もみんな試供品みたいに小さい。なんかものすごく寂しく貧しい気持ちになった。ひとつひとつは美味しそうでものすごく企業努力を感じるのに。なんか寂しい。


………そういえば身体に線書いてない。
放射線治療って、身体に直接マーカーでガイドの線を書くっていろんな本やネットで見たけど……私、書いてない。
え?あれはCT撮る時じゃなくて照射初日に書くものなの??

謎だがとりあえずCT撮影を終え、あとは25回照射するだけとなった。

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