生命のフリーズ

ムンクのレプリカというか、ポスターなどを見かけますけれど、「買う人の気がしれない」と思っていました。
だって、飾るということでしょう?
「叫び」とか、そういう、名まえの絵を。
ナイナイ!
しかし、「不安」「叫び」「絶望」と並べられたとき、「アリかも」と思ったのです。
挙げた三つは、「生命のフリーズ」と呼ばれる作品群の一部です。
愛、恐怖、死、等の、「生命」をテーマにした絵画の連作で、四方の壁をぐるりと装飾することを想定されています。
一つ一つは、暗くて恐くて不気味かもしれない、でも、美術館でムンクに囲まれているうちに、なにやら愉快になってきました。
ムンクによって切り取られた空間で抱かれ、孕むのは悪くない、そんな想像をしました。
ヘンタイかしら。


あれ以来。
男の重みを受けた私の体が、ラブホテルの冷たく白々しいシーツの中に沈むとき、目を閉じると、ムンクが描いた血のような赤が、線が、床からゆらり、ゆらりと立ち上り、壁中を走り、昇り、天井の一点へと集まっていきます。
そしていつの間にか、現れた、ムンクのヘン顔たちに見下ろされている。
そうか。
天使って、ヘンな顔をしているものだったのね。
ここは神殿です。
ほんとうにこのまま、身籠ってしまうかもしれないという恐れは上り詰め、快楽へと裏返る。

刈り取られる。


どうか。
今授かったこの子を、産み落とすときには、また、祝福に来て下さいね。
そこがどこであろうと、どんな状況であろうと、私とこの子を、そのお顔で笑わせて下さい。


(2008/4/11(金) 午前 6:55)