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011『西日本を歩く6~佐賀・長崎・福岡~』

文:守屋佑一

2010年9月17日。

すでにこの旅で何度も漫画喫茶に泊まった朝。
もちろん漫画喫茶で、ただ寝るわけではもちろんない。
気になっていた漫画や好きな漫画をたくさん読んだ。

そして、すぐにみんなにすすめられる状況でもあったので布教もたくさんした。
特に布教した漫画はクッキングパパだ。
僕が小さい頃にアニメ化もされた名作で100巻をゆうに超えたいまでも連載は続いている。
僕は昔からこの漫画の大ファンだが、2009年の正月に友達と三日連続で漫画喫茶にいったときに全巻読んだことでこの世界観にのめりこんだ。
サラリーマンであるパパがしっかりと昇進する様子や上司との付き合い方や地域での過ごし方。
部下にもスポットがあたり、若手サラリーマンの気持ちもわかる。
パパの子供 も最初は小学生だが、しっかりと成長していき、思春期の悩みもでてくる。いまではなんと社会人だ。
老若男女すべての人が感情移入できる名作がこのクッキングパパだ。

しかし、だいたい置いてあるクッキングパパがこの前日泊まった佐賀の漫画喫茶にはなかった。

ここまで書いておいてなんだが、ただ面白いからクッキングパパを布教したわけでは決してない。

クッキングパパは舞台が博多。そしてちょいちょい福岡以外の九州の地もでてくる。観光地や名物もたくさん出てくる。だから九州旅行でこの漫画を読むことはかなり有意義だ。でも、佐賀にはなかった。だからモテキを読んだ。モテキの舞台には長崎が出てくる。このときは楽しく読めたが、この漫画、20後半で読むとひたすら胸が締め付けられるからおすすめはできない。

気をとりなおして、この日は長崎に向かう。6日目ということでいよいよ旅も佳境に入った感じだ。

長崎と言えば出島が有名だが、ここはかなり奥にあるのでいくのが厳しい。
佐世保あたりでお茶を濁すこととなった。
佐世保と言えば佐世保バーガー。これが本当に楽しみだった。各地の名物を食べ続けている毎日、もちろんファミレスやコンビニにはいかない。(朝飯は牛丼屋だったが。)伝統的な名物はそのだいたいが和食。現代っ子の僕たちは洋食を求めていた。
また、個人的に中学2年生のころにファミリーマートで期間限定で販売されていた佐世保バーガーにはまり、毎日のように食べていたということもあり楽しみでしかたがなかった。
到着した佐世保バーガー屋はアメリカンな雰囲気で大きなお肉がパンにはさまり、これこそまさにザ・ハンバーガーだった。

一個だけでもお腹は満足。

このとき、あまりの美味しさにみんなで小田原にもマックとか普通のじゃなくてこういう変わったハンバーガー屋もできればいいのにね、なんて話をしたことをよく覚えてる。
もっとも、この数年後にマックはおろか、まさか小田原駅周辺からハンバーガー屋が一つも存在しないなんて事態になるとは思ってもいなかったが。

食べ終わり、佐世保のまちをぶらぶら。佐世保の商店街はアーケードが張り巡らされ、なんだか古きよき町の香りがした。そしてすぐさまちゃんぽん屋を探す。ただ、なかなか見つからなかったのでコンビニのバイトの兄ちゃんに旨いちゃんぽん屋はないか聞くところ、普段そんなにちゃんぽん食べないからわからないと言われてしまった。
地元なんてそんなものか。
無難に駅前のちゃんぽん屋に入ったが、まいうーのサインとかあって大当たり。
ただし、一つ問題があった。それは佐世保バーガーを食べた直後ということもあり、みんなお腹が膨らんでいたということだ。だけど、長崎ちゃんぽんを取りこぼすわけにはいかない。

だから根性で食べた。今でこそ燃費は悪いが、特別大食いと言うわけではない。しかし、22歳のこのときはまだまだたくさん食べれた。僕がいた高校の野球部は食べることも練習で毎週あった合宿で夜はどんぶり5杯以上がノルマだった。

ふと、TYと、Sを見るとちゃんぽんをがっつり残していた…

気を取り直し、長崎の海辺の公園だかで風を感じて穏やかな時間を過ごす。
九十九島を眺めながらのんびりと。

まだ9月17日。小田原に帰る20日まではまだまだ時間がある。

そう。僕らは完璧に旅行のペースを間違えたのだ。15日くらいから薄々感じていたが、九州を急いでまわりすぎてしまった。こんなことなら桜島とか阿蘇山とか、松中信彦記念館とかもっといろんなところをまわってくれば良かった。
もっとも、旅の早くから時間配分ミスには気付いていて、どうせなら中国地方の日本海側もがっつりまわろうという話になっていたからべつにいいのだけれど。

そして、長崎をあとにして再び九州の最初の地、福岡を目指した。
福岡の有名スポットは全然見てないので、とりあえず大宰府天満宮を目指した。
ここから先はひたすらドライブ。
大宰府天満宮についた頃は19時を過ぎていた。大宰府の門は固く閉ざされ、入れないようになっている。僕ら小田原育ちは神社やらお寺やらは24時間いつでも入れるものだと思い、油断していた。どうやらガチな観光地には時間制限があるらしい。大宰府天満宮のまわりをとりあえず1周歩いて夜ご飯を食べるため、博多市街に移動した。
この日の夜ご飯はクッキングパパでもよく出てくる博多の屋台街。
移動して博多駅前について車を停めたが、どこに屋台が立ち並んでいるのかまったくわからない。
道歩くサラリーマンに声をかけると、クッキングパパにもよく出てくる博多訛りで場所を教えてくれた。

「屋台がいっぱいあるとこはこっちタイ!」
「小田原からきたとね!いいとこらしいやねー!」

こんな感じだった。なんだかすごく感動した。

屋台では博多ラーメンとモツ焼きを食べた。博多にはただの繁華街とは違う空気が流れている。それはこの屋台のおかげだろう。川の前でしっぽりと飲んで食べることができる。

ずっといたい気持ちだったが、そうもいかない。風呂に入るため北九州のコロナワールドを目指した。9月14日。九州入りした時に泊まったあのコロナだ。

コロナでお風呂に入り、なぜかこの日はコロナの漫喫ではなく、コロナの道の向かい側にある漫喫に泊まった。

九州最後の夜であった。

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