フルパワーで美しく輝きたいと、思うだけ思う毎日

 近所の中学校に、今期のスローガンが貼り出されていた。
 「Full Power!」だそうだ。

 考えてみれば、僕はもう15年学校に通っているが、ついぞスローガンというものに親しんだことがない。僕らの学校にも、毎年何かしらのスローガンがあったはずなのに、ひとつも覚えていないのだ。かろうじて、小5か小6の頃のクラス目標は美しさに言及していたような気がするが、確かではない。

 生徒会か先生か、密室で誰かが決めて、今年のスローガンはこれだ! と言われて、それっきりなのだ。スローガンを守らなければ何かがあるというわけでもなく、スローガンのために何か特別な催しが開かれるわけでもない。だから記憶にも残らない。何かを良いことを言っているようで、実質何も言っていない。情報量はゼロだ。あの内容をたった64キロバイトで実現した初代ドラクエも、ひょっとしたらスローガンでできているのかもしれない。

 書いていて思い出した。高校のときのスローガンは、確か何かを輝かせていた。これは勘だが、たぶん未来だと思う。でなければ可能性とか、きっとそんな感じだ。

 このように、誰も関心をもっていないことでお馴染みのスローガンについて考えていて、ひとつ思いついたことがある。

 もしかして、スローガンで噓をついても、誰も気づけないのではないか。

 たとえば僕が、生徒会でも先生でもない僕が、勝手に考えたスローガンを印刷したビラを作って、「今年のスローガンは○○です」と言いながら大学でまいたとして、それがでたらめであると指摘できる者がいるのだろうか。指摘できたとて、「噓っぱちのスローガンをばらまくな」と怒れる人がいるのだろうか。少なくとも僕は大学のスローガンを知らないから気づけない。噓だと知らされたとしても、そんなバカなことをする奴がいるのかと一笑いして、それきりだろう。

 騙されても騙されたことに気づけない。もはや完全犯罪だ。
 「噓スローガンのビラ配り」。100年後には完全犯罪を意味する新たな慣用句として、三省堂あたりで辞書に載せてもらえるだろう。

 そんなわけがない?
 そう否定しないでほしい。

 可能性はいつだって無限大だ。未来はいつだって輝かしい。
 ああ、スローガンのようなことを言ってしまった。

 これを読んだ皆さん、できれば忘れないでいてくれると嬉しい。


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