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炊飯器が吐く飯は今日も白い

炊飯器は水と硬い米が好きだ。お釜に水と米を入れ数十分の食事時間を与えると、代わりに白いホカホカでツヤツヤの白飯を吐く。釜をセットする時に強く押し込む事が大事で、喉に指を入れて吐かせるように、炊飯器に飯を吐く練習をさせる。ゔぉええええーーーとなったら準備完了。スイッチを押して彼の食事が終了するのを待つ。吐いている間は決して人には見せないが、彼の努力が、小さな通気口から勢いよく出る蒸気から伝わってくる。暫く待つと吐き終わりの音が鳴り、期待を込めて蓋を開ける。そこには彼の嘔吐物であ

    • 思いつき人間

      特に問題はなく上手くいっているという状況にいる時、急にぶち壊したくなる事がある。なんて事ない時間では脳に余力があって、意図的に刺激を与えたくなるのだろうか。しかし結局衝動は理性に手綱を引っ張られて、思い付きが行動に変わる事はない。でも、「幸せなら手を叩こう」と言われて調子良くパンパンと叩いた両手を次の瞬間に切り落としたくなる様な衝動からは、きっと一生逃れられない。そう、それは、 「誕生日パーティのクッキング中、友達とワハハと笑いながら手に握った包丁で自分の腹を刺してしまいた

      • あめのひ

        雨の日は家でダラダラしていても罪悪感が無いから好きだ。頑張ることを強いられてしまう日常の中で、頑張れない理由を作ってくれる。つまり怠惰の正当化。逃げの行為。もちろん通用するのは自分の中だけで、高校の時「雨が降っていたので課題を忘れました」と言っても担任は眉を顰めて「知りません」と言った。 雨の日は傘で顔が隠れるから好きだ。道中で知り合いを見かけたら、サッと傘を深くさして下を向く。そうすれば気付かれることは殆どない。学校をサボった日にクラスの友達と会っても、バイトをサボった日

        • お母さんの提言

          「やる事」に追われているようじゃまだまだ。寧ろ、こっちから追い詰めて追い詰めて二度と追わせないようにしなきゃ。そうしたら追って来なくはなるけど、、、その時にはなんだか好きになってしまっていて、こっちから迎えにいっちゃうかもね。

        炊飯器が吐く飯は今日も白い

          お風呂の栓

          お風呂の栓を閉め忘れた。まだお湯を入れ始めて数分しか経っていなかったからショックは小さかったけど、日常生活で地味に辛い失敗ランキングを付けるとしたら、「お風呂の栓閉め忘れ」はかなり上位に入るんじゃないかと思う。 栓の閉め忘れに気が付くのがもっと遅かったらそれはそれは悲惨だ。そろそろ溜まったかなぁと見ていたテレビを中断し、思い腰を上げる。玄関と繋がる脱衣所で寒さに鳥肌を立てながら服を脱ぎ、暖かい湯気で充満している期待を込めて浴室のドアを開ける。アレッ浴槽空のままじゃん。全開に

          お風呂の栓

          お母さんの嘘②

          アンパンマンはね、海を渡って国を超えられないの。パスポートを持っていないからね。でも日本でも困っている人がいるでしょう。そんな時は身を隠さなきゃいけない。名前を隠さなきゃ。アン…ピーーーーーーー(放送禁止)…マン、、、、ア…ピーーーーーーー…マン、、、ピーマン。そう、これは君たちを元気にする為のアンパンマンからの贈り物なのです。

          お母さんの嘘②

          お母さんの嘘

          「お母さん、あれなぁに」 「あれはフンドシを付けたお相撲さんのお尻よ」

          お母さんの嘘

          侍とトマトの話

          あるところに一人の侍がいた。彼は平日は朝から晩までミニストップでバイトをして、土日は侍をしていた。 平日の勤勉な働きぶりとは裏腹に、侍としての彼はとても残虐で、冷徹な表情で何人もの人間を斬り付けていた。村中の誰もが彼を恐れていたそうだ。 真夏の暑苦しい土曜日、ある男がその侍に追われて村の外れの畑の中に逃げ込んだ。そこには真っ赤なミニトマトが所狭しと植えられていて、実についた水しぶきは太陽の光をキラキラと反射していた。男はとにかく必死になってそのトマト畑の中に身を隠した。

          侍とトマトの話