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石焼き芋鍋で石焼き生活が楽しい

石焼き芋鍋というものが存在すると知ったのは、結婚式のお祝い返しのカタログを見ていたときだった。陶器の丸い鍋の底に小石をひき、さつまいもをごろんと置いて火にかければ焼き芋になるという。1 歳になる息子は、さつまいもが大好きなので、いつも出汁で煮たさつまいもを出していたが、焼き芋にすれば糖度が増すのでもっと好きだと思われる。あのまあるい顔の食いしん坊が、焼き芋を抱えてイヒヒと笑っている顔を想像したら、買ってみたくなった。

つややかに黒く光る鍋は、鍋というより壺のようであった。両手で抱えてコンロの上にどんと置くと、コンロをはみ出しそうなぐらい丸々としている。内部は素焼きで、洗った小石を入れると、気持ちの良い音が響く。

子どもが生まれて、家事を楽にできる家電を切実に調べ、食洗機、乾燥ができる洗濯機、ホットクック、拭き掃除ロボットなどなど、ほったらかしているうちに完了してくれるものをたくさん導入した。グリルも、それまでは洗うのが面倒であまり使っていなかったが、グリルパンを中に置けば、手入れ楽ちんなほったらかし家電になる、と勝間和代さんの「勝間式超ロジカル家事」で知った。グリルやオーブンやホットクックを使うことで、何かにつきっきりになる時間を最小限にしながら、同時並行で数品の料理が作れる。家に乳幼児がいると、やれ泣き出した、やれ抱っこしてほしい、やれ危ないものを触ろうとしている、といった騒ぎが常なので、フライパンのように、一度火をつけたら火の前につきっきりにならねばならない調理器具はストレスが大きいのだ。しかしこの「ほったらかし家電・器具」のラインナップに、ぜひ付け加えるべき逸材を今まで見落としていたーーー石焼き芋鍋である。

さつまいもを洗って、石の上にのせたら、強火で 12 分程ほおっておく。タイマーを多用するのもほったらかし調理の重要なところだ。手を洗う手間を省くためにも「Hey Siri, タイマー 12 分でセットして」と音声操作を使えばとても楽である。12 分経ったら弱火にし、ときどき、さつまいもを回転させて焦げないようにする。大きさにもよるが、30-40 分くらいで、ほくほくねっとり甘い焼き芋が完成する。長い時間のようで、他の料理を合間に作っていると長く感じない。火を止めても、フタをしておけば保温性も高い。さらにすごいのは、石焼にできるのはさつまいもだけではないという点だ。石焼したじゃがいものじゃがバターは絶品だし、タマネギの丸焼きも、驚くほどの甘みと石焼らしい風味がついて最高なのだ。ポン酢と七味だけでいくらでも食べられる。息子は、出汁で煮たタマネギはあまり食べなかったのだが、石焼したタマネギはモリモリ食べた。まだ試していないが、焼きリンゴ、焼きバナナ、焼きおにぎり、焼き卵、焼きタケノコ、ナンまでできるらしい。最高か。唯一の欠点は、長めに火をかけるので、ガス代が多少かかるところだろう。しかし素材の美味しさを引き出せるので、調味料を多用する必要がないという点では経済的かつ健康によいと思う。また、乳幼児のいる家庭ではあまりないかもしれないが、ストーブでも調理可能だ。ストーブにどんと石焼き芋鍋を置いて、みんなで火を囲みながら、のんびり他愛ないおしゃべりでもして、焼き芋の甘い香りが漂うのを待つーーーというのも、長い冬の日の贅沢な過ごし方ではないだろうか。

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