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なるべく明るい乳がん日記33今日もまた照射へ行く

〜前回のあらすじ〜
全25回の放射線治療を平日毎日受けながら、10年間続けるホルモン療法のタモキシフェンを毎日飲んでいる。そんな日々に新しい朝ドラが始まっていた。『ブギウギ』だ。ワルツのリズムに乗って草花が踊っているかのような爽やかな『らんまん』のオープニングとは打って変わって、首の長い人形や青いまつ毛の目が背後で揺れる謎のオープニングになった。ブギのリズムの楽しさ以前にまず世界観が怖い。ちょっとだけプリンプリンとミック・板谷を思い出す世代の私でも最初は怯んだ。でも曲はいい。EGO-WRAPPIN'のよっちゃんが歌ってるのも嬉しい。よく見ると背後で亀が楽しそうに歩いている。気が付けば放射線治療へと車を運転しながら鼻歌でブギウギウギ〜と歌っている私。いつの間にか放射線治療をブギのリズムでこなすようになっていた。

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【10月中旬】
今年の夏は永遠か。
永遠なのか本当か。時の流れは続くのか。いつまで経っても終わらない夏に日本中がうんざりしていた。

図書館で借りた岸田奈美さんの『もうあかんわ日記』が抜群におもしろくて毎日ひっくり返りながら読んでいた。

心の底から出た素直な「もうあかんわ」の一言がぶちあたっている数々の困難が全部濃い。とにかく岸田家が必死に生き抜いていく記録。文章はぶっちぎりでおもしろいのに内容が凄まじくて消化が追いつかずなかなか読み進められない。私の乳がんなんてほんのかすり傷だ。ライツ社という素敵な出版社から刊行されているのもいい。これは買って手元に置いて読み返したい。誰かの「もうあかんわ」の隣でこの本はきっとチカラになる。

【10月下旬】
予約していた『チ。ー地球の運動についてー』4〜7巻を借りた。最終巻の8巻はすでに借りられていた。読むんかい。読むなら4〜8巻まで借りればいいのに。

100均でついに『リーディンググラス』とオシャレに書かれた老眼鏡を買った。めちゃくちゃよく見える!!感動!!もっと早く買えばよかった。(40越えたら眼底検査を受けた方がいいらしいので6月頃に一度検査してもらっていた。特に問題はなくシンプルに老眼だと診断された。)

14回目の放射線治療へ行く。
「照射位置を少し変えるので位置合わせをするのにいつもより5分くらい時間がかかります。」と言われた。照射位置の継ぎ目がどうのという説明だったけどよくわからなかった。ええようにしてもらえたらそれでいいのでここはプロにお任せする。

この頃からお風呂で温まると照射されたところがピリピリと痛むようになった。皮膚の赤黒さも、首の途中から色を塗り分けたようにはっきりくっきり赤黒くなっている。照射中は痛くもなんともないのに、あとからちゃんと痛い。しっかり焼けている。保湿剤のヒルドイドを塗る回数を朝晩2回に増やした。

20回目の放射線治療。
看護師さんに「変わりはないですか?」と聞かれたので(毎回聞いてくれる)皮がむけてきていた首の付け根の後ろ側を見てもらう。痒みはないけどピリピリする。服が擦れて痛い。
「ステロイド入りの薬もありますよ。」と案内されたけど手元の保湿剤でしばらく様子を見ることにした。治療する側にはいつでも提供する準備があって、それをどうするか決めるのは私だ。

照射後、駐車場まで歩いて行く数分の間にもう照射されたところがピリピリヒリヒリしてきて痛い。やっぱり薬をもらった方がいいのかもしれない。

【11月初旬】
まだ抗がん剤の副作用の手足の痺れが続いている。いつまでも続くのか。吐き捨てて寝転んだって痺れはまだ続く。足の裏はまだまだ見えないゴミを踏み続けている。全摘してしばらくは内臓と外界が急に近く感じて怖かったし胸って防具だったのかと驚きもしたけど胸がないことにもすっかり慣れた。

気をつけの姿勢をすると右わきに国語辞典を挟んでるような違和感があったが文庫本を挟んでるくらいにまで改善した。「ページ数が減った!」と夫に言うとちょっとだけウケた。ややウケ。ややウケでもいい。夫が少しでも笑うのならしょうもないことを言ったりやったりしていたい私なのでこれからも夫の横で無意味にくるくる回ったりサンバやヒゲダンスを踊り続けよう。(←全て実話。「もういいから」って言われる。)

髪は順調に伸びてきて2センチくらいになったもののルパン三世感が強い。ベリーショートまでの道のりが果てしなく遠い。坊主頭とベリーショートの境目はどこだ。ベリーショートはオシャレな感じがするけど坊主頭だとどうしても訳あり感が強い。「伸びろ〜伸びろ〜」と言いながら自分で頭を撫でていたら、夫が仏の笑顔で見守っていた。私と結婚したことに後悔はないのだろうか。少し気になる。


このまま25回目まで書くとちょっと長過ぎるので続きは次回で。
タイトルは放射線治療の時に背後でうすーーく流れるオルゴールでもよく聴いたエレカシの名曲から。  

もう二度と戻らない日々を俺たちは走り続けるのだ。

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